補 綴 誌,
J
Jpn
Prosthodont
Soc,
34:
519•`530,
1990.
原 著 論文
ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 歯 の 耐 摩 耗 性 に つ い て 鈴木 The
司郎
Evaluation
酒匂 充夫
of Wear
Shiro Suzuki,
Abstract:
Wear
partially and
metal.
and
for
of
parts.
test
machine.
the
which
The
specimens
least
wear
difference
of
loss
while ratio
The
New
was heat
were
wear 10
depth mm
cured the
teeth,
plastic
plane
specimens
metacolor,
were
used
and
titanium
abraded and
Denture
Teeth
for
curing
resin
the
rod
while
reinforced
with
reinforced
with
of at
1, 5,
up
resin
Mitel-OM
gallium
containing
cobalt
alloy
palladium 10
were
with
resin,
chromium
specimens
measured
which
made
veneering
parts,
were
teeth
were
containing
by
width
heat
denture
were
alloy
and
20•~
with
104
times
each.
veneering
specimens
between
of Hybrid
denture
alloy
specimens
The
stroke
wear
resin,
palladium
The
of
hybrid evaluated.
methacrylate)
alloy,
metal
abrasion
veneering
methyl
silver
was
彦
Mitsuo Sakoh and Akihiko Shiba
of
metal,
curing
(Poly
alloy,
abrasion
with
Light
PMMA
filling used
characteristics
reinforced
Resistance
芝燁
resin of PMMA
light
cured
and
heat
cured
chromium silver
veneering
cobalt alloy
resin
did was
alloy the not
showed
most.
The
statistically
significant.
Key
words:
crosslinked occlusal,
plastic centric
denture
tooth,
hybrid
denture
tooth,
abrasion
test,
metal
stop
い とい う特 徴 を有 して い る こ と に起 因 して い る.し か し 1. 緒
な が ら,硬 度 や 耐摩 耗 性 が不 十 分 で あ り,咬 合 を 回 復
言
し,永 続 させ る とい う観 点 か らは 満足 の い くもの とは い 床 義 歯用 人 工 歯 は,義 歯 の 機 能 回 復 を果 た す た め の重
えな い.こ れ を改 良 した もの と して,近 年 耐 摩 耗 性 の 向
要 な要 素 の1つ で あ る.特 に臼 歯 部用 人 工歯 は,付 与 し
上 した硬 質 レジ ン歯 が 多用 され て お り,そ の有 用 性 も認
た顎 位 を保 持,安 定 させ る こ とに直 接 働 くた め,人 工 歯
め られ て い る1).硬 質 レジ ン歯 は従 来 の ア ク リ リ ック レ
の選択 に際 しては そ の 材 質 につ い て 十分 考慮 す る必 要 が
ジ ン歯 と比 較 して,多 官 能 性 モ ノマ ー の使 用 に よ り,ポ リマ ーが架 橋 構 造 を持 つ た め,硬 度,耐 摩 耗 性 に優 れ て
ある. 従 来 よ りア ク リ リ ック レジ ン歯 が 広 く臨 床 で使 用 され
お り,ま た最 近 の有 機 質複 合 フ ィ ラー を含 む タ イ プの も
て い るが,そ れ は削 合 の 簡 便 さ と破 折,脱 落 が生 じ に く
の で は さ らに改 良 が加 え られ,優 れ た もの に な っ て い る.し か しな が ら,ポ リマ ー が硬 く,緻 密 に な るた め床
昭和大学歯学部第三補綴学教 室 The tistry,
3rd
Department
Showa
of
Prosthodontics,
用 レジ ン との相 溶 性 が悪 く,レ ジ ン歯 で あ りな が ら陶 歯 School
of Den-
と同 じよ う に脱 落 す る可 能性 が 出現 し2),ま た脆 弱 性 の
University
発 現 によ り口腔 内で の破 折 とい う問 題 も生 じて き た3).
平成元年12月8日 受付 93―519
94―520
補 綴 誌
34巻3号(1990)
法 を表1に 示 した.レ ジ ンは 光 重 合 型 硬 質 レジ ンの ニ ュ ー メ タ カ ラー(以 下NMと 略/サ ン メ デ ィ カ ル 社 製), 加 熱 重 合 型 硬 質 レジ ンの マ イ テ ルーOM(以
下MTと
略/
サ ン メデ ィカ ル 社 製),比 較 対 照 と して ポ リメ チ ル メ タ ク リレー ト(以 下PMと
略/三 菱 レー ヨ ン社 製)を
用
い た.金 属 は,金 属 練 成 充 填 材 の試 作 ガ リウム 合金(以 下Gaと
略/徳 力 本 店 製),銀 合 金 と して,キ ャ ステ ィン
グ シ ルバ ーS(以
下Agと
ム合 金 と して,キ
ャ ス トウェ ルMC(以
社 製),そ ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 歯(フ
製),金
銀パ ラジ ウ
下Pdと
略/GC
して チ タ ン含 有 コバ ル トク ロム 合金 の デ ン チ
タ ン(以 下Deと 図1-a
略/GC社
略/ク ル ップ 社 製)を 使 用 した.
レー ム部)
2. 試 料 の作 製 実験 試 料 の作 製 は,NMで ×1.5mmの
は まず,金 属 部 を3.5×7.5
大 き さにWax-upし
テ ン シ ョ ン ビー ズSS(GC社 35∼40μmの
た の ち,基 底 面 に リ 製)を
付 与 して鋳 造 し,
酸 化 アル ミナ にて サ ン ドブ ラ ス ト処 理 を行
った.そ の後,ガ ラ ス板 に固定 し,オ ペ ー クボ ンデ ィ ン グ ライ ナ ー(サ ン メ デ ィ カル 社製)を
塗 布 した の ち,ガ ラ
ス板 と合 わせ た テ フ ロ ン型 に填 入 し,表1に で光 照 射 器(α-ラ イ ト/モ リタ 社製)に 10×10×2mmの
平 板 状 こ調 製 した.た だ し,Gaは 練 成
充 填 材 のた め,NMの 図1-b
硬 質 レジ ン を使 用 したハ イ ブ リッ ド型 人 工 歯
示 した条 件
て重 合 を行 い,
重 合 後,試 料 中央 に鋳 造 体 と同一
形 態 に形 成 され た 窩 洞 に填 塞 した.ま た,窩 洞 形成 に際
部 分床 義歯 で はそ の対 合歯 が天 然 歯,金 属,陶 材,レ ジ
して は,相 対 す る金 属試 料 が滑 走 す る部 分 以 外 の側 面 に
ン と異 な って お り4―6),対合 歯 の 硬度 に よ り多 少 の 摩 耗
ア ン ダー カ ッ トを付 与 した.MTに
が認 め られ る のが 現 状 で あ る7).こ の た め,強 度,耐
製 作 した が,オ ペ ー ク ボ ンデ ィ ング ラ イ ナー は 使 用 せ
摩
つ い て も同 じ方 法 で
耗 性 を 最重 要 視 す る場 合 には,審 美性 を犠 牲 に して金 属
ず,重 合 は加 圧 重 合 器(松 風 社 製)を 使 用 した.PMは
歯 を用 い る こ とも多 々行 われ て い る.
板 状 の ポ リマ ー ブ ロ ック か ら切 り出 した の ち,NM,MT
筆者 らは,こ れ ら両者 の欠 点 を補 うべ く,硬 質 レジ ン
と同-サ イ ズ に仕 上 げ,窩 洞 形 成 を行 い,金 属 部 をWax-
と金 属 とを組 合 せ たハ イ ブ リッ ド型 人 工 歯 を考案 し,臨
upし,鋳
床 に供 して い る(図1).す
ー ボ ン ドC&B(サ
な わ ち,セ ン トリッ ク ス トッ
造 の の ち,サ ン ドブ ラ ス ト処 理 を行 い,ス ーパ ン メデ ィ カル 社製)に
プ部 分 を金 属 で鋳 造 して回 復 し,そ の周 囲 を硬 質 レジ ン
す べ て の試 験 片 は,エ
で 形成 した 人 工 歯 で あ る.し か し,こ れ も使 用 す る硬 質
上 げ た の ち,0.3μmの
て合 着 した .
メ リー研 磨(1500番)で
平面 に仕
ア ル ミナ粉 末 を用 い て パ フ研 磨
レジ ンお よび金 属 の種 類 に よ り,耐 摩 耗 性 が 大 き く変 化
を施 し,実 験 に供 した.な お,試 料 は 各 条 件 ご と に5個
す る こ とが 予 測 され る.今 回,こ のハ イ ブ リッ ド型 人 工
と した.
歯 の組 成 を変 え,実 験 室 的 にそれ らの耐摩 耗 性 に つ いて
一方
比較,検 討 を行 っ た結 果,2,3の
知 見 が 得 られ た の で
ここ に報 告 す る.
,こ れ らの平 板 試 料 に相 対 す る摩 耗 試 料 は,鈴 木
らの 方 法8)に従 い,12%金 ウェ ルMC/GC社
II. 材 料 と 方 法
銀 パ ラ ジ ウム 合金(キ
さ20mmで,先
端 が半 径1-5mmの
と した(図2).試
料 は,サ ン ドブ ラ ス ト処理 を行 い表 面
を均一 に し,実 験 に供 した. 1. 実 験材 料 実 験 に使 用 した レジ ンお よび 金 属,ま た それ らの調 製
ャス ト
製)を 用 い て 製作 し,直 径3mm,長 半 球状 の 棒状 試 料
ハイブ リッ ド型人工歯 の耐摩耗性にっいて
95―521
表1 実験材料お よび調製法
図2 摩耗試料(棒 状試料)お よび被摩耗試料(実 験試料)
図3-a
行 った(図3).こ
摩耗試験機
の とき,摩 耗試 料(棒 状試 料)が 被摩
耗試 料(実 験 試料)の
レジ ン部 と金 属 部 を 同 じ滑 走 距 離
を もつ よ うに試験 機 の台座 に固定 した.条 件 は,荷 重1 kg,滑 走距 離5mm,1往 イ ク ル で最 高20万 5,10,20万
復 を1回 と し,毎 分120回
回 の摩 耗 試験 を行 った.そ
のサ
して,1,
の 各 回数 につ き,被 摩 耗 試 料 の摩 耗 深 さお
よび 幅 につ い て レジ ン部 お よび金 属 部 の 中央 に て測 定 し た.測 定 は,シ
リ コー ン ラバ ー 印象 材(ハ イ ドロフ ィ リ
ッ クー エ グザ フ レ ック ス,レ ギ ュ ラ ー タイ プ/GC社
製)
を用 いて 摩 耗 面 の レプ リカ を採 取 し,万 能 投影 機(V-16 図3-b
D/日
実験中の試料
本 光 学 社製)に て 測 定 し,各 々 の平 均値 を求 めた.
摩 耗 試料 の20万 3. 実験 方 法 摩 耗 試験 は,摩 耗 試 験 機8)(理 科 工 業 社 製)を
回後 の摩 耗 面積 は,試 料 の摩 耗 面 を
万能 投影 機 を用 い て50倍 用いて
千 万社 製)に
に投 影 し,OHPフ
ィル ム(十
トレー ス した の ち,電 磁 式 は か り(研 精 工
96―522
補 綴 誌
34巻3号(1990)
表2 各 回数後 における被摩耗試料 の摩耗 深さ
表3 各回数後における被摩耗試料の摩耗幅
97―523
ハ イブ リッド型人工歯の耐摩耗性 につ いて 業 社製)に
て 重 さ を計 測 し,10×10cmのOHPフ
ィル
ム の重 さ との比 例 関 係 よ り算 出 した.
型 硬 質 レジ ンのNMと
加 熱 重 合 型 硬 質 レジ ンのMTは,
摩 耗 の推 移 が 近似 してお り,NM,MTと
も にAgと
組
合 せ た時 に摩 耗 量 が 多 く,レ ジ ン と金 属 の摩 耗 量 は 同 程 III. 実 験 結 果
度 で あ っ た.Pdと
組 合 せ た 時 も,摩 耗 幅 はAgと
度 で あ った が,摩 耗 深 さはAgよ 1. 被 摩 耗 試 料(実 験 試 料)の 摩耗 に つ いて
MTと
も に,Deと
a) 摩 耗 深 さお よび摩 耗 幅 につ い て
総 合 的 にみ る とMTとDeの
各 回数 後 にお け る被 摩 耗 試料 の摩 耗深 さを表2に,摩
示 し,20万 mm,摩
MTと
0.028±0.007mm,摩
比 較 し,摩 耗 量 が 多 か っ た.こ の こ とか ら,PM
は金 属 に よ る摩 耗 抑 制 効 果 が低 い こ とが 判 明 した.ま た, PMで
は摩 耗 幅 は金 属 の種 類 に よ り大 差 は み られ な か っ
た もの の,摩 耗 深 さ に おい て はPdと 万 回後 で0.264±0.036mmと
図4-a
Gaを
組 合 せ た場 合,20
最 小値 を示 した.光 重合
用 い た場 合 の 各試 料 の 摩耗 深 さ
図4-b Gaを 用 いた場合の各試料 の摩耗 幅
組合 せ た時,摩 耗 抑 制 効果 が大 き く,
回後 のMT部
耗幅 を表3に 示 した.レ ジ ン部 の摩 耗 で は,PMはNM,
同程
りも低 か った.NM,
組 合 せ が 最 も良い 結 果 を の摩 耗 深 さは0.067±0.008
耗 幅 が1.027±0.062mm,De部
の摩 耗 深 さは
耗 幅 が0.771±0.082mmと
なっ
た. 次 に,各 試 料 の1∼20万
回後 の摩 耗 深 さ と摩 耗 幅 を図
に示 した. 図4-aにGaを
図5-a
用 いた 場 合 の各 試 料 の摩 耗深 さ を,図
Agを
用 い た場 合 の 各試 料 の摩 耗 深 さ
図5-b Agを 用いた場合 の各試料の摩耗幅
補 綴 誌
98―524
図6-a
図6-b
Pdを
Pdを
34巻3号(1990)
用 い た場 合 の各 試 料 の摩 耗 深 さ
図7-a
用 いた 場 合 の 各試 料 の摩 耗 幅
Deを
図7-b
4-bに 摩 耗幅 を示 した.ま ず,摩 耗 深 さ につ い てみ る と,
に,増
PM部
0.503±0.140mm,摩
は1万 回 後 の時 点 です で に他 の レジ ン 部 と 比 較
し,0.055±0.015mmと NM,MT部
大 きな摩 耗 量 を示 し て い た.
は摩 耗 の変 化 が近 似 して お り,20万
回後で
も大 き な差 は 示 さな か っ た.こ れ と比 較 し,Ga部
は組
合 さっ た レジ ンの種 類 に よ る有 意 な差 は認 め られ な か っ た.摩 耗 幅 は,全 体 的 にみ る と,レ ジ ン部,金 属 部 と も に,1万
回 後 ま で で大 き な摩 耗 量 を示 し,5万
回 後以 降
は摩 耗 量 に大 きな変 化 はみ られ な くな った.ま た,レ ジ ン部 の摩 耗 変 化 は摩 耗 深 さ と近似 した が,Ga部 と組 合 せ た 場 合,NM,MTと 20万 回後 で0.813±0.100mmと
はPM
組 合 せ た 時 と 比 較 し, 摩 耗幅 が若 干 少 な か っ
た. 図5-aにAgを
用 い た場 合 の各 試 料 の摩 耗 深 さ
Deを
用 い た 場 合 の 各試 料 の摩 耗 幅
加 傾 向 が 高 く,20万
回 後 のPM部
の 摩 耗 深 さ は0.049±0.009mm,摩 mmと
な り,Ag部
図6-aに
とAg部
用 い た 試 料 の 摩 耗 深 さ を,図6-bに
は そ の 摩 耗 幅 を示 し た.摩
耗 深 さ で はPMがNM,MT
き い の に 比 べ,摩
常 に 近 似 して い た.ま
た,摩
万 回 後 で1.912±0.206mmと 0.025mm,MT部
の摩 耗 量 は非 常 に近似
の 方 が 若 干 大 き な 摩 耗 量 を 示 し た.
はPdを
と 比 較 し,大
耗 幅 は0.805±0.098
との 摩 耗 量 の 差 が 著 明 で あ っ た.こ
れ に 対 し,NM,MT部 し て お り,Ag部
の摩 耗 深 さは
耗 幅 は2.246±0.301mm,Ag部
耗 幅 で は1万
回 後 か ら非
耗 幅 に お い てPM部 な り,NM部
の1.815±0.077mmと
は20
の1.897± 近 い 値 とな
っ て い た.
用 い た 各試 料 の摩 耗 深 さを,図5-bに
は そ の摩 耗 幅 を示 した.PM部
は摩 耗 深 さ,摩 耗 幅 とも
図7-aにDeを
用 い た 各 試 料 の 摩 耗 深 さ を,図7-bに
は そ の 摩 耗 幅 を 示 した.摩
耗 深 さ,摩
耗 幅 と も に,PM
ハイブ リッ ド型人工歯 の耐摩耗性について
図8-a
99―525
被 摩 耗 試 料 の 摩 耗 形 態(PM-Pd)
図9 20万 回摩耗試験後 の摩耗試 料(棒 状試料) の摩耗 面積
て変 化 した.PMで
は レジ ン部 の摩 耗 が 大 き く,そ の摩
耗 面は 摩 耗試 料 の先 端 部 の 形態 と同 様 にな った が,金 属 部 の摩 耗 は 少 な く,レ ジ ン部 と金 属 部 の幅 に大 きな 隔 た りが あ った.NMとMTは
レジ ン部,金 属 部 とも大 体
同 じよ うに摩 耗 し,摩 耗 形態 が直線 状 とな っ た(図8).
2. 摩 耗 試 料(棒 状 試 料)の 摩耗 に つ い て 図8-b
a) 摩 耗 面積 につ いて
被 摩 耗 試 料 の摩 耗 形 態(NM-Pd)
各 被 摩 耗試 料 と対 した摩 耗 試 料 の20万 積 を図9に 示 した が,Pdと
回後 の摩 耗 面
対 した 時 の摩 耗 面 積 が 他 の
金 属 と対 した時 と比 較 し1.358∼2.506mm2と た.ま た,Ga,Ag,Deに
多 か っ
つ い ては,組 合 せ る レジ ン に
よ り摩 耗 面積 が変 化 した た め摩 耗 試 料 の摩 耗 を最 小 限 に と どめ る金 属 を特 定 す る こ とは で きな か っ た が,摩 耗 試 料 が最 小摩 耗 面積 を示 した の はPMとAgの 対 した 時 で,0.306±0.094mm2と
組合せ と
な った.組 合 せ る レ
ジ ン に よ り摩 耗 面 積 の変 化 が少 な い の はDeで,PMの
図8-c
時0.619±0-131mm2,NMの
時0.534±0.054mm2,
MTの
な り,最 大摩 耗 面 積 を示
時0.484±0.053mm2と
したNMとPdの
被 摩 耗 試 料 の摩 耗 形 態(MT-Pd)
組 合 せ の約20%の
摩 耗 面 積 に留 ま っ
た.レ ジ ンを 中心 にみ て み る と,PMがGa,Ag,Pdと 部 を 除 いて 全 体 的 に少 な くな って い た.ま た,De部 は そ の摩 耗 量 が 非 常 に近似 して お り,1万
で
回 後 の摩 耗 量
の組 合 せ で,他 の レジ ンよ りも摩 耗 面積 が少 な くな って い た が,Deで
はMTの
はす べ て の 試 料 にお い て きわ め て微 量 で あ った た め,計
た.NMは
測 不 能 で あ った.さ
い 値 とな って い た.
ら に,PMと
組 合 せ た 場 合,他 の金
方 が摩 耗 面積 が少 な くな って い
この両 者 の 中間 に位 置 す る もの の,MTに
近
属 の時 は,金 属 部 の摩 耗 量 はそ の組 合 せ の 中 で常 に最 小
b) 摩 耗 形 態 につ い て
値 を示 した の に対 し,Deで
摩 耗 試 料 の摩 耗 形 態 は,被 摩 耗 試料 の金 属 部 に影響 を
は 若 干 摩 耗 量 が 多 か っ た.
b) 摩 耗 形 態 につ い て
受 け た.金 属 部 をGa,Deと
摩 耗 形 態 は 金属 の種 類 で は な く,レ ジ ンの種 類 に よ っ
形 態 が種 々の 様 相 を呈 し,不 規 則 で摩 耗 量 は 少 な か っ
した 場 合,そ の先 端 の摩 耗
補 綴 誌
100―526
た.そ れ に対 し,金 属 部 をAgと た摩 耗 試料 の 先端 は,PMと 摩 耗 し,Pdと
した 被摩 耗 試 料 に対 し
組 合 せ た 時 を 除 き楕 円形 に
対 した場 合 には す べ て 円 形 に摩 耗 して い
た.
34巻3号(1990)
耗 性 を検 討 す る には 複雑 とな りす ぎる.本 実 験 で は,臨 床 にお け る鋳 造修 復 で最 も頻 繁 に使 用 され て い る金 属 で あ る金 銀 パ ラジ ウム合 金 を選 ん だ.ま た,咀 嚼 中 の咬 合 接 触 部位 は,咬 頭,主 隆 線,内 斜 面,辺 縁 隆 線 な ど複 雑 で あ る が,本 実 験 で は摩 耗 を単 純 化 す るた め に実 験 試 料
IV. 考
を平 板 と し,棒 状 試 料 と点 状 に接 触 す る よ う に 設 定 し
察
た.し か し,く り返 し滑 走 運 動 に伴 い,両 者 に摩 耗 が起 1. 摩 耗 試験 機 お よび 実 験 方 法 に つ いて
こる た め,点 接 触 か ら面 接 触 へ と移 行 した が,そ の移 行
従 来 よ り レジ ンの耐 摩 耗 性 を 調 べ る 目的 で 多 くの 実験
の状 況 は材 質 に よ り異 な って い た.耐 摩 耗 性 の悪 い レジ
報 告 が な され て い る が,そ れ らの多 くは 歯 ブ ラシ摩 耗 試
ンや 金 属 で は 接 触 面積 が比 較 的 早 期 に増 大 す るが,こ れ
験 の もの で あ る9∼14).前装 用 材料 と して の レジ ンの耐 摩
に伴 い 単 位 面 積 当 た りの加 重 圧 が低 下 し,摩 耗 は 減 少 す
耗性 を 調 べ る には 歯 ブ ラ シ摩 耗 試 験 は 有 効 な 手 段 で は あ
る と思 わ れ る が,本 実 験 で は認 め られ なか った.こ れ に
るが,咬 合 接 触 に起 因 す る摩 耗 と歯 ブ ラ シ によ る摩 耗 と
対 し,耐 摩 耗 性 の 良 い レジ ンや 金 属 で は,接 触 面積 が小
で は摩 耗 の機 序 が 異 な る た め,人 工 歯 咬合 面 の摩 耗 を調
さい ま ま保 たれ て い た た め,摩 耗 が進 行 し に くか っ た も
べ る場 合 には 適 切 な もの とは い えな い.ま た,ア ク リ リ
の と考 え られ た.
ック レジ ンや ポー セ レ ン,複 合 人 工歯,硬 質 レジ ン歯,
な お,口 腔 内環 境 に よ り近 似 させ る た め,被 摩 耗 試 料
ャ ス タ ブ
は3週 間 水 中 に浸漬 し,吸 水飽 和 させ て実 験 に供 した。
ル ・セ ラ ミ ック ス,金 属 と天 然 歯 との 咬耗 な ど18),材 質
ま た,摩 耗 に よ る金 属 屑 が レジ ン に迷 入 し研 磨 材 と な
陶歯 の摩 耗 や15∼17),コン ポ ジ ッ トレジ ン,キ
単 体 に対 す る垂 直加 重 に よ る耐 摩 耗 性試 験 は行 われ て い
り,摩 耗 が促 進 す る こ と を防 ぐた め,室 温 水 中 にお い て
る が,ハ イ ブ リッ ド型 人 工 歯 の よ うな2種 類 の材 質 が 同 一 滑 走 面 に存在 す る も の につ い て は行 われ て い ない .そ
エ ア ー ポ ンプ(力
α-4000SW/日
本 水 槽 工 業 社 製)を 用
い,水 を循 環 させ摩 耗 試 験 を行 っ た.さ
らに機 械的 除去
こ で今 回 筆 者 らは,近 年 頻 用 され つ つ あ る硬 質 レジ ンや
も行 った が,実 験 試料 の 中 に は金 属 屑 が レジ ン に迷 入 し
従 来 型 の ア ク リ リック レジ ン と金 属 とを組 合 せ たハ イ ブ
て い る も の も あ り,改 良 の必 要 が感 じ られ た.
リ ッ ド型 の実 験 試 料 を製 作 し,そ れ に垂 直加 重 を加 え, 2. 実 験結 果 につ い て
耐 摩 耗 性 を比較,検 討 した. 筆者 らが今 回実 験 に使 用 した摩 耗 試験 機 は,口 腔 内 の
20万 回摩 耗 試 験 後 の被 摩 耗 試料 の深 さ と幅 を図10に
歯 ぎ し り運 動 を単 純 化 した もの で,操 作 が 簡 単 で摩 耗 試
示 し,各 試 料 間 の有 意 差 検 定 の 結 果 を表4に 示 した.硬
料 の種 類 を 自 由 に組 合 せ て摩 耗 試 験 が 行 え る とい う特 徴
質 レジ ンのNM,MTはPMに
が あ る.こ の摩 耗 試験 機 は,20万
摩 耗 性 を示 して い た.PMは
が2,000mと
回後 の摩 耗距 離 の総 和
比 べ,著
し く優 れ た耐
ア ク リル レジ ンそ の もの で
な り,約2∼3年 後 の摩 耗 に相 当す る と考
え られ る19).今 回 は 実験 試 料 と棒 状 試料 の 間 に な に も介 在 させ な か った が,実 際 の 口腔 内 で は食 片 を介 して 咀 嚼 す る時 も摩 耗 は 進 行す る こ とを考 える と,こ の値 よ りも 少 な い年 数 に相 当 す る とい え る.ま た,地 挽20),辻21)ら は人 工 歯 の 咬 耗 を検 討 す るた め,咀 嚼 運 動 を考 慮 し,側 方 運 動 に衝 撃力 を加 えた 実験 を行 って い るが,わ れ われ の実験 で は 人 工歯 の材 質 に よる摩 耗 挙 動 の変 化 を中心 と した 検 索 を 目的 と して い るの で,実 験 試 料 を平板 と し, 垂 直 加 重 の み と した. 一方 ,口 腔 内 では 人 工 歯 に対 合 す る材 質 と して,天 然 歯,金 属,陶 材,レ
ジ ンな ど種 々 の も のが あ り,こ れ ら
す べ て につ いて 検 討 す る こ とが好 ま しい と考 え ら れ る が,こ れ らの材 質 を摩 耗 試料 と した場 合,材 質相 互 の耐 摩 耗性 を も考 慮 しなけ れ ば な らず,実 験 試料 自体 の耐 摩
図10 20万 回摩耗試験後 の被摩耗試料(実 験試 料) の深 さと幅
ハ イブ リッ ド型人工歯の耐摩耗 性について
101―527
表4 各被摩耗試料間のt検 定(20万 回摩耗試験後) a. 摩耗 深 さ
b. 摩 耗 幅
あ り,従 来 問 題 とな って い る耐 摩 耗 性 の悪 さ が 示 さ れ
重合 型 の方 が 光 重合 型 よ りも,耐 摩 耗 性 にお い て優 れ て
た.こ れ に対 し,NM,MTは
い る とい う報 告 が あ る が24),こ れ は光 増 感 剤の 量 や フ ィ
両 者 と も高密 度 架 橋 構 造 を 末 を含 ま
ラー とモ ノマ ー の屈 折 率 の 差 な ど,い くつ か の 問題 を も
ず,有 機 質 複 合 フ ィ ラー を含 ん で い る こ とに よ り,優 れ
つ 光重 合 型 と,熱 反 応 に よ る加 熱 重合 型 の重 合 率 の違 い
た耐 摩 耗 性 を示 した もの と考 え られ る.今 回使 用 した 光
によ る と考 え られ る.し か し,モ ノマ ー の選 択 に よ って
重 合型 硬 質 レジ ンのNMの
は,光 重 合 型 で も重合 率 を 上 げ る こ とが で き る とも報 告
有 してお り,ま た 耐摩 耗 性 に乏 しいPMMA粉
モ ノマ ー は,主 成 分 として モ ノ マー
して お り,こ の こ とは本 実 験 結 果 に も現 れ て い た.こ れ
若 干異 な って い る も
よ り,光 重 合 型 硬 質 レジ ンで もモ ノマ ー を変 え る こ とに
のの,ほ ぼ同 等 の 摩 耗 量 を示 し,同 一金 属 を用 いた 試 料
よ り,加 熱 重 合 型 硬 質 レジ ン と同程 度 の 耐摩 耗性 が得 ら
間 で は有 意 差 は認 め られ なか った.同 一組 成 の光 重 合 型
れ る と示 唆 され た.ま た,光 重 合 型 硬 質 レジ ンで は光 重
硬 質 レジ ン と加 熱 重 合 型 硬 質 レジ ンを 比較 す る と,加 熱
合 後,加 熱 重 合 を行 うと硬 度や 耐 摩 耗 性 が 上 が る とい う
UDMA,加
熱 重 合 型硬 質 レジ ンで あ るMTの
の主 成 分 は2.6E・UDMA22,23)と
102―528
補 綴 誌
34巻3号(1990)
報 告 もあ る が25),硬 質 レジ ンそ の もの の材 質 特 性 を比 較
料 の摩 耗 面 積 は 他 の金 属 との摩 耗 と比 べ る と,約4倍
す る た め本 実験 で は行 わ なか った.
面 積 を示 し,実 験 試 料 にお い て は摩 耗幅 は 大 き くな っ た
次 に,レ ジ ン と組 合 せ る金 属 につ い て で あ る が,一 般
の
が,摩 耗 深 さで は 反対 に小 さな値 とな った.こ の こ とよ
に レジ ン歯 の 強 度や 耐 摩 耗 性 の 増加 を 計 る方 法 と し て
り,Pdを
は,ア マ ル ガ ム合 金,金 銀 パ ラ ジ ウム合 金,コ バ ル トク
には,人 工 歯 の摩 耗 を抑 え る こ とは で き る が,対 合 歯 が
ロム 合 金 な どが用 い られ て い る26∼28).今回,練 成 充 填 材
金 銀 パ ラジ ウム合 金 製 の ク ラ ウ ン で あ った 場 合,ク
の 中か らGaを
ン を摩 耗 させ て しま うこ とが懸 念 され た.Deは
用 い た が,こ れ は 現在,ア
マル ガム 合 金
に含 まれ る水 銀 によ る 汚染 が問 題 と して取 りあ げ られ て
ハ イ ブ リッ ド型 人 工歯 の金 属 部 に用 い た場 合
ラウ
良好な
生 体 安 定性 や耐 蝕 性 を もつ うえ,陶 材 の 焼 付 け が 行 え
お り29),そ れ に代 わ る もの と して 使 われ 始 めて い るか ら
る とい う優 れ た性 質 を も って お り,ク ラ ウ ン ・ブ リッジ
で あ る.練 成 充 填材 のGaは
用,金 属床 義 歯 用 に広 い 応 用 が 期 待 され て い る34).し か
ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 歯 を製
作 す る場 合,他 の金 属 の よ うに多 くの鋳 造 工 程 を経 る方
しな が ら,ブ リネル 硬 さが250∼270と
法 に比 べ,そ の 術式 に お いて も容 易 で あ る こ とが利 点 と
合 金 と同程 度 で あ り,や や 硬 い 合 金 で ある.そ の た め,
して あ げ られ る.今 回,Gaは
硬 さで劣 る棒 状 試 料 の摩 耗 が 心 配 され た が,結 果 と して
組 合 せ る レジ ン が変 わ っ
て も,そ の 摩 耗 量 に大 き な変化 を示 さ な か っ た.し
ニ ッケル ク ロム
か
は 良好 な値 を示 して い た.実 験 試 料 にお い て も摩 耗 深 さ,
し,そ の摩 耗 面 は 粗造 で あ り,臨 床 報 告30)と酷 似 して い
摩 耗 幅 とも に小 さな値 とな り,摩 耗 抑 制 効 果 が最 も優 れ
た.芝
て いた.こ の こ とよ り,金 属 に よ る摩 耗 抑 制 効 果 を期待
ら31)は,人 工歯 咬 合 面 の ア マ ル ガ ム合 金 によ る 咬
合 面 形 成 で は 長期 間 の使 用 に際 し,レ ジ ン とアマ ル ガ ム
す る な らば,あ
合 金 が化 学 的 に結 合 しな いた め ア マ ル ガ ム辺縁 部 に破 折
い こ とが 示唆 され た.練 成 充填 材 の場 合 に問 題 とな った
が生 ず る と報 告 してお り,こ の こ とは 同 じ練 成 充 填材 で
人 工 歯 との接 着 は鋳 造 用 合 金 を用 い た 場 合 も 同 様 で あ
あ るGaに
る.特 に,既 製 の人 工 歯 を用 いて 窩 洞 形 成 を行 いハ イ ブ
もみ られ る と思 われ た.今 回 は く り返 しの滑
る程 度硬 度 の高 い金 属 を使 用 した 方 が 良
走 運 動 で あ った た め,滑 走 面 の レジ ン との移 行 部 に破 折
リッ ド型 人 工歯 を製 作 す る場 合 には,接 着 材 を用 い て合
がみ られ た.ま た,ア マル ガ ム合 金 は歯 質 に対 し,接 着
着 しな けれ ば な らず,長 期 間 の 使 用 に耐 え うる優 れ た接
性 を有 さな い た め脱 落 や 破 折 が生 じ る とい わ れ て い る
着 材 が 有 用 とな る.
が,最 近 これ を防 ぐ 目的 で,ア マ ル ガム 充 填 の 際,ボ
ン
今 回 実験 に使 用 した レジ ン と金 属 の組 合 せ で み て み る
デ ィ ン グ材 を用 い,接 着 効 果 を期 待 す る報 告 もあ る32).
と,実 験 試 料 の金 属 部 にGa,Deを
本 実 験 で は ボ ンデ ィン グ材 は用 い なか った が,Gaの
Agを
落 が生 じて お り,既 製 レジ ン歯 にGaを
脱
填 塞 す る場 合 問
使 用 した時 やPMと
組 合 せ た場 合,棒 状 試 料 の摩 耗 面 積 が 小 さか った.
Gaを 使 用 した時 やPMとAgを
組 合 せ た場 合 に摩 耗 面
題 とな った.こ の こ とか ら,臨 床 に応 用 す る場 合,硬 質
積 が 小 さか っ た のは,実 験 試料 が摩 耗 した た め で あ る
レジ ン歯 とGaが
が,Deの
一 体 化 す るよ うな接 着 材 が 必要 で あ る
と考 え られ た.
場 合 は摩 耗 抑 制 効 果 が 現 れ た た め で あ る と考
え られ た.す べ て の実 験 試 料 の 中 で,加 熱 重 合 型 レジ ン
鋳 造 用 合金 と して,Ag,Pd,Deを
選 ん だが,AgはPd
のMTと
ノ ンプ レシ ャ スメ タル のDeと
を組 合 せ た実
に比 べ 強 度 的 に劣 って い る もの の,臨 床 にお い て使 用 さ
験 試料 が 最 も良 い結 果 を示 し,実 験 試 料 の摩 耗 深 さ,摩
れ て お り,こ の耐 摩 耗 性 を 知 る こ とは重 要 で あ る と考 え
耗 幅 が 小 さい だ けで な く,棒 状 試 料 の摩 耗面 積 も小 さか
られ た た め 実験 に 用 い た.Agは
金 属 で あ りな が ら摩 耗
深 さ,摩 耗幅 とも に,硬 質 レジ ンのNM,MTよ 耗 量 が 多 い の が特 徴 的 で あ り,ま たPMと
り若 干 摩 組 合 せ た時,
った.摩 耗形 態 も若 干MTの
摩 耗 幅 が 広 い もの の,ほ
ぼ 均一 で あ り,こ れ はMTの
耐 摩 耗性 が高 い こ とに加
え,Deの
摩 耗 抑 制 効 果 が 高 く,両 者 の組 合 せ効 果 が現
棒 状 試料 の摩 耗 面 積 が す べ て の試 料 の 中 で最 も小 さか っ
れ た もの と考 え られ た.こ の こ とか ら,顎 位 を保 持,安
た.こ の こ とか ら,Agの
定 させ,対 合 歯 を維 持 す るた め には 耐摩 耗 性 の優 れ た 硬
MTと
耐摩 耗 性 は 硬 質 レジ ンのNM,
同程 度 で あ り,硬 質 レジ ン歯 と組 合 せ た場 合,摩
耗 抑 制効 果 は期 待 で きな い こ とが 判 明 した.Pdは
現 在,
金 合金 の代 用 合 金 として臨 床 で最 も多 く使 用 され て い る が,そ の摩 耗 量 は 予 想以 上 に大 き な値 を 示 し た.こ
れ
質 レジ ン と硬 度 の高 い 金 属 と によ るハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 歯 が 有 効 で あ る と示 唆 され た. ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 歯 を臨 床 で 応 用 す る場 合 ,対 合 歯 の種 類 とい っ た 問題 のみ な らず,審 美 性 や機 能 性 の面 か
は,同 一 金 属 に よ る摩 耗 は,異 な る金 属 との摩 耗 よ り,
らど こま で の範 囲 を金 属 に よ って 回復 す る か,ま た 窩 洞
摩 耗 量 が 大 き くな る との報 告33)と一 致 して い た.棒 状 試
深 さ を どの程 度 にす る か,さ
らには接 着 材 には何 を用 い
ハイ ブ リッ ド型 人工歯 の耐摩耗性 について るべ きか とい った 多 くの 問題 が あ り,こ れ らの点 につ い
103―529
レジ ン の結 合 性 に つ い て, 補 綴 誌, 32: 37∼42,
て,今 後 検 討 が 必 要 で あ る と考 え られ た.
3)
鈴 木 司 郎, 酒 匂充 夫, 芝
4)
横 山政 高:
5)
長 尾 正 憲, 辻
に関 す る研 究, 補 綴 誌, 32: 780∼786,
現 在,筆 者 らは 金 属床 義歯 の 際,ワ ン ピー ス キ ャ ス ト 法 に よ りセ ン ト リッ ク ス トップ部 分 を メ タ ル フ レーム 部
を製 作 し臨床 に供 して い る が,今 後 硬 質 レジ ン歯 に窩 洞
1988.
臼歯 レジ ン歯 の使 用 を考 え る 臨床 例 の咬 耗 の
観 察 か ら, 補 綴臨 床, 19: 163∼171,
と一 体 化 し,硬 質 レジ ンを用 い てハ イ ブ リ ッ ド型 人 工歯
1986.
喜 之, 野 下昭 彦: 人 工 臼歯 咬合 面 の摩 耗 を
考 え る 実 験 的研 究 結 果 か らの対 比, 補 綴 臨 床, 19: 172 ∼178 , 1986.
形 成 を行 い ハ イ ブ リッ ド型 人 工歯 を製 作 して,臨 床 経過 を観 察 し,報 告 して ゆ く所 存 で あ る.
6)
財部 正 治, 羽 賀 通 夫: 咬 耗 か らみ た 歯 冠修 復 材 料 お よび人
7)
中林 宣 男, 熱 田
工 歯 の選 択, 補 綴 臨 床, 19: 179∼184,
V. 結
論
充, 安 田
8)
検 討 す る 目的 で,金 銀 パ ラ ジ ウ ム合 金 製摩 耗 試料 を用 い 9)
比
主成 分 とす る ア ク
10)
りも摩 耗
12)
3. 実験 試 料金 属部 の摩 耗 は組 合 せ る レジ ンに よ って
Agが 大 き な摩 耗 を示 し,そ
組 合 せ た場 合
の摩 耗量 はNM,MTと
4. Pdを
歯 の場 合,そ 5. Deを
13)
レジ ンの硬 度 と摩 耗 につ い て の一 考
増 原英 一, 小 嶋 邦 晴, 平 沢
実 験 試 料 に使 用 した 場 合,実 験 試 料 や 棒 状
忠 ほか: 無機 質 フ ィ ラー を 混
忠: 無 機 質 フ ィ ラー を混 和 した歯 科 用 即 硬性 レジ ン
田代
械 的 性 質 につ い て, 歯 材研 報, 2: 443
安: 歯 科用 レジ ンの 耐摩 耗 性 改 良 に関 す る研 究, 歯
中林 宣 男, 熱 田
1974.
充: 歯冠 用 硬 質 レ ジ ン
14)
鈴 木 司 郎: 有 機 質 複 合 フ ィラ ー を用 い た 歯 冠用 硬 質 レジ ン
15)
佐 竹義 昌, 田 中康 夫: 陶 歯 と レジ ン歯 間 の摩 耗 に っ い て の
16)
木村
17)
野 下昭 彦: 人 工 臼 歯 の咬 耗 に関 す る実 験 的 研 究, 口病 誌,
18)
小 林 國彦, 内 山洋 一: 歯 冠 修 復材 に よ る咬 耗 を想 定 した実
の研 究, 口病 誌, 48: 261∼276,
博,
1981.
1962.
山 口拓 治, 白石 哲 郎 ほか: 複 合 人 工 歯 の摩 耗 に
関 す る研 究, 歯 材 器 誌, 35: 86∼94,
試料 の摩 耗 量 は 少 な く,両 者 の摩 耗 が最 も少 なか った の は,MTと
組 合 せ た 場 合 で あ った.
51: 124∼136,
以 上 の こ とか ら臨床 にお い てハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 歯 を 使 用 す る際,対 合 歯 の 材 質 や 人 工 歯,金 属 の選 択 お よ び 金 属 によ る修 復 範 囲 や窩 洞 深 さ等 に考 慮 を払 う必要 が あ
Soltesz,
U.,
gleichende halten rztl
献
20)
34:
Korber,
K.H.:
beistarr
abgestutzten
242,
Abrasion
und
biostatische
Freiendprothesen,
95:
406•`412,
21)
〓彦: 硬質 レジン人工歯 と床用
Ch. das
et
Dtsch,
1979.
al:
Ver-
Abrasionsverzahna
地挽 英 彦: 人 工 歯 な らび に歯 冠 修 復材 料 の衝 撃 滑 走 摩 耗 に
419,
238•`
1986.
2) 鈴木 司郎, 久根下斉, 芝
Pergande,
第1報
衝 撃 滑 走 式摩 耗 試 験 機 に よ る
ア ク リ リッ ク レジ ンの摩 耗 につ いて,
Formerhaltung ZWR
B.,
Composite-Fullungmaterialien
関 す る基 礎 的 研 究 1)
特 別 号: 139, 1988.
Klaiber, Untersuchungen uber
von Z,
1978.
1984.
験 的 研 究, 32.第80回 19)
る こ とが示 唆 され た.
文
そ の性 質 と使 用
書), 5∼18, 医 歯 薬 出版, 東 京, 1979.
観 察, 歯 材 器 誌, 8: 55∼60,
の摩 耗 が 懸 念 され た.
1953.
1962.
平沢
法(DE泉
実 験 試 料 に用 い た 時,摩 耗試 料 が特 異 的 に
大 きな摩 耗 を示 し,金 銀 パ ラジ ウム 合金 で修 復 した 対 合
登 ほ か: 新 しい硬 質 レジ ンの
耐摩 耗 性 の 検 討, 補 綴 誌, 30:
材 器 誌, 31: 269∼287,
同
程 度 で あ った.
クイ
1986.
鈴 木 義 彦, 糟 谷 唯 男:
に 関す る研 究I機 ∼456, 1963 .
抑制 効 果 に優 れ て い た.し か し,レ ジ ン との 接 着性 は認
質 レジ ンNM,MTと
第2報
360, 11)
め られ ず 問 題 を残 して い た.
131∼151,
和 した メ タ ク リル 樹脂 の耐 摩 耗 性, 歯 材 研 報, 2: 354∼
リ リッ ク レジ ン歯 を使 用 して,ハ イ ブ リッ ド型 人 工 歯 を 製 作 す る のは 好 ま し くな い と考 え られ た.
異 な る もの の,硬
〓 彦, 安 田
臨床 へ の 応 用
察, 歯材 器 誌, 2: 19∼21,
較 し,著 し く摩 耗 量 が多 く,金 属 部 との摩 耗 量 に大 きな
2. Gaは 練 成 充填 材 に もか か わ らず,Agよ
鈴 木 司 郎, 芝
1419∼1425,
の結 論 が 得 られ た.
差 が み られ た.こ の こ とか ら,PMを
冊,
ン テ ッセ ンス 出版, 東 京, 1989.
定 した平 板 試 料 を製 作 し,そ の 組 成 を変 え,耐 摩 耗 性 を
1. 実 験 試 料 レジ ン の摩 耗 はPMがNM,MTと
1986.
登, 鈴 木 司郎: 硬 質 レジ ン の
世界 そ の基 礎 ・臨 床 ・技 工, QDT別
硬 質 レジ ン と金 属 か らな るハ イ ブ リッ ド型 人 工 歯 を想
て摩 耗試 験 を行 った結 果,次
1988.
〓 彦: 硬 質 レジ ン人 工 歯 の破 折
辻
口 病 誌, 40: 404∼
1973. 喜 之: 人 工 臼歯 の咬 耗 に関 す る基 礎 的 研 究, 補 綴 誌,
26: 63∼70,
1982.
104―530
22)
23)
補 綴 誌 34巻3号(1990)
中 林 宣 男, 友 田浩 三: 市 販 各種 硬 質 レジ ン の分 類 と操 作 上 の 諸 性 質, QDT,
11: 31∼40,
鈴 木 司郎, 安 田
登, 藍
い た新 しい硬 質 レ ジ ン 本 歯 科評 論, 504: 24)
稔: 有 機 質 複 合 フ ィ ラー を用 そ の概 要 と臨 床 応 用 に つ い て,
47∼57,
28)
小出 QDT,
12: 65∼83, 1987.
29)
岡部
徹, 塙
1986.
日
題点
1984. 30)
質 レジ ン の歯 科 理 工 学 的 性 質 に つ い て, 歯 材 器 誌, 5: 422 ∼426, 1986 . 25)
松村 英雄, 窪 田敏 之, 増 原 英 一: 光 重 合 型 歯冠 用 硬 質 レジ ンの 特徴 と合 理 的 な 使 用 法, 別 冊the 重 合 型 レジ ンの臨 床 の応 用, 85∼93,
Quintessence,
Shiba, nally J
27)
A.,
Dent,
月 間 の観 察 結 果, 昭 歯 誌, 7: 207∼212,
31)
芝
〓 彦, 大 野 秀 子, 三 浦 頡 剛 ほ か: 義 歯 の 機 能 的 咬 合 面
形 成 法, The 32)
DENTAL,
1: 553∼565,
T.,
amalgam 46:
Yoshida, paths
494•`497,
J. for
al:
complete
Functiodentures,
33)
日本 歯 科評 論, 442:
Bladed 113∼120,
Teeth 1979.
34)
接 着 ア マル ガ ム裏 層 法,
接 着 歯 学, 6: 177∼186,
1988.
會 田範 宗: 摩 擦 の話(岩
波 新 書),
東 京,
1981.
豊 田静 夫, 三宅 茂 樹, 佐 藤 博信: Lingual を使 用 した総 義歯,
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真 坂 信 夫: 接 着 歯 冠 修 復 法 を よ り有 効 に す る た め の 無麻 酔 治 療 と4-META/MMA-TBB系
Hayashi,
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Prosthet
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床 的 観 察6か
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クイ ンテ ッセ ン ス 出
リ ンガ ライ ズ ド ・オ ク ル ー ジ ョ ン を 知 る,
ア メ リカ 合 衆 国 に お け る 現 状, 歯材 器 誌, 6: 367∼
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中林 宣男, 友 田浩 三, 荒 金 光 夫: 光 重 合 型, 加 熱 重 合型 硬
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コバ ル ト ・ク ロム ・チ タ ン合 金 デ ン チ タ ンの
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