原
著
循 環 器 疾 患 に お け る 血 中 カ テ コ ラ ミンの 研 究 名古 屋 大学 医学 部第 二 内科(指 導
伴 STUDIES
ON
PLASMA
佐 竹辰 夫 教授,小 川宏 一 講 師)
昌明
NOREPINEPHRINE
IN
Masaaki
BAN,
CARDIOVASCULAR
DISEASE
MD
The Second Department of InternalMedicine, Nagoya UniversitySchool of Medicine, Nagoya (Director:Prof Tatsuo Satake,MD 概 要循環
and Koichi Ogawa, MD)
器 疾 患 と くに うつ血 性 心 不 全 患 者 な らび に 急性 心 筋 硬 塞 患 者 の 交 感 神 経活 動 の 指 標 と し
て,血 中 ノル エ ピネ フ リン(NEと と うつ 血 性 心 不 全 の 臨 床症 状(と Heart Association(NYHA)機 名 平 均 年 令37±13(SD)才
略 す)を 酵 素 ア イ ソ トー プ法 に よ り定 量 した,そ くに 倦怠 感,心
悸亢 進,呼吸
して,血 中NE値
照 難 を 主 とす る)に よ るNew
能 分 類,急 性 心筋 硬 塞 の経 過 に よる変 動 に つ い て 検討 した.健 にお け る 日本 人 の 血 中NEの 正 常値 は0.20±0.10(SD)ng/mlで
また,健 常 者 の血中NEレ
ベ ル は加 令 と ともに 上 昇 す る こ とを認 め た.さ
位 変 換 に よ り,血 中NEレ ベル の上 昇 を 認 め た.う 類Ⅰ ∼Ⅱ 群 に お いて,0.38±0.04(SE)ng/mlで
ら に,臥
つ血 性 心 不 全 患者28名 の血 中NEは,
Killip分 類A∼B群
の な い症 例 に おい て,発 症 か ら3日 まで の 急性 期 血中NEは0.53士0.05(SE)ng/mlで 10日 ま で の0.28±0.03(SE)ng/m1に
あ つ た.
位 か ら立 位 へ の 体 NYHA機
あ り,健 常 者 に比 べ 有 意 の上 昇 を 示 した.Ⅲ
で は,さ ら に高 値 を 示 した.急 性 心 筋 硬 塞 患 者9名 の血 中NEは,
比 べ 有 意 の上 昇 を 示 した.ま
た,4日
York
常 者45
能分 ∼Ⅳ 群
の重 篤 な 合併 症 あ り, 4日 か ら
か ら10日 ま で の それ は,
age-matchし た50才 以上 の 健 常 者 の 血 中NEレ ベル0.28±0.02(SE)ng/mlに
ま で 回 復 して い た.以
上,高 感 度 で特 異 性 の あ る酵 素 ア イ ソ トー プ法 を 用 い た血 中NEの 定 量 法に よ り,加
令,体
位 変 換,
うつ 血 性 心 不 全 軽 度 例,急 性 心筋 硬 塞 急 性 期 の交 感 神 経 機能 の亢 進 を 認 め た.
緒
言
心 機 能 を維 持 す る機 構 と して,エ ネ ル ギ ー源 と し ての 末梢 組織 と心 血管 系 を支 配 す る神経 系 の両 者 は,重 要 な役 割 を担 つ てい る1).し か も交 感 神 経 活 動 は図1に 示 す ほ とん どのcomponentへ
密接
に 関与 す る こ とに よ り心 活動 の調 節 を して い る. し た が つ て,循 環 器 疾患 に お け る神 経 系 の役 割 と くに交 感 神 経 活 動 の評 価 は,臨 床 にお け る病 態 の 理 解 な らび 治療 方針 決 定 の た め に きわ め て重 要 で あ る.
図1.心
交 感 神 経 活 動 の 生 化 学 的指標 ラ ミ ン を 測 定 す る 意 義 は,カ け るsynthesis,
release,
雑 な 過 程 が あ る に も か か わ らず,
テ コ ラ ミ ン代 謝 に お
reuptake,
catabolismの
か らoverflowし
複
(以 下NEと 〔昭和53年6月23日
活 動 を調 節 す る諸 因 子
と して血 中 カ テ コ
一方
受稿 〕
(46)
synaptic
て 循 環 し て い る ノ ルエ
略 す)を
clefts
ネ フ リン
評 価 す る こ と に な る2).
,血 中 カ テ コ ラ ミン は,き
日内 会 誌
わ め て 微 量 なた
第68巻
第2号
伴昌
め 高 感 度 な 方 法 の 開 発 が 望 ま れ て い だ3)4). 年Henryら は,血 あり5),
明
1975
2.試
に よ り 開 発 さ れ た 酵 素 ア イ ソ トー プ法
中NEに
つ い て 特 異 的,高
1976年Lakeら
標
感 度 な 測定 法 で
に よ り改 良 さ れ,よ
ka
り安 定
対 象 お よ び 方法
表1に て-20℃
精 製,ウ
示 す 操 作 に よ り,
法
ン を アル
シ20頭
MTを
用 い て,基
S-methyl-3HをNEに
精 製 し,分
ち,再
割 し
出 後,
製法
定量 漿 を過 ヨウ素酸 に よ
示 す よ う に 上 清 の カ テコ 酸 抽 出 し,前
Beckman
特 異 的にN-methylationし
acidを
ウ素 酸
加 え て 遠 沈 し,ト
LS-335液
ウ ン タ ー に よ りcountingし
昭 和54年2月10日
(47)
た の
で 溶 出 し, ル エ ン抽
体 シ ンチ レー シ ョ ン カ た.反
応 式 を 図2に
す.
表2.血
ラ ミ 記PN
質 のS-adenosyl-L-methionineの
度 ア ル ミ ナ 吸 着,過ヨ
phosphotungstic PNMT精
し た.
ミ ナ に よ り 吸 着,塩
か ら得 た 副 腎 を
PNMTを
England
冷 却 遠 沈 し,血
り 除 蛋白 後,表2に
に 保 存 し た. 表1.
中NEの
血 液6mlを
の計82名 で あ る.
Phenyjethanojamine-N-methyjtransferase(P 略 す)の
と し てS-ade-
血条 件
4.血
つ 血 性 心 不 全 患 者28名,
方
質
静 臥 位 を と らせ た の ち,正 中静 脈 よ り血 液6m1を ヘ パ リン採 血 し,た だ ちに氷 中 に置 い た .
につ い て検 討 した.
急性 心 筋 硬 塞 患者9名
Fabrik)を,基
食 事,喫 煙 の影 響 のな い午 前9時 より12時 あ る いは 午 後2時 よ り午 後5時 の時 間 帯 で,20分間 安
器 疾 患 と くに うつ盆 性 心不 全
対象は健 常 者45名,う
使 用
3.採
血条 件 につ い て 検 討
患者 な らび に 急 性 心 筋 硬 塞 患 者 の 血 中NEレ ベ ル
1.
と し てL-noradrenaline-D-bitartrate(Flu Chemische
Nuclear)を
健 常 者 の血 中NE正 常 値,採
NMTと
準 液 AG,
の酵 素 ア イ ソ トー プ法 を 用 い て,
を加 え た の ち,循環
薬
nosyl-L-methionine(S-methyl-3H)(New
した 定 量 法 とな つ た6).
本 研 究 は,こ
177
中 ノル エ ピ ネ フ リ ン測定 法
示
178
循 環 器疾 患 にお け る血中 カ テコ ラ ミンの 研 究
図2.酵
素 ア イ ソ トー プ法 反応 式
図4.健
常 者 の 血 中 ノ ル エ ピ ネ フ リン
の 相関.
NE=0.0027×
年 令 0.090,
と年 令
と
r=0.38,