299
ペ ン タ ミジ ン吸 入 投 与 に よ る ニ ュ ー モ シ ス チ ス カ リニ肺 炎 の 治 療 成 績 東京大学 医科学研究所感染症研究部 田辺
清勝
後藤
元
島田
馨
(平成2年7月19日 受付) (平成2年8月23日 受理)
Key words :
Pneumocystis carinii pneumonia, chemotherapy, immunodeficiency
要 イ セ チ オ ン酸 ペ ン タ ミジ ン(以 下,ペ す)肺
炎 の 治 療 薬 と し て,お
aerosolised
旨
ン タ ミジ ン と略 す)は
ニ ュ ー モ シ ス チ ス カ リニ(以 下,Pcと
も に 静 脈 内 投 与 で 使 用 され て い るが,こ
い た ペ ン タ ミジ ン の 吸 入 投 与 に つ い て,こ
pentamidine,
れ ま で の13症 例 を 対 象 と して 成 績 を 検 討 し た.そ
肺 炎 が 確 定 診 断 され た8例
の うち,7例(88%)に
生 存 率 で は88%(7例)で
あ った.ま
有 効 性 が 認 め られ,投
た,ペ
略
こで は ウ ル トラ ネ ブ ラ イ ザ ー を用
与 開 始 の1ヵ
の 結 果, Pc
月後 に判 定 した
ソ タ ミジ ソ 吸 入 投 与 との 関 連 が 認 め られ た 副 作 用 は 咳 嗽 が
4例(31%),嘔
吐 が1例(8%)で
れ た 症 例 で,有
効 率 は これ ま で に報 告 され た 静 脈 内 投 与 や 吸 人 投 与 の 成 績 と ほ ぼ 同 程 度 で あ った が,吸
あ っ た.今
回,Pc肺
炎 の治療 として吸 入法 を含 む種 々の治療 が な さ
入 投 与 の 症 例 で は 全 身 性 の 副 作 用 の 発 現 を軽 減 で き る こ とが 確 め られ た.と て は,換
くに,吸
入 法 の導 入 に つ い
気 障 害 の 程 度 の 軽 症 な 症 例 に 限 定 し,重 症 例 に は 静 脈 内 投 与 な ど に よ り換 気 障 害 が 改 善 され て
か ら用 い られ る べ き で あ る と考 え られ た.
は じめ に ペ ン タ ミ ジ ン は 芳 香 族 ジ ア ミ ジ ン 類 に 属 し, 1930年 代 後 半 に 英 国 のMay
&
Baker社
に よ って
ら,ペ ン タ ミジ ン がAIDSの 一 選 択 薬 とな った .
患 者 のPc肺
ペ ン タ ミジ ンを 吸 入 法 で 投 与 す る と,ヒ
炎 の第 トの 体
リパ ノ
内 に 吸 収 され る量 が 少 な くな る た め に,腎 毒 性 な
ソ ー マや リー シ ュマ ニ アの 治 療薬 と し て開 発 され
どの 全 身 性 の 副 作 用 が軽 減 で き る9)10).最近,こ の
た.1958年
炎の治
吸 入 投 与 法 に 対 す る関 心 は 高 く,海 外 で は 吸 入 法
か し,
を 用 い た 予 防 投 与11)や自宅 療 法12)が試 み られ て い
合 成 さ れ,抗
原 虫 作 用 が あ る こ と か ら,ト
にIvadyら1)は
こ の 薬 剤 をPc肺
療 に も 使 用 し て 有 効 性 を 報 告 し て い る.し
本 薬 剤 を 投 与 し た 症 例 に は,腎 障 害,白 血 球 減 少 な ど,重 篤 な 副 作 用 が 高 頻 度 に 発 現 す る こ と2)3)から, Pc肺
炎 の 治 療 に はST合
trimethoprim)が
剤
が,AIDS(後
天 性 免 疫 不 全 症 候 群)が
併 症 と し てPc肺 現 す る こ と,そ
し て 治 療 にST合
出
剤 を 投 与 す るサ
し,Respirgard
の製品
りバ イ ア ル を 蒸 留 水 に 溶 解
IIな どの ウ ル トラ ネ ブ ライ ザ ーで
吸 入 した.こ れ ま で に 試 験 さ れ た 吸 入 投 与 例 は13
れ た(東
鹿 児 島大 学 医学 部 医 動物 学 講 座
平成3年3月20日
を 用 い た. 300mg入
& Baker社
例 で あ り,こ れ らの 症 例 はつ ぎの9施 設 で 実 施 さ
(〒890)鹿 児 島市 宇宿 町1208-1 田辺
方 法 な ら び に症 例 ペ ン タ ミジ ン は英 国 のMay
ル フ ァ剤 過 敏 症 を 惹 起 し や す い6)∼8)こと な ど か 別刷 請 求 先:
ン タ ミジ ンの 吸 入 投 与 例 の成 績 を 検 討
ころ
登 場 し,合
炎 が 高 頻 度(83%4),65%5))に
今 回,ペ
した の で報 告 す る.
(sulfamethoxazole-
お も に 使 用 さ れ て き た.と
る.
清勝
京 大 学 医 科 学 研 究 所 内 科,東
京女子医科
大 学 腎 セ ン タ ー,東 京 医 科 歯 科 大 学 第2内
科,神
田辺
300
奈 川 県 立 が ん セ ン タ ー血 液 化 学 療 法 科,神 奈 川 県 立 循 環 器 呼 吸 器 病 セ ン タ ー呼 吸 器 科,千 学 部 小 児 科,青
葉大学 医
森 県 立 中央 病 院 消 化 器 内 科,久
米 大 学 医 学 部 小 児 科,大
分 医 科 大 学 第2内
成
留
1に,ペ
り替 えた5症 例(case 残 りの1症 例(case
績
ミジ ンの 吸 入 を初 め に行 った が 改 善 が み られ ず,
Table
13症 例 の 背 景 因子 を,性 別,基 礎 疾 患,吸
入投与
入 法 の 用 量 と期 間,Pc肺
炎
2に,
Pc肺 炎 の 確 診 群 の 有 効 性(臨 床 効
果)と 全 症 例 の 転 帰 を ま とめ た.Pc肺
は 省 いた.そ
の 結 果,ペ
む 今 回 のPc肺
理 標 本 でPcが
の 有 効 率 で あ った.ま
確 認 され た8例(62%)の
確診例 に
つ い て み る と,基 礎 疾 患 はAIDSが6例
(75%)
炎 の治 療
例)で
を み る と,ST合
併 用 して は じ め の4日 (1日 量 が100mgで
剤で効 果が み られ 例
ン タ ミジ ンの 静 脈 内 投 与 で 治
療 を開 始 し,副 作 用 が 出現 した た め に 吸 入 法 に切
後2日
1
Characteristics
ultrasonic
nebulised
tis carinii
pneumonia
in 13 patients pentamidine
receiving
間 を ペ ン タ ミジ ン の 吸 入
十 分 な量 と は言 え な い),そ の
間 休 薬 し,つ ぎの4日
間 ペ ン タ ミジ ン の静
脈 内 投 与 が な され た 症 例 で あ る.こ れ らの 治 療 で 症 状 の改 善 が み られ ず,治 療 を 開 始 して9日 死 亡 した.剖
Table
ン タ ミジ ン投 与 開 始
剤 の投 与 が10日 間 な され,こ れ と
れ た 症 例 は な か った が,ST合
(case6,9)や,ペ
た,ペ
(88%)
あ っ た.治 療 に効 果 が み られ な か った1例
と して ペ ン タ ミジ ン の 吸 入 投 与 だ け を 単 独 で な さ
な か った た め に 吸 入 投 与 に 切 り替 え た2症
ン タ ミジ ン吸 入 投 与 を 含
炎 の 治 療 成 績 は8例 中7例
の1ヵ 月 後 に判 定 した 生 存 率 で も同 じ く88%(7
胞 性 白血 病,腎 移 植 後
の症 例 が そ れ ぞ れ1例 ず つ で あ る.Pc肺
炎 の診断 が
生 検 に よ って 確 定 して い な い症 例 の 有 効 性 の 検 討
に 用 い られ た ほ か の 治療 薬 の項 目で ま とめ た .病
で あ り,ほ か に は 成 人T細
剤 の投 与 とペ ン タ
2. 有 効 性
ン タ ミジ ンの 吸 入 療 法 を試 み た
開 始 前 のPaO2値,吸
1, 2, 10, 12, 13)が あ り,
3)はST合
ペ ン タ ミジ ン の 静脈 内 投 与 に 替 えた 症 例 で あ る .
科).
1. 症 例 の 背 景 Table
清勝 他
検 は な され ず,投
目に
薬後の効果 を正確
に 判 定 す る 材 料 は得 られ て い な い.
for Pneumocys-
(PCP)
な お,吸
入 投 与 量 と有 効 性 の 関 係 を 調 べ る と,
Table
Efficacy
2
patients (PCP)
with
and
outcome
Pneumocystis
of
carinii
therapy
in
pneumonia
*1Post renal transplantation
. *2Adult T-cell leukemia . *3Acute myelocytic leukemia . *4Chronic myelocytic leukemia . *5Alternate conventional therapy sulpha-methoxazole
(ST)
(P) beforehand (b), together the nebulised pentamidine.
with
or parenteral
trimethoprim
-
pentamidine
with (t) or afterward
(a)
*1 Efficacy
was
evaluated
by recovery
toms and laboratory data. *2 Follow -up at 30 days after with
parenteral
or aerosolized
initiation
of clinical
of
symp -
treatment
pentamidine.
感 染 症 学雑 誌
第65巻
第3号
ペ ソ タ ミジ ン吸 入 投与 に よ る治療 成 績
Table
3
Side-effects
and tolerance
of inhalation
therapy
301
with pentamidine
in 13 patients
*1Renal disturbance (mild elevation *2Irritation on pharynx . *3Suspected . *4Uncertain . *5Administered *6Relationship
levels) .
drugs . between the cause of side-effects and the inhalation
13例 の 総 吸入 量 は 平 均 で5,138mg,救 総 吸 入 量 は5,801mg,死
of BUN and creatinine
命例 の平均
亡 例 で は2,930mgで
あっ
た.
of pentamidine .
れ に対 す る 吸 入 投 与 の成 績 は,吸 入 投 与 が 臨 床 で 試 験 され て か ら まだ 日が浅 い た め に例 数 が 少 な い が,2∼3の
報 告 で は治 癒 率 が90%に
達 す る もの
3. 副 作 用
が あ る もの の,全 体 と して は63%(46例
ペ ン タ ミジ ン吸 入 開 始 後 に 認 め られ た 副 作 用 に
で あ る.こ の 吸 入 投 与 の成 績 は 注 射 投 与 と同 程 度
つ い て,関 連 が 疑 わ しい 症 状 も含 め て,Table3に
で あ る.今 回 の 症 例 で は,Pc肺
ま とめ た.咳 嗽 が4例(31%),悪
(8例 中7例)の
心 ・嘔 吐 ・食 欲
中29例)
炎 確 診 群 で は88%
治癒 率 で あ り,こ れ ま で の 報 告 と
頭刺激
ほ ぼ 同 じ成 績 で あ る.吸 入 療 法 で 治 療 して か ら3
つ み られ た が,
ヵ月 以 内 に再 発 した 症 例 が報 告 さ れ て い る13)が,
咳 嗽 と咽 頭 刺 激 以 外 の症 状 は 吸 入 療 法 との 関 連 性
今 回 に は この よ うな 再 発 例 は み られ な か った. ペ ン タ ミジ ン の 副 作 用 に 関 して 文 献 的 に 検 索 す
不 振 が1例
あ り,こ の ほ か に も蕁 麻 疹,咽
お よび 腎 障 害 が 各1例(各8%)ず
が疑 わ し い と判 定 され た.副
作 用 のた め 吸 入 療 法
が継 続 で きず に 中 止 した 症 例 は2例(case9,
13)
で あ る.吸 入 後 に 白血 球 数 の減 少 を きた した 症 例
る と,注 射 投 与 の症 例 で 何 らか の 副 作 用 を 発 現 し た 症 例 は43%(361例
中156例)と
高 頻 度 で あ る.
は な く,ま た 臨 床 検 査 成 績 に お い て も副 作 用 発 現
し か も,腎 障 害 や 白血 球 減 少 な どの 全 身 性 の 副 作
の可 能 性 を 示 唆 す る異 常 は認 め られ て い な い.し
用 症 状 が 含 まれ て い る.こ れ に 対 して,吸
た が って,吸 入 投 与 に関 連 す る副 作 用 は 吸 入 に よ
の 症 例 に は,咳 嗽 な どの 気 道 刺 激 症 状 が高 い 頻 度
る気 道 刺 激(咳 嗽)が
で 出 現 し て い る.稀
お も な もの で あ る.
考
これ まで に報 告 され た 症 例 を ま とめ る と,Pc肺
場 合,治
癒 率 は60%(586例
平成3年3月20日
パズ
ム)12)14)や 喉 頭 炎15)を呈 す る こ と も報 告 さ れ て い
察
炎 の患 者 に ペ ン タ ミジ ン4mg/kgを
に は 気 管 支 痙 攣(ス
入投与
注 射 投 与 した
中350例)で
あ る.こ
る.今 回 の 症 例 に は,咳 嗽 が31%に
み られ た が,
全 身 性 の 副 作 用 は 吸 入 療 法 に よ り惹 起 さ れ な か っ た.こ
の よ うに,吸 入 法 で ペ ン タ ミジ ン の 毒 性 が
田辺 清勝 他
302
著 し く軽 減 され る理 由 は, ペ ン タ ミジ ン の血 中 濃
す る と, エ ア ロ ゾル が蓄 積 し て換 気 障 害 を さ ら に
度 が 中 毒 量 に は 達 し な い た め と 考 え ら れ る.
悪 化 され る 恐 れ が あ るた め で あ る. そ の適 応 の 基
AIDS患
準 の ひ とつ に, PaO2値
者 に4mg/kgを
静 脈 内 投 与 し た 場 合, 最
を ル ー ムエ アで 測 定 して,
高 血 漿 中 濃 度 は612ng/ml16)に 到 達 す る が, 吸 入 法
60mmHg以
で 同 量 を投 与 した 場 合 に は最 高 血 漿 中 濃 度 は 極 め
症 例 に, 吸 入 開 始 前 のPaO2値
て 低 い値(7ng/ml以
症 例 は少 な く とも2例(case
下15), 13ng/ml以
下17))に 留
ま っ て い る こ とが 明 らか に され て い る.
も9日
上15)の症 例 が 考 え られ て い る. 今 回 の が60mmHg以
下の
3, 7)あ り,い ず れ
目で 死 亡 し て い る. これ に 対 し, 換 気 の低
薬 剤 の 効 果 を 上 げ るた め に は病 巣 部 に お げ る ペ
下 し て い た 症 例 で 改善 が み られ る ま で に ペ ン タ ミ
ン タ ミジ ンの 濃 度 を 高 め る必 要 が あ る. そ の 濃 度
ジ ン の 静脈 内 投 与 法 を 行 っ て か ら吸 入 投 与 に切 り
を 血 漿 中 濃 度 の よ うに 直 接 に測 定 す る こ とは 困 難
替 えた 症 例 に 治 療 の成 功 例 が み られ る(例
で あ る が, そ れ に代 わ る測 定 法 と し て, 気 管 支 肺
case 1で は 静 脈 内 投 与 開 始 時 のPaO2値
胞 洗 浄(BAL)
mmHgで
液 の沈 渣 物 を検 体 と し て ペ ン タ ミ
え ば, は65
あ った が, 吸 入 開 始 時 で は87mmHgと
ジ ン の濃 度 を 測 定 した 報 告17)があ る. これ に よ る
改 善 さ れ て い る). ペ ン タ ミジ ンの 投 薬 は10∼14日
と, 300mgを
間 にわ た って 継 続 させ る こ とが 望 ま し く20), こ の
単 回 吸 入 した 場 合, 18∼24時 間 後 の
濃 度 は705ng/mlで 回 で4mg/mlを
あ り, この 濃 度 は 静 脈 内 に 単
投 与 した と きの濃 度(9.36ng/ml)
た め に 副 作 用 の発 現 例 に は 吸 入 法 に切 り替 え て で も投 薬 を 継 続 す る 必 要 性 が あ る. この よ うに, 投
と比 較 して2桁 高 い 値 で あ る. こ の よ うに,吸 入
与 法 を使 い 分 け, Pc肺 炎 の治 癒 率 を少 しで も高 め
法 で は肺 病 巣 の ペ ン タ ミジ ンの 濃 度 を 高 め,肺 胞
て い く こ とが 大 切 で あ る と考 え られ る.
腔 に生 息 し て い るPcの
殺 滅作用 を 強め る ことが
で き る と考 え られ る. 吸 入投 与 に必 要 な ウル トラネ ブ ラ イ ザ ーは 機 種 に よ って も発 生 して くる エ ア ロ ゾ ル粒 子 の 大 き さ が 異 な り, 治 療 成 績 に も影 響 す る. 粒 子 径 を 小 さ くす る と肺 胞 腔 に 浸 達 させ る こ とが で き る. そ れ に よ って 治 癒 効 果 が 高 ま り, 気 道 刺 激 も軽 減 で き る.Respirgard
IIは す ぐれ た機 種 と評 価 され, 平
均 粒 子 径 を1μmに
す る こ とが で き る18).エ ア ロ ゾ
ル 粒 子 径 と肺 の 分 布 との 関 係 で は, 径 が 大 き い(3 μm以 上)と き に は, 粒 子 は お もに 下 葉 に集 ま り, 上 葉 の 分 布 が 少 な くな る11)ことが 知 られ て い る. ペ ン タ ミジ ンの 吸 入 療 法 で は気 管 支 痙 攣 が 重 要 な 問題 と な る. この 発 現 機 序 は ネ ブ ラ イザ ー の機 械 的 刺 激 に よ る反 射 だ け で は な く, ジ ア ミジ ン類 に共 通 す る ヒス タ ミン遊 離 作 用19)が関 与 して い る と考 え られ て い る. chemical 発 現 して い る た め に,
mediatorを
介 して
この 気 管 支 痙 攣 に 対 して,
terbutaline (β-刺激 薬)14)やipratropium
(抗 コ リ
ン薬)が 奏 効 し12),これ らの 薬 剤 を前 投 与 す る と気 管 支 痙 攣 が 予 防 で き る こ と も報 告 され て い る. 換 気 障 害 が 高 度 な症 例 は ペ ン タ ミジ ン吸 入 投 与 の適 応 に は な らな い と考 え られ る. 重 症 例 に 吸 入
文 献 1) Ivady, G. & Paldy, L.: Ein neus Behandlungsverfahren der interstitiellen plasmazellen Pneumonie Fruehgeborener mit fuenfwertigem Stibium and aromatishen Diamidinen. Muschr. Kinderheilk, 106 : 10, 1958. 2) Western, K.A., Perera, D.R. & Schultz, M.G. : Pentamidine isethionate in the treatment of Pneumocystis carinii pneumonia. Ann. Int. Med., 73 : 695-702, 1970. 3) Walzer, P.D., Perl, D.P., Krogstad, D.J., et al. : Pneumocystic carinii in the United States. Epidermic, diagnostic and clinical features. Ann. Int. Med., 80 : 83-93, 1974. 4) Gordine, F.M., Simmon, G.L., Wofsy, C.B., et al. : Averse reactions to trimethoprimsulfamethoxazole in patients with the acquired immunodeficiency syndrome. Ann. Int. Med., 100 : 495-499, 1984. 5) Kovacs, J.A., Hiemenz, J.W., Macher, A.W., et al. : Pneumocystis carinii pneumonia : A comparison between patients with the acquired immunodeficiency syndrome and patients with other immunodeficiencies. Ann. Int. Med., 100 : 663-671, 1984. 6) Mitsuyasu, R., Groopman, J. & Volberding, P. : Cutaneous reaction to trimethoprimsulfamethoxazole in patients with AIDS and Kaposi's sarcoma. New Eng. J. Med., 308 : 1535 感 染 症 学雑 誌
第65巻
第3号
ペ ンタ ミジ ン吸入 投 与 に よ る治療 成 績 -1536
, 1983.
7) Leoung,
G.S., Mills,
J., Hopewell,
Dapsone-trimethoprim
P.C., et al. :
for Pneumocystis
carinii
pneumonia in acquired immunodeficiency drome. Ann. Int. Med., 105 : 45-48, 1986. 8)
田 辺 清 勝,
中 川 明 子,
田
馨:
ST合
例.
感 染 症 誌,
木村
哲,
syn-
三 田 村 圭 二,
島
剤 に 過 敏 反 応 を 呈 し たAIDSの1 62:
180-184,
1988.
9) Conte, J.E., Hollander, H. & Golden, J.A. : Inhalated or reduced-dose intravenous pentamidine for Pneumocystis carinii pneumonia. Ann. Int. Med., 107 : 495-498, 1987. 10) Montgomery, A.B., Debs, R.J., Luce, J.M., et al. : Aerosolised pentamidine as sole therapy for Pneumocystis carinii pneumonia in patients with acquired immunodeficiency syndrome. Lancet, ii : 480-483, 1987. 11) Abd, A.G., Nierman, D.M., Ilowite, J.S., Pierson, R.N. & Loomis, A.L. : Bilateral upper lobe Pneumocystis carinii pneumonia in a patient receiving inhaled pentamidine prophy laxis. Chest, 94 : 329-331, 1988. 12) Heley, A.: Aerosolised pentamidine treatment at home. Lancet, 2 : 1092, 1987. 13) Neibart, E.P. : Pneumocystis pneumonia.
Ultrasonic
Nebulised Pentamidine
303
Ann. Int. Med., 108 : 489-490, 1988. 14) Jesuthasan, A.J., Datta, A.K., Hamilton, R., Elliott, M., Guz, A. & Weinberg, J.: Aerosolized pentamidine. Lancet, ii : 971, 1987. 15) Girard, P.M., Couderc, L.J., Farinotti, R., Matheron, S., Kernbaum, S., Coulaud, J.P. & Saimot, A.G.: Ultrasonic nebulised pentamidine for pneumocystis pneumonia. Lancet, i : 1165, 1988. 16) Conte, J.E., Upton, R.A., Phelps, R.T., Wofsy, C.B., Zurlinden, E. & Lin, E.T.: Use of a specific and senditive assay to determine
17)
18)
19) 20)
pentamidine pharmacokinetisc in patients with AIDS. J. Inf. Dis., 154 : 923-929, 1986. Montgomery, A.B., Debs, R.J., Luce, J.M., Corkery, K.J., Turner, J., Brunette, E.N., Lin, E.T. & Hopewell, P.C. : Selective delivery of pentamidine to the lung by aerosol. Am. Rev. Respir. Dis., 137 : 477-478, 1988. Simonds, A.K., Newman, S.P., Johnson, M.A., Talaee, N., Lee, C.A. & Clarke, S.W. : Aerosolized pentamidine. Lancet, i : 221-222, 1989. Paton, W.D.M. : Aerosolized pentamidine. Lancet, ii : 1146, 1987. Havlichek, D.: Aerosolized pentamidine therapy. Ann. Int. Med., 109 : 167-168, 1988.
for Pneumocystis carinii Pneumonia
Kiyokatsu TANABE Department of Medical Zoology,Faculty of Medicine, Kagoshima University Hajime GOTO & Kaoru SHIMADA Department of Infectious Diseases, Institute of Medical Science, University of Tokyo Our retrospective
study for ultrasonic nebulised pentamidine
in 13 patients shows that 7 of 8
patients with Pneumocystis carinii pneumonia (PCP), proven by biopsy examination, were cured (recovery rate, 88%). Two of these 8 patients were mainly treated by nebulised pentamidine and the other 5 patients were administered parenteral pentamidine before the nebulised pentamidine therapy and the final 1 patient died on day 9 without clinical improvement with nebulised pentamidine as well as conventional therapy (trimethoprim-sulphamethoxazole, parenteral pentamidine). No relapse occurred in the 7 cured patients. The inhalation increased the cough in 4 of 13 cases and caused vomiting in 1 patient. Two patients discontinued the nebulisation because of the side-effect. No extra-pulmonary side-effects of nebulised pentamidine were seen. These results show that an efficacy of nebulised pentamidine is at least equal to conventional therapy with fewer side-effects and that only patients with mild PCP without severe hypoxaemia are eligible for the inhalation therapy.
平 成3年3月20日
ペ ン タ ミジ ン吸 入 投 与 に よ る ニ ュ ー モ シ ス チ ス カ リニ肺 炎 の 治 療 成 績 東京大学 医科学研究所感染症研究部 田辺
清勝
後藤
元
島田
馨
(平成2年7月19日 受付) (平成2年8月23日 受理)
Key words :
Pneumocystis carinii pneumonia, chemotherapy, immunodeficiency
要 イ セ チ オ ン酸 ペ ン タ ミジ ン(以 下,ペ す)肺
炎 の 治 療 薬 と し て,お
aerosolised
旨
ン タ ミジ ン と略 す)は
ニ ュ ー モ シ ス チ ス カ リニ(以 下,Pcと
も に 静 脈 内 投 与 で 使 用 され て い るが,こ
い た ペ ン タ ミジ ン の 吸 入 投 与 に つ い て,こ
pentamidine,
れ ま で の13症 例 を 対 象 と して 成 績 を 検 討 し た.そ
肺 炎 が 確 定 診 断 され た8例
の うち,7例(88%)に
生 存 率 で は88%(7例)で
あ った.ま
有 効 性 が 認 め られ,投
た,ペ
略
こで は ウ ル トラ ネ ブ ラ イ ザ ー を用
与 開 始 の1ヵ
の 結 果, Pc
月後 に判 定 した
ソ タ ミジ ソ 吸 入 投 与 との 関 連 が 認 め られ た 副 作 用 は 咳 嗽 が
4例(31%),嘔
吐 が1例(8%)で
れ た 症 例 で,有
効 率 は これ ま で に報 告 され た 静 脈 内 投 与 や 吸 人 投 与 の 成 績 と ほ ぼ 同 程 度 で あ った が,吸
あ っ た.今
回,Pc肺
炎 の治療 として吸 入法 を含 む種 々の治療 が な さ
入 投 与 の 症 例 で は 全 身 性 の 副 作 用 の 発 現 を軽 減 で き る こ とが 確 め られ た.と て は,換
くに,吸
入 法 の導 入 に つ い
気 障 害 の 程 度 の 軽 症 な 症 例 に 限 定 し,重 症 例 に は 静 脈 内 投 与 な ど に よ り換 気 障 害 が 改 善 され て
か ら用 い られ る べ き で あ る と考 え られ た.
は じめ に ペ ン タ ミ ジ ン は 芳 香 族 ジ ア ミ ジ ン 類 に 属 し, 1930年 代 後 半 に 英 国 のMay
&
Baker社
に よ って
ら,ペ ン タ ミジ ン がAIDSの 一 選 択 薬 とな った .
患 者 のPc肺
ペ ン タ ミジ ンを 吸 入 法 で 投 与 す る と,ヒ
炎 の第 トの 体
リパ ノ
内 に 吸 収 され る量 が 少 な くな る た め に,腎 毒 性 な
ソ ー マや リー シ ュマ ニ アの 治 療薬 と し て開 発 され
どの 全 身 性 の 副 作 用 が軽 減 で き る9)10).最近,こ の
た.1958年
炎の治
吸 入 投 与 法 に 対 す る関 心 は 高 く,海 外 で は 吸 入 法
か し,
を 用 い た 予 防 投 与11)や自宅 療 法12)が試 み られ て い
合 成 さ れ,抗
原 虫 作 用 が あ る こ と か ら,ト
にIvadyら1)は
こ の 薬 剤 をPc肺
療 に も 使 用 し て 有 効 性 を 報 告 し て い る.し
本 薬 剤 を 投 与 し た 症 例 に は,腎 障 害,白 血 球 減 少 な ど,重 篤 な 副 作 用 が 高 頻 度 に 発 現 す る こ と2)3)から, Pc肺
炎 の 治 療 に はST合
trimethoprim)が
剤
が,AIDS(後
天 性 免 疫 不 全 症 候 群)が
併 症 と し てPc肺 現 す る こ と,そ
し て 治 療 にST合
出
剤 を 投 与 す るサ
し,Respirgard
の製品
りバ イ ア ル を 蒸 留 水 に 溶 解
IIな どの ウ ル トラ ネ ブ ライ ザ ーで
吸 入 した.こ れ ま で に 試 験 さ れ た 吸 入 投 与 例 は13
れ た(東
鹿 児 島大 学 医学 部 医 動物 学 講 座
平成3年3月20日
を 用 い た. 300mg入
& Baker社
例 で あ り,こ れ らの 症 例 はつ ぎの9施 設 で 実 施 さ
(〒890)鹿 児 島市 宇宿 町1208-1 田辺
方 法 な ら び に症 例 ペ ン タ ミジ ン は英 国 のMay
ル フ ァ剤 過 敏 症 を 惹 起 し や す い6)∼8)こと な ど か 別刷 請 求 先:
ン タ ミジ ンの 吸 入 投 与 例 の成 績 を 検 討
ころ
登 場 し,合
炎 が 高 頻 度(83%4),65%5))に
今 回,ペ
した の で報 告 す る.
(sulfamethoxazole-
お も に 使 用 さ れ て き た.と
る.
清勝
京 大 学 医 科 学 研 究 所 内 科,東
京女子医科
大 学 腎 セ ン タ ー,東 京 医 科 歯 科 大 学 第2内
科,神
田辺
300
奈 川 県 立 が ん セ ン タ ー血 液 化 学 療 法 科,神 奈 川 県 立 循 環 器 呼 吸 器 病 セ ン タ ー呼 吸 器 科,千 学 部 小 児 科,青
葉大学 医
森 県 立 中央 病 院 消 化 器 内 科,久
米 大 学 医 学 部 小 児 科,大
分 医 科 大 学 第2内
成
留
1に,ペ
り替 えた5症 例(case 残 りの1症 例(case
績
ミジ ンの 吸 入 を初 め に行 った が 改 善 が み られ ず,
Table
13症 例 の 背 景 因子 を,性 別,基 礎 疾 患,吸
入投与
入 法 の 用 量 と期 間,Pc肺
炎
2に,
Pc肺 炎 の 確 診 群 の 有 効 性(臨 床 効
果)と 全 症 例 の 転 帰 を ま とめ た.Pc肺
は 省 いた.そ
の 結 果,ペ
む 今 回 のPc肺
理 標 本 でPcが
の 有 効 率 で あ った.ま
確 認 され た8例(62%)の
確診例 に
つ い て み る と,基 礎 疾 患 はAIDSが6例
(75%)
炎 の治 療
例)で
を み る と,ST合
併 用 して は じ め の4日 (1日 量 が100mgで
剤で効 果が み られ 例
ン タ ミジ ンの 静 脈 内 投 与 で 治
療 を開 始 し,副 作 用 が 出現 した た め に 吸 入 法 に切
後2日
1
Characteristics
ultrasonic
nebulised
tis carinii
pneumonia
in 13 patients pentamidine
receiving
間 を ペ ン タ ミジ ン の 吸 入
十 分 な量 と は言 え な い),そ の
間 休 薬 し,つ ぎの4日
間 ペ ン タ ミジ ン の静
脈 内 投 与 が な され た 症 例 で あ る.こ れ らの 治 療 で 症 状 の改 善 が み られ ず,治 療 を 開 始 して9日 死 亡 した.剖
Table
ン タ ミジ ン投 与 開 始
剤 の投 与 が10日 間 な され,こ れ と
れ た 症 例 は な か った が,ST合
(case6,9)や,ペ
た,ペ
(88%)
あ っ た.治 療 に効 果 が み られ な か った1例
と して ペ ン タ ミジ ン の 吸 入 投 与 だ け を 単 独 で な さ
な か った た め に 吸 入 投 与 に 切 り替 え た2症
ン タ ミジ ン吸 入 投 与 を 含
炎 の 治 療 成 績 は8例 中7例
の1ヵ 月 後 に判 定 した 生 存 率 で も同 じ く88%(7
胞 性 白血 病,腎 移 植 後
の症 例 が そ れ ぞ れ1例 ず つ で あ る.Pc肺
炎 の診断 が
生 検 に よ って 確 定 して い な い症 例 の 有 効 性 の 検 討
に 用 い られ た ほ か の 治療 薬 の項 目で ま とめ た .病
で あ り,ほ か に は 成 人T細
剤 の投 与 とペ ン タ
2. 有 効 性
ン タ ミジ ンの 吸 入 療 法 を試 み た
開 始 前 のPaO2値,吸
1, 2, 10, 12, 13)が あ り,
3)はST合
ペ ン タ ミジ ン の 静脈 内 投 与 に 替 えた 症 例 で あ る .
科).
1. 症 例 の 背 景 Table
清勝 他
検 は な され ず,投
目に
薬後の効果 を正確
に 判 定 す る 材 料 は得 られ て い な い.
for Pneumocys-
(PCP)
な お,吸
入 投 与 量 と有 効 性 の 関 係 を 調 べ る と,
Table
Efficacy
2
patients (PCP)
with
and
outcome
Pneumocystis
of
carinii
therapy
in
pneumonia
*1Post renal transplantation
. *2Adult T-cell leukemia . *3Acute myelocytic leukemia . *4Chronic myelocytic leukemia . *5Alternate conventional therapy sulpha-methoxazole
(ST)
(P) beforehand (b), together the nebulised pentamidine.
with
or parenteral
trimethoprim
-
pentamidine
with (t) or afterward
(a)
*1 Efficacy
was
evaluated
by recovery
toms and laboratory data. *2 Follow -up at 30 days after with
parenteral
or aerosolized
initiation
of clinical
of
symp -
treatment
pentamidine.
感 染 症 学雑 誌
第65巻
第3号
ペ ソ タ ミジ ン吸 入 投与 に よ る治療 成 績
Table
3
Side-effects
and tolerance
of inhalation
therapy
301
with pentamidine
in 13 patients
*1Renal disturbance (mild elevation *2Irritation on pharynx . *3Suspected . *4Uncertain . *5Administered *6Relationship
levels) .
drugs . between the cause of side-effects and the inhalation
13例 の 総 吸入 量 は 平 均 で5,138mg,救 総 吸 入 量 は5,801mg,死
of BUN and creatinine
命例 の平均
亡 例 で は2,930mgで
あっ
た.
of pentamidine .
れ に対 す る 吸 入 投 与 の成 績 は,吸 入 投 与 が 臨 床 で 試 験 され て か ら まだ 日が浅 い た め に例 数 が 少 な い が,2∼3の
報 告 で は治 癒 率 が90%に
達 す る もの
3. 副 作 用
が あ る もの の,全 体 と して は63%(46例
ペ ン タ ミジ ン吸 入 開 始 後 に 認 め られ た 副 作 用 に
で あ る.こ の 吸 入 投 与 の成 績 は 注 射 投 与 と同 程 度
つ い て,関 連 が 疑 わ しい 症 状 も含 め て,Table3に
で あ る.今 回 の 症 例 で は,Pc肺
ま とめ た.咳 嗽 が4例(31%),悪
(8例 中7例)の
心 ・嘔 吐 ・食 欲
中29例)
炎 確 診 群 で は88%
治癒 率 で あ り,こ れ ま で の 報 告 と
頭刺激
ほ ぼ 同 じ成 績 で あ る.吸 入 療 法 で 治 療 して か ら3
つ み られ た が,
ヵ月 以 内 に再 発 した 症 例 が報 告 さ れ て い る13)が,
咳 嗽 と咽 頭 刺 激 以 外 の症 状 は 吸 入 療 法 との 関 連 性
今 回 に は この よ うな 再 発 例 は み られ な か った. ペ ン タ ミジ ン の 副 作 用 に 関 して 文 献 的 に 検 索 す
不 振 が1例
あ り,こ の ほ か に も蕁 麻 疹,咽
お よび 腎 障 害 が 各1例(各8%)ず
が疑 わ し い と判 定 され た.副
作 用 のた め 吸 入 療 法
が継 続 で きず に 中 止 した 症 例 は2例(case9,
13)
で あ る.吸 入 後 に 白血 球 数 の減 少 を きた した 症 例
る と,注 射 投 与 の症 例 で 何 らか の 副 作 用 を 発 現 し た 症 例 は43%(361例
中156例)と
高 頻 度 で あ る.
は な く,ま た 臨 床 検 査 成 績 に お い て も副 作 用 発 現
し か も,腎 障 害 や 白血 球 減 少 な どの 全 身 性 の 副 作
の可 能 性 を 示 唆 す る異 常 は認 め られ て い な い.し
用 症 状 が 含 まれ て い る.こ れ に 対 して,吸
た が って,吸 入 投 与 に関 連 す る副 作 用 は 吸 入 に よ
の 症 例 に は,咳 嗽 な どの 気 道 刺 激 症 状 が高 い 頻 度
る気 道 刺 激(咳 嗽)が
で 出 現 し て い る.稀
お も な もの で あ る.
考
これ まで に報 告 され た 症 例 を ま とめ る と,Pc肺
場 合,治
癒 率 は60%(586例
平成3年3月20日
パズ
ム)12)14)や 喉 頭 炎15)を呈 す る こ と も報 告 さ れ て い
察
炎 の患 者 に ペ ン タ ミジ ン4mg/kgを
に は 気 管 支 痙 攣(ス
入投与
注 射 投 与 した
中350例)で
あ る.こ
る.今 回 の 症 例 に は,咳 嗽 が31%に
み られ た が,
全 身 性 の 副 作 用 は 吸 入 療 法 に よ り惹 起 さ れ な か っ た.こ
の よ うに,吸 入 法 で ペ ン タ ミジ ン の 毒 性 が
田辺 清勝 他
302
著 し く軽 減 され る理 由 は, ペ ン タ ミジ ン の血 中 濃
す る と, エ ア ロ ゾル が蓄 積 し て換 気 障 害 を さ ら に
度 が 中 毒 量 に は 達 し な い た め と 考 え ら れ る.
悪 化 され る 恐 れ が あ るた め で あ る. そ の適 応 の 基
AIDS患
準 の ひ とつ に, PaO2値
者 に4mg/kgを
静 脈 内 投 与 し た 場 合, 最
を ル ー ムエ アで 測 定 して,
高 血 漿 中 濃 度 は612ng/ml16)に 到 達 す る が, 吸 入 法
60mmHg以
で 同 量 を投 与 した 場 合 に は最 高 血 漿 中 濃 度 は 極 め
症 例 に, 吸 入 開 始 前 のPaO2値
て 低 い値(7ng/ml以
症 例 は少 な く とも2例(case
下15), 13ng/ml以
下17))に 留
ま っ て い る こ とが 明 らか に され て い る.
も9日
上15)の症 例 が 考 え られ て い る. 今 回 の が60mmHg以
下の
3, 7)あ り,い ず れ
目で 死 亡 し て い る. これ に 対 し, 換 気 の低
薬 剤 の 効 果 を 上 げ るた め に は病 巣 部 に お げ る ペ
下 し て い た 症 例 で 改善 が み られ る ま で に ペ ン タ ミ
ン タ ミジ ンの 濃 度 を 高 め る必 要 が あ る. そ の 濃 度
ジ ン の 静脈 内 投 与 法 を 行 っ て か ら吸 入 投 与 に切 り
を 血 漿 中 濃 度 の よ うに 直 接 に測 定 す る こ とは 困 難
替 えた 症 例 に 治 療 の成 功 例 が み られ る(例
で あ る が, そ れ に代 わ る測 定 法 と し て, 気 管 支 肺
case 1で は 静 脈 内 投 与 開 始 時 のPaO2値
胞 洗 浄(BAL)
mmHgで
液 の沈 渣 物 を検 体 と し て ペ ン タ ミ
え ば, は65
あ った が, 吸 入 開 始 時 で は87mmHgと
ジ ン の濃 度 を 測 定 した 報 告17)があ る. これ に よ る
改 善 さ れ て い る). ペ ン タ ミジ ンの 投 薬 は10∼14日
と, 300mgを
間 にわ た って 継 続 させ る こ とが 望 ま し く20), こ の
単 回 吸 入 した 場 合, 18∼24時 間 後 の
濃 度 は705ng/mlで 回 で4mg/mlを
あ り, この 濃 度 は 静 脈 内 に 単
投 与 した と きの濃 度(9.36ng/ml)
た め に 副 作 用 の発 現 例 に は 吸 入 法 に切 り替 え て で も投 薬 を 継 続 す る 必 要 性 が あ る. この よ うに, 投
と比 較 して2桁 高 い 値 で あ る. こ の よ うに,吸 入
与 法 を使 い 分 け, Pc肺 炎 の治 癒 率 を少 しで も高 め
法 で は肺 病 巣 の ペ ン タ ミジ ンの 濃 度 を 高 め,肺 胞
て い く こ とが 大 切 で あ る と考 え られ る.
腔 に生 息 し て い るPcの
殺 滅作用 を 強め る ことが
で き る と考 え られ る. 吸 入投 与 に必 要 な ウル トラネ ブ ラ イ ザ ーは 機 種 に よ って も発 生 して くる エ ア ロ ゾ ル粒 子 の 大 き さ が 異 な り, 治 療 成 績 に も影 響 す る. 粒 子 径 を 小 さ くす る と肺 胞 腔 に 浸 達 させ る こ とが で き る. そ れ に よ って 治 癒 効 果 が 高 ま り, 気 道 刺 激 も軽 減 で き る.Respirgard
IIは す ぐれ た機 種 と評 価 され, 平
均 粒 子 径 を1μmに
す る こ とが で き る18).エ ア ロ ゾ
ル 粒 子 径 と肺 の 分 布 との 関 係 で は, 径 が 大 き い(3 μm以 上)と き に は, 粒 子 は お もに 下 葉 に集 ま り, 上 葉 の 分 布 が 少 な くな る11)ことが 知 られ て い る. ペ ン タ ミジ ンの 吸 入 療 法 で は気 管 支 痙 攣 が 重 要 な 問題 と な る. この 発 現 機 序 は ネ ブ ラ イザ ー の機 械 的 刺 激 に よ る反 射 だ け で は な く, ジ ア ミジ ン類 に共 通 す る ヒス タ ミン遊 離 作 用19)が関 与 して い る と考 え られ て い る. chemical 発 現 して い る た め に,
mediatorを
介 して
この 気 管 支 痙 攣 に 対 して,
terbutaline (β-刺激 薬)14)やipratropium
(抗 コ リ
ン薬)が 奏 効 し12),これ らの 薬 剤 を前 投 与 す る と気 管 支 痙 攣 が 予 防 で き る こ と も報 告 され て い る. 換 気 障 害 が 高 度 な症 例 は ペ ン タ ミジ ン吸 入 投 与 の適 応 に は な らな い と考 え られ る. 重 症 例 に 吸 入
文 献 1) Ivady, G. & Paldy, L.: Ein neus Behandlungsverfahren der interstitiellen plasmazellen Pneumonie Fruehgeborener mit fuenfwertigem Stibium and aromatishen Diamidinen. Muschr. Kinderheilk, 106 : 10, 1958. 2) Western, K.A., Perera, D.R. & Schultz, M.G. : Pentamidine isethionate in the treatment of Pneumocystis carinii pneumonia. Ann. Int. Med., 73 : 695-702, 1970. 3) Walzer, P.D., Perl, D.P., Krogstad, D.J., et al. : Pneumocystic carinii in the United States. Epidermic, diagnostic and clinical features. Ann. Int. Med., 80 : 83-93, 1974. 4) Gordine, F.M., Simmon, G.L., Wofsy, C.B., et al. : Averse reactions to trimethoprimsulfamethoxazole in patients with the acquired immunodeficiency syndrome. Ann. Int. Med., 100 : 495-499, 1984. 5) Kovacs, J.A., Hiemenz, J.W., Macher, A.W., et al. : Pneumocystis carinii pneumonia : A comparison between patients with the acquired immunodeficiency syndrome and patients with other immunodeficiencies. Ann. Int. Med., 100 : 663-671, 1984. 6) Mitsuyasu, R., Groopman, J. & Volberding, P. : Cutaneous reaction to trimethoprimsulfamethoxazole in patients with AIDS and Kaposi's sarcoma. New Eng. J. Med., 308 : 1535 感 染 症 学雑 誌
第65巻
第3号
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for Pneumocystis
carinii
pneumonia in acquired immunodeficiency drome. Ann. Int. Med., 105 : 45-48, 1986. 8)
田 辺 清 勝,
中 川 明 子,
田
馨:
ST合
例.
感 染 症 誌,
木村
哲,
syn-
三 田 村 圭 二,
島
剤 に 過 敏 反 応 を 呈 し たAIDSの1 62:
180-184,
1988.
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Ultrasonic
Nebulised Pentamidine
303
Ann. Int. Med., 108 : 489-490, 1988. 14) Jesuthasan, A.J., Datta, A.K., Hamilton, R., Elliott, M., Guz, A. & Weinberg, J.: Aerosolized pentamidine. Lancet, ii : 971, 1987. 15) Girard, P.M., Couderc, L.J., Farinotti, R., Matheron, S., Kernbaum, S., Coulaud, J.P. & Saimot, A.G.: Ultrasonic nebulised pentamidine for pneumocystis pneumonia. Lancet, i : 1165, 1988. 16) Conte, J.E., Upton, R.A., Phelps, R.T., Wofsy, C.B., Zurlinden, E. & Lin, E.T.: Use of a specific and senditive assay to determine
17)
18)
19) 20)
pentamidine pharmacokinetisc in patients with AIDS. J. Inf. Dis., 154 : 923-929, 1986. Montgomery, A.B., Debs, R.J., Luce, J.M., Corkery, K.J., Turner, J., Brunette, E.N., Lin, E.T. & Hopewell, P.C. : Selective delivery of pentamidine to the lung by aerosol. Am. Rev. Respir. Dis., 137 : 477-478, 1988. Simonds, A.K., Newman, S.P., Johnson, M.A., Talaee, N., Lee, C.A. & Clarke, S.W. : Aerosolized pentamidine. Lancet, i : 221-222, 1989. Paton, W.D.M. : Aerosolized pentamidine. Lancet, ii : 1146, 1987. Havlichek, D.: Aerosolized pentamidine therapy. Ann. Int. Med., 109 : 167-168, 1988.
for Pneumocystis carinii Pneumonia
Kiyokatsu TANABE Department of Medical Zoology,Faculty of Medicine, Kagoshima University Hajime GOTO & Kaoru SHIMADA Department of Infectious Diseases, Institute of Medical Science, University of Tokyo Our retrospective
study for ultrasonic nebulised pentamidine
in 13 patients shows that 7 of 8
patients with Pneumocystis carinii pneumonia (PCP), proven by biopsy examination, were cured (recovery rate, 88%). Two of these 8 patients were mainly treated by nebulised pentamidine and the other 5 patients were administered parenteral pentamidine before the nebulised pentamidine therapy and the final 1 patient died on day 9 without clinical improvement with nebulised pentamidine as well as conventional therapy (trimethoprim-sulphamethoxazole, parenteral pentamidine). No relapse occurred in the 7 cured patients. The inhalation increased the cough in 4 of 13 cases and caused vomiting in 1 patient. Two patients discontinued the nebulisation because of the side-effect. No extra-pulmonary side-effects of nebulised pentamidine were seen. These results show that an efficacy of nebulised pentamidine is at least equal to conventional therapy with fewer side-effects and that only patients with mild PCP without severe hypoxaemia are eligible for the inhalation therapy.
平 成3年3月20日
