日本 細 菌 学 雑 誌

● 短

45

(2),

1990

報

サ ル モ ネ ラO5抗

山浦

原 特 異 的 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体

昇

松嵜

北里大学

貴子

看護学部

池脇

感染学教室

神奈川県相模原市北里2-1-1 〔 受付:9月8日,1989年

ヒ トお よ び動 物 か ら高 頻 度 に 検 出 され10),食 中 毒 原 因 菌 と して も問 題 となつ て い るS.

typhimuriumの

感染源

信直

〒228 〕

とか ら,S.

typhimuriumの110545株

とcopenhagen株

とを 用 い て 吸 収 試 験 を 試 み た 。 す な わ ち,腹 水 化 した

を疫 学 的 に 追 求 す る手 段 と して 従 来 か ら血 清 型 別,生 物

TMY1の500μlを110545株

型 別3),フ ァ ー ジ型 別1)お よび 薬 剤 感 受 性 試 験5)が 利 用

200mgに

され,近 年 で は プ ラス ミ ドの 性 状 に よ る検 討 も され つ つ

返 して 吸収 した うえ で凝 集 反 応 を行 つ た 。 表2に 示 した

あ る1,9)。S. typhimuriumに

よ うに,TMY1は110545株

抗 原 型)と hagen抗

非 保 有 型(O5-抗

は,O5抗

原 型)が

原 保 有 型(O5+

原 型,い

あ り7),copenhagen抗

とcopenhagen株

加 え,4Cに30分

集 価 は く2以 下 とな り,そ の 凝 集 反 応 性 は 完 全 に 吸 収

原 型 の 多 くが

され た が,copenhagen株

に は吸 収 能 は認 め られ な か つ

5+抗 原 型 とO5-抗

とが示 唆 され た。

原 型 を 血 清 学 的 に 識 別 す る こ とが で

きれ ば 感 染 源 を 疫学 的 に追 求 す る手 段 の一 つ と して 有効 原特 異的 な モ ノク ローナル抗体

O抗 原 は100C,

サ ル モ ネ ラ菌 株 は,感 染 学 教 室 の保 存 株 お よび東 京 都 崎 市 衛 生 研 究 所,東

京都 予 防医学協

2時 間半 の 加 熱 や1N塩

原 はK抗

て 分 離 保存 され た菌 株 の分 与 を受 け て使 用 した。

よび1N塩

rium

110545株

を抗 原 と して,O4群

応 性 を有 す るMoAbのTMY1を 含 ん だ 培 養 上 清 のO抗 検 討 す る と,表1に

種 のO4群

種 は,O4,

O5お

の サ ル モ ネ ラ に反

作 製 した 。TMY1を

原 特 異 性 を ス ライ ド凝 集 反 応 で

示 す よ うに調 べ た範 囲 のサ ル モ ネ ラ

菌 群 に対 して はO4群 た21菌

typhimu-

に 特 異 的 で あ つ た 。 た だ し,用 い

の うち でTMY1に よびO12抗

菌 種 で は さ らにO1お

凝集反応を示す菌

原 を 保 有 して い た が,あ

よびO27抗

る

原 の一方 あ るいは両

20

酸 処 理 に よつ て そ の 被 凝 集

性 は 失 な わ れ る11)。そ こ で,TMY1のO5抗

会,国 立 衛生 試 験 所,農 林 水産 省 家 畜 衛 生 試 験 場 に お い

作 製 法 は 既 報13)に し た が い,S.

酸 で37C,

原 に近 い 性 質 を有 し6),加 熱 処 理

に は耐 性 を示 す もの の1N塩

を確 か め るた め に,110545株

MoAbの

原 特異的 であ るこ

時 間 処 理 して も抗 体 に 対 す る被 凝 集 性 に は 変 化 を 生 じな い が,O5抗

作 製 を検 討 した 。

立 衛 生 研 究 所,川

の凝

わ ゆ るcopen-

た。 こ の結 果 か ら,TMY1はO5抗

(MoAb)の

繰 り

で 吸 収 す る と256倍

家 禽 類 に 由 来 す る8)こ とが 知 られ て い る 。 そ こで,O

で あ る と考 え,O5抗

の生菌

静 置 す る こ と を4回

原特異 性

とcopenhagen株

の熱お

酸 処 理 に 対 す る反 応 性 を調 べ 結 果 を表3に

した。O5抗

原 を 保 有 す る110545株

で は1N塩

に よつ てTMY1に

対 す る反 応 性 が 消 失 した 。 こ の結 果

か ら,TMY1はO5抗

原 特 異 性 を 有 す る こ とが 明 らか

となつ た 。 O5抗

原 特 異 的 なMoAbで

の で,こ のTMY1を

あ るTMY1が

用 い てO5+抗

作 製 で きた

原 型 とO5-抗

原型

を 血 清 学 的 に 識 別 で き るか 否 か を 検 討 して 結 果 を表4に 示 した 。TMY1はO4群 お よ びO27抗

が 保 有 して い るO1,

原 とは 反 応 せ ず,O5抗

O4,

O12

原を保 有 してい

方 を 保 有 して い る7菌 種 の み で あ つ た 。 こ の結 果,O4

る菌 種 との み 反 応 して お り,こ の 結 果 か ら もTMY1の

群 お よび 他 群 の 抗 原 構 造 を 考 え る と,TMY1の

O5抗

がO5あ

るい はO27抗

特 異性

原 に あ る こ とが 示 唆 され た 。 そ こ

で,抗 体 の 抗 原 特 異 性 は 当 該 抗 原 に よつ て 吸 収 され る こ

示

酸処理

原 特 異 性 が 確 か め られ た 。 しか し,本 来O5抗

を 保 有 して い る菌 種 で もTMY1に ま ちで,S.

derbyで は15/15株

原

対 す る反 応 性 は ま ち が 反 応 陰 性,S.

heidel-

567

表1

各 種 サ ル モネ ラ菌種 の モ ノ クロー ナ ル 抗体 TMY 1＊に対 す る凝 集 反 応

表2

S. typhimuriumに よる吸 収 後 の モ ノ ク ロー ナ ル 抗体TMY1＊ の凝 集 反 応性 の変 化

*: TMY1を

表3

＊: TMY1を

S. typhimuriumの 加 熱 あ る いは塩 酸 処 理 後 の モ ノ クロ ーナ ル 抗体TMY1＊ に対す る凝 集反応 性の変化

含 む 培養 上 清

*: TMY1を

表4

O4群

サ ル モ ネ ラ菌 種 の モ ノ ク ロー ナ ル抗 体TMY1＊

*: TMY1を 含 む培 養 上 清 **: 凝 集 反 応 陽性 菌 株数/検 査 菌株 数

568

含む腹水

含 む 腹 水(100倍

希 釈)

に対 す る凝 集 反応

日本 細 菌 学 雑 誌

bergの9/9株

お よびS.

stanleyの6/6株

が反応陽性 であ

つ た。S. arecavaleta, S. azteca, S. chester, S.haifa, saintpaulお よびS.

学 協 会検 査 研 究 部 ・小 野 川 尊 博 士,国 立 衛 生 試 験 所 衛 生

サ ル モ ネ ラ のO4群

schottmuel-

に は現 在128菌

O27抗

第2研 究 室 ・寺 門誠 致 博 士 に 深 謝 致 し ます 。 文

種 が 分 類 され て い 原の他に

原 はNo.5フ

介 在12)す るた め に 同 じ菌 種 で もO5抗

てがO5抗

微 生物 ・三 瀬 勝 利 博 士,農 林 水 産 省 家畜 衛生 試 験 場 細 菌

1)

の 中 で も34菌

有 菌 種 の 中 で もS.

2)

原 保 有 株 か ら な る-。 表4の

結 果,O5抗

原

か となつ た。O5抗

の 菌 種 に 一 律 に 起 こ る現 象

ァー ジの

J.P.,

Barker,

R.M.,

て作 製 したO5抗

and

利 用 して,

Grey,

H.M.,

さ ら にO5抗

原 の有 無 を検 討 で きる 可能 性 を 示 した 。 こ しい 疫 学 マ ー カ ー が導 入 され つ つ あ る現 在

で も,感

染 源 を 探 る 疫 学 調 査 の マ ー カ ー と し て,

TMY1を

利 用 した 血 清 型 別 の 有 効 性 を示 す もの と考 え

にIgG3で

対 す るMoAbの

S.D.,

ner,

and

F.W.,

Clin. 6)

る12種 IgMタ

類 のMoAb13)で イ プが8種

は,IgG3タ

TMY1と

有 用 性 につ い て検

its

8,149-

M. J.

(1971):

Exp.

A

Med.,

I.K.,

M.L.

Comparison

phage

susceptibility

typing

testing isolates

in

of

and

an-

characterizing

from

outbreaks.

J.

19,100-104. F.

(1947):

On

V-antigen. 24,

Hickman-Bren-

(1984):

the

serology

Acta.

of

Path.

the

Microbiol.

591-594.

Kauffmann,

F.

(1966):

In •gThe p.

149,

Bacteriology

of

Copenhagen,

Munks-

勉(1975):輸

入 肉 由 来Salmonella typhi-

関 す る 研 究-生 本 公 衛 誌, 稔,仲

22,

物 型 と フ ァー ジ型 に つ い

29-37.

西 寿 男,坂

崎 利 一(1988):サ

ルモネ ラ

腸 炎 集 団 発 生 事 例 に お け る疫 学 マ ー カ ー と して の プ ラ ス ミ ドプ ロ フ ァ イ ル の 評 価,感

染 症 誌,

62,

164-

170. 10)

斉藤

誠,中

谷 林 太 郎,松

の 感 染 性 腸 炎,東

団 発 生 事 例 の サ ル モ ネ ラ分 離 菌 を用 い て

の 反 応 性 を 調 べ,TMY1の

and

Cohn, IgG3.

typhimurium

Kauffmann,

9) 村 瀬

11)

今 後 は,集

biotyp-

Microbiol.,

and

analysis,

Microbiol.,

て,日

類,

た。

G.A.,

A new

gaard.

類 で あ り,今 回 作 製 したTMY1が

IgA(κ)の 性 状 を 示 した こ とは 大 変 興 味 あ る こ とで あつ

Med.

Wachsmuth, Cohen,

Enterobacteriaceae•h

原 に特 異 性 を 有 す イ プ は4種

Alfredsson,

typhimurium J.

J.W.,

profile

Scand. 7)

サ ブ ク ラス は一 般 的

あ る 場 合 が 多 い4)と され て い る。 わ れ わ れ が

前 回 ま で に 作 製 した サ ル モ ネ ラO抗

(1984):

289-304.

muriumに

さ らに,LPSに

Hyg.,

Wilkins.

(1975):

immunoglobulin:

Holmberg,

8) 川 西

て い る。

&

E.S., D.C.

Salmonella

Hirst,

mouse

Salmonella

の こ とは,新

J.

Bacteriology

Williams

Old,

for

Salmonella

回わ れ われ が 初 あ

TMY1を

Systemic

Anderson,

timicrobial

の サ ル モ ネ ラ菌 種 の うちO5抗

原 特 異 的MoAb

of

significance.

plasmid

な機 序 に よ るか は 現 在 の と ころ は不 明 で あ る。

原 を保 有 す る34の 菌 種 に つ い て,今

typhimurium

Baltimore,

scheme

133, 5)

感 染 性 に 差 が あ る こ と も考 え られ る が,こ れ が どの よ う

以 上 の よ うに,O4群

427,

Duguid,

new

とを示 して い る もの と考 え られ る。 この原 因 と して,サ 原 性 を担 うNo.5フ

and

166. 4)

で は な く,菌 種 に よ り起 こ る頻 度 に大 き な差 異 が あ る こ

ル モ ネ ラ の菌 種 間 でO5抗

M.J.,

Bacteriophagetyping

Salmonella

Manual p.

phylogenic

原 に は 脱 落 変 異 が み られ る と され て

い る が,上 述 の 結 果 はO4群

DeSaxe,

(1977): of

Bergey's

ing

保 有 の有 無 には,菌 種 間 で 著 しい 差 異 の あ る こ とが 明 ら

L.R.,

297-300.

Vol.1 3)

献

Ward,

J.D.H.

78,

種 に この 区 別 が み tennysonの み は す べ

E.S.,

designations

ァー ジが

原 保 有 株 と非 保

Anderson, DeSa,

原 が 存 在 し,菌 種 に よ りそ の 構 成

を異 に して い る。 この うちO5抗

有 株 が 存 在 し,O4群

typhi-

と ど まつ て い た。

る2)。O4群 の菌 種 に は,主 要 抗 原 で あ るO4抗

られ る-O5保

京 都 立 衛 生 研 究 所 微 生 物 部 ・太 田建 爾 先

sandiegoは 調 べ た 菌 株 数 が 少 な い た

は反 応 陽 性 の株 は61.2%に

O1, O5, O12,

1990

生,川 崎市 衛生 研 究 所 ・大 久 保 吉 雄 先 生,東 京 都 予 防 医

株 が 反 応 陽 性 で あ つ た が,S.

muriumで

(2),

S.

め に確 定 的 な 判 断 は 下 せ な か つ た。 一 方,S. leriは90%の

を 戴 い た,東

45

京,菜

坂 崎 利 一(1975):腸

原 義 雄 編(1986):日

内 細 菌 の 抗 原,腸

概 論,第2版26-32頁,東 12) Velaudapillai, pearence

討 した い と考 えて い る。

T.

of somatic

本

根 出 版.

京,近 (1960):

Phage

antigen

内 細 菌(I)

代 出 版. mediated

5. Zschr

ap-

Hyg.,

146,

548-551. 13)

本 論 文 の 要 旨 は 第62回

日本 細 菌 学 会 総 会 で 発 表 し

た。 稿 を 終 え るに あ た り,サ ル モ ネ ラ菌 株 の分 与 に ご便 宜

山浦 伸 孝,秋

昇,端

山 了 子,池

山 武 久(1988):サ

脇 信 直,等

々 力 達 也,大

沢

ル モ ネ ラ菌 体 表 層 抗 原 を

認 識 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体,北

里 医 学,

18,

228-239.

569

Production

and

characterization

specific Noboru

YAMAURA,

Department The tibody,

present TMY1,

for

report specific

MATSUZAKI

of Microbiology, the

a monoclonal

antibody

Salmonella O5-antigen

Takako

described

of

and

School of Nursing,

production

for an O-antigen

and

of Salmonella

Nobunao

IKEWAKI

Kitasato University

characterization bacilli.

The

of a monoclonal

following

results

an-

were

ob-

tamed: The

slide

siveness

agglutination

of TMY1.

group O4. The agglutinating tigen

ability

in group O4.

When

showed

no

specific

for O5-antigen.

Strains two

570

agglutinability of Salmonella

subgroups, O5-antigen

epidemiologic

tool

test

TMY1

for the

against

was

strains

reactive

of TMY1

only

was absorbed

treated

with

in the

presence

group O4 positive serotyping

of Salmonella to strains

1N

were and

HCl,

classified

of Salmonella.

also

completely bacilli

of TMY1.

negative,

serovars

that

indicated

with bacilli

by the suggesting

data

indicates

agglutination the

respon-

in group O4 that

test with

usefulness

in

possessing O5-an-

possessing O5-antigen The

the

possessed O5-antigen

TMY1 TMY1

of TMY1

was into as an