575
Vol.22No.4
Odonto-ameloblastomaの2症
森
喜
郎 ・古 田 正 彦
例 と文 献 的 考 察
・田 川
Odonto-ameloblastoma: with
Yoshio
A
review
report
of
MORI •EMasahiko
Ichiro
俊 郎 ・佐 藤 一 郎 ・田 島 時 博
of two
FURUTA •EToshiro
SATO •ETokihiro
the
literature
cases
TAGAWA
TAJIMA
歯 牙 の形 状 ・数 には 異 常 所 見 は み られ ない. は
じ
め
に
odonto-ameloblastomaは,歯
X線 写真 所 見:左 側 上 顎 側 切 歯 部 か ら第2小 臼 歯 部 の
胚 上 皮 成 分 と間 葉成 分
歯 槽 突 起 部 お よび 顎 骨 部 に 比 較 的境 界 明瞭 な胡 桃 大 の 透
の両 者 の構 成 か らな る歯 原 腫 瘍 で,歯 牙硬 組 織 の 形成 と エ ナ メル 上 皮 腫 類 似 の 歯 原 上 皮 を 伴 った甚 だ 稀 な 腫瘍 で あ る.最 近 私 達 は25才 男性 の 左側 上 顎 部 と26才 男 性 の右 側 下 顎 部 に 発 生 したodonto-ameloblaston璋
の2症
例
を経 験 し,こ の 自験 例 に 併 せ て,渉 猟 し得 た文 献 に つい て若 干 の 考 察 を 加 え た の で 報 告 す る. 症
例
症 例1 患
者:■25才
初
診:昭 和46年12月 ■
男性
主
訴:左 側 上 顎 側 切 歯 部 よ り第2小 臼歯 歯 肉頬 移 行
部の無痛性腫脹。 家 族 歴 ・既 往 歴:特 記 事項 な し. 現 病 歴:初 診 約3ヵ 月前 よ り左 側 上顎 側 切歯 部 よ り第 2小 臼 歯 唇 側 歯 肉部 の 軽 度 の 腫 脹 に 気付 い たが,無 痛 性 のた め 放 置 して い た.約1ヵ
月 前 よ り腫 脹 が漸 次増 大 す
るた め,某 医 を 受 診 し,精 査 の た め 当科 を 紹 介 さ れた. 現
写 真1術
症
前顔 貌 所 見
全 身 所 見:体 格 中 等 度,栄 養 状 態 は 良好 で,可 視 的 に 異 常 所 見 は 認 め られ な い. 顔 貌 所 見:左 側 鼻 下 部 か ら鼻 翼 部 に か け て軽 度 の腫 脹 がみ られ るが,発 赤 ・圧 痛 ・皮 膚 との癒 着 等 は な い.左 側 顎 下 リンパ 節 は 小 指 頭 大 の 腫 脹 を 認 め るが,可 動 性 で あ る(写 真1). D腔 内 所 見:左 側 上 顎 側 切 歯 部 か ら第2小 臼 歯 部唇 頬 移 行 部 に 無 痛 性 腫 脹 が あ り,境 界 は 比 較 的 明 瞭 で 正 常歯 肉色 を 呈 し,弾 性 硬 で 波 動 は 認 め ら れ な い(写 真2). 三 重 大 学 医 学 部 口 腔 外 科 学 教 室(主 Department
of
Medicine,
(Chief:
受 付:昭
Oral
Surgery, Prof
Tokihiro
任:田 School
島 時 博 教 授) of
Mie
University
Tajima)
写 真2術
和51年6月2日
133
前 口腔 内所 見
日本 口 腔 外 科 学 会 雑 誌
576
Aug.1976
写 真3 術 前X線 写 真
写 真4 術 前X線 写 真
写真5 摘出物肉眼的所見
写 真6 摘 出物 肉眼 的所 見 134
Vol.22No.4
Odonto-ameloblastomaの2症
写 真7摘
例 と文 献 的 考 察(森
他4名)
577
出物 の 軟X線 写 真
写 真10病
理組織所見
理組 織 所 見
写 真11病
理組 織 所 見
写 真8病
肉 眼 所 見1腫 瘍 塊 は胡 桃 大 で表 面 は 平 滑,結
合組織 様
の組 織 で被 包 され,暗 紫 色 を呈 し,割 面 で は や や 翼胞 状 を呈 し,そ の 内 壁 は 粗造,厚 み は 不 整 で あ っ た,本 腫 瘍 は 周 縁 骨 壁 とは 剥 離 容 易 で あ り,帯 黄 白色 を 呈 し,一 部 帽 針 頭 大 の 歯 牙 様硬 固物 を 認め た(写 真5,6). 摘 出 物X線 写 真 所 見:腫 瘍 実 質 内に 帽 針 頭 大 の 不透 過 性 の 強 い 部 分 が数 個 存在 してい る(写 真7). 病 理 組 織 学 的所 見:.嚢
胞 内 壁 お よび 内腔 内 に は,エ
ナ メル 芽細 胞 ない しエ ナ メル 器類 似 の上 皮 組 織 が,索 状 あ るい は 胞 巣 状 に 増 殖 し(写 真8,9),ameloblastolna の組 織 豫 を呈 して い る.間 質 組 織 は,粗 ま た は嚢 胞 状 を 呈 し,と くに 強い 増 殖 変 化 を み とめ な い.(写 写 真9病
理組 織 所 見
10).X線
真8,9,
的 に 不 透 過 像 と して 認 め られ た も の は,歯
牙
硬 組 織 よ りな る もの で,不 整 形 歯牙 の形 態 を示 して い る
過 豫が 認め られ る(写 真3,4), 臨 床 検 査 成 績:末 梢 血 ・血 液 生 化 学 検 査 値 ・尿 検 査 は
(写真11).こ の 硬 組 織 は,主 に 象牙 質 よ りな り,一 部 に エ ナ メ ル質 を 認 め るが,こ れ らは 形 態 的 に 形 成 不 全 を示
そ れ ぞ れ 正 常 範 囲 内 で あ る. 臨 床 診 断:歯 牙 腫 の疑 い 。
して い た.な お,エ ナ メ ル質 の添 加 をみ な い 象 牙 質 面 に
処 置 な らび に 経 過:局 所麻 酔 下 に,左 側 上顎 側 切 歯 よ
は,ameloblastomaが
接 してい る(写 真12).以
見 よ りodonto-ameloblastomaと
り第2小 臼 歯 の 抜 歯 と腫 瘤 摘 出 を 行 っ た.摘 出 は比 較 的 容 易 に 一 塊 と して 出 来,周 囲組 織 に異 常所 見 は み られ な
症 例2
か っ た.経 過 は 良好 で,再 発 等 は 認め られ ない.
患
者:■26才
初
診:昭 和48年11月 ■
摘 出 物 所 見: 135
診 断 した.
男性
上 の所
日本 口 腔 外 科 学会 雑 誌
578
写 真12病
Aug.1976
理組織所見
写 真14術
前 口腔 内 所 見
X線 写 真 上,広 範 囲 な 透 過 像 を 指 摘 され た,ま た 試験 穿 刺 に よ り茶 褐 色 の 内 容 液 を 認 め て い る.骨 折 の恐 れ あ り と手 術 を 勧 め られ て い た が,放 置 して い た.最 近 某 総 合 写 真13術 主
病 院 を 受 診 し,当 科 を 紹 介 さ れ た. 前顔貌所見
現
訴:右 側 下 顎 部 の 無 痛 性 腫 脹
家族 歴:弟 が 約5年 前,本 大 学 附 属病 院 整形 外 科 に お
な どの 外 胚 葉 性組 織 に 異 常 は な く,主 訴 以外 身 体 他 部 に 野
い て多 発 性 軟 骨 性 外 骨 腫 と診 断 さ れ て い る. 既 往 歴:5才
症
全 身 所 見:体 格 中 等 度,栄 養状 態 良好 で,皮 膚 ・毛 髪 特 記 す べ き所 見 は な い.
時 に 自転 車 よ り転 落 して右 側 下 顎 部 を 強
顔 貌 所 見:顔 貌は 左 右 非 対 称 で,右 側 下 顎 角 部 か ら骨
打 した 記 憶 が あ る.
体 部 に か け て 小鶏 卵 大 の限 局 性 膨 隆 を 呈 し,弾 性 硬 で圧
現 病 歴:約8年 前 よ り右 側 下顎 部 に小 指 頭 大 で 骨 様 硬 の無 痛 性 膨 隆 に 気 付 い て い た が,放 置 してい た.5年 前,
痛 ・発 赤 ・波 動 等は み られ ず,皮 膚 との 癒 着 も認 め られ
同 部 腫 脹 が,漸 次増 大 す る た め某 病 院 整 形 外 科 を 受 診 し,
が,圧 痛 な く可 動 性 で あ る(写 真13).
136
な か っ た.右 側 顎 下 リン パ節 は 小 指 頭 大 の 腫 脹 を 認 め る.
Vol.22
Odonto-ameloblastomaの2症
No.4
例 と文 献 的 考 察(森
他4名)
579
い る.歯 肉 お よび 口腔 粘 膜 に 異 常所 見 は み られ な い(写 真14). X線 写 真 所 見:病 態 像 は右 側 下顎 犬 歯 部 よ り骨 体 部 ・ 上 行 枝 中 央 部 に 至 る多 房 性 の嚢 胞 様 で,前 方 部 に塊 状 石 灰 化 組 織 を 思 わ せ るX線 不 透 過 像 を 認 め,周 囲組 織 は 一 層 の 透 過 像 で 明 瞭 に 境 界 され てい る.後 方 の部 分 は 嚢 胞 様X線 透 過 像 を 示 し,大 臼 歯 部 よ り下 顎 角 に 対 応 す る下 顎 下 縁 は 嚢 胞 の た め 圧 迫 され,薄 層 の 下 縁 を 残 す 膨 隆 像 を 呈 して い る.右 側 下 顎 第2小 臼 歯 は 歯 冠 部 を 下 顎 下 縁 に 向 け,第2,第
大 臼 歯 の 中 間 部 に 埋 伏 して い る(写 真
15,16). 術 後10カ 月 のX線 写 真 に お い て,右 側 下顎 下 縁 部 に 骨 新 生 壕 が 認 め られ る(写 真17,18). 摘 出物所見 肉 眼 的所 見:嚢 胞 様 組 織 の 内 部 は,凹 凸不 正 で,粘 液 性物 質 を 含 ん で い る.歯 牙 腫 様 硬 組 織 部 は,凹 凸不 正 形, 大 き さ は雀 卵 大,重 さ12.5gr.に で被 わ れ て い る(写 真19).硬
て,周
囲 を一 部 被 膜
組 織 の割 面は 灰 白色,礫
状 で,硬 度 は 歯 牙 様 硬 で あ る(写 真20). 硬 組 織 摘 出物X線 所 見:硬 組 織 内に 軟 組 織 が 介 在 して い る部 分 が 認 め られ る(写 真21). 病 理 組 織 学 的 所 見:第1例 に 増 殖 す るameloblastoma所
と 同様 索 状 あ るい は 胞 巣 状 見 と形 成 不 全を 示 す,象
牙 質 お よび エ ナ メル 質 の 形 成 を み る(写 真22,23,24). 本 例 に お け るameloblastoma部 写真15
は 円柱 状 のエ ナ メ ル 芽
細 胞 と と もに 星 状 細 胞 を 多 数 に 含 む エ ナ メル器 様 構 造 を
術 前X線 写 真
示 す 部 が 多 い(写 真23,24). 口腔 内所見:右 側 下 顎 第1小 臼 歯 部 よ り第3大 臼歯 部
本 例 も第1例
と同 様 線 維 性 結 合織 の 腫瘍 性増 殖 は全 く
にかけて鶏 卵 大 の頬 舌 的 顎 骨膨 隆 を 呈 し,弾 性硬 で,羊
み られ な い.
皮紙音は触 知 しな い.右 側 下顎 側 切歯,犬 歯 は癒 合歯,
な お,嚢 胞 内 よ り摘 出 され た歯 牙 硬 固 物 は,ameloblastoma所 見 と と も に,前 記 の形 成 不 全 を 示 す エ ナ メ
第1大 臼歯 は金 属 冠 が 装着 さ れ,第2小
臼歯 は 欠損 して
写 真16
術 前X線 写 真
137
日本 口腔 外 科 学 会 雑 誌
580
stomaと
Aug.1976
診 断 した. 考
察
1946年Thoma,Goldmanが
報 告 し た 歯 原 腫 瘍 の分
類 に 基 き,1950年American logyは し,混
academy
of oral patho-
歯 原 腫 瘍 を 外 胚 葉 性 ・中 胚 葉 性 ・混 合 性 に鈴頼 合 性 と し て エ ナ メ ル 上 皮 線 維 腫,エ
管 腫 ・ エ ナ メ ル 上 皮 神 経 鞘 腫,エ げ て い る1).以
来 本 腫 瘍 の 名 称 に つ い て は,表1に
如 く,calcifying
fibro-adamantoblastoma2),adaman-
to-odontoma3)4)a
composite
age5),ameloblastic
odontoma
し,近
at a very
年 は ほ と ん どameloblastic
odontomaの
omaとodonto-ameloblastomaの
fibro-odont-
名 称 が 使 用 され てい る.
こ の う ち,odonto-ameloblastomaは
と くに稀 なものと
さ れ て い る.こ
の 範 囲 に 入 る 疾 患 は,本
邦 に お い ては,
1939年
井16)の 報 告 が 最 初 で,以
来 琺 瑯 質 を形 成
宮 崎,荒
せ る 琺 瑯 上 皮 腫 の 一 例17)歯
牙 硬 組 織 を認 め た軟性歯牙
腫18),エ ナ メ ル 上 皮 歯 牙 腫10),ameloblastic ∼28)の名 称 で 報 告 さ れ て い る . 私 達 は,自
ル 質 ・象 牙 質 の ほ か,calcifying nic
tumorな
ど が,混
epithelial
し,考 odontoge-
どに み られ る 求 心 性 の 層 板 状 石灰 化 物 な
在 し て い た(写
以 上 よ り,第1例
真25).
と同 様,形
写 真18
索 は 年 令 ・性 別 ・顎 別 ・
発 生 部 位 別 ・気 付 い て か ら来 院 ま で の 期 間,X線
写 真,
摘 出 物 の 大 き さ,埋
理 組織
術 後X線 写真
伏 歯 の 有 無,被
床 診 断 名,処
Gorlin,Hooker11)服
138
odontoma20)
験 例 に 併 せ て 渉 猟 し得 た文 献 について集計
察 を 試 み た(表1).検
学 的 所 見,臨 能 的 にodnto-amelobla-
診断で
口腔 腫 瘍 分 類 に は,
本 名 称 は 使 用 さ れ て お らず,ameloblastic
写真
early
epithelial tissue element で記 載 され てい る .し か
報 告 さ れ て い た が,1971年WHOの
術 後X線
示す
odontoma6)∼13),odontoameloblast-
oma14),calcification of the in soft mixed odontoma15)ら
写 真17
ナ メ ル 上 皮血
ナ メル上 皮歯 牙腫をあ
膜 の 有 無,病
置 等 に つ い て 行 っ た.表2は,
部 ら の 報 告 と の 比 較 で あ る.年 令
VoL22No,4
Odonto-ameloblastomaの2症
写 真19摘
写真20摘
写 真21摘
例 と 文 献 的 考 察(森
581
他4名)
写 真22病
理組織所見
出 物 肉 眼的 所 見(割 面)
写 真23病
理組織所見
出 物 の 軟X線 写真
写 真24病
理組織所見
出物 肉眼 的 所 見
に つ い て,自 験 例 は25才 と26才 で,各 報 告 者 の11∼13才
ら21)は下 顎両 側 にわ た る巨 大 な症 例 を 報 告 して い るが,
とい う平均 年 令 よ り高 か っ た.性 別は 男 性に や や多 く,
自験 例 第2症 例 も右 側 の第1小 臼 歯 か ら上 行 枝 に お よぶ
自験 例 は2例
広 範 囲 な もの で あ っ た.表3に
とも 男 性 で あ った.ま た 顎 別 で は,Gorlin11)
は 上 顎 に 多 い と報 告 して い るが,私 達 の 渉猟 し得 た 文 献 例 で は 下顎 が 多 く,自 験 例 は上 顎1例,下
顎1例
示 す よ うに,腫 瘍 に気 付
い て か ら来 院 まで の 期 間 は,文 献16例 に お い て2週 間か
であっ
ら10年,平 均1.96年 で,本 腫瘍 の発 育 が 比 較 的 緩慢 で あ
た.発 生 部 位 に つ い て は,上 顎 は 前歯 部,小 臼歯 部,下
る こ とを 示 して い る.な お2週 と あ る症 例 は,感 染 を伴
顎 は 大 臼 歯 部,上 行 枝 部 に 多 発 して お り,Kemperら3)
い 疼 痛 を 主 訴 と して 来 院 して い る.X線
は 上 顎 右 側 犬 歯 か ら上 顎 結 節 に お よぶ症 例 を,ま た新 国
fne11)はameloblastomaの 139
検 査 で は,Sta-
典 型 的 所 見 と して 明 瞭 に境
582
日本 口腔 外 科 学 会 雑 誌
140
Aug.
1976
Vol.22
No.4
Odonto-ameloblastomaの2症
例 と文 献 的 考 察(森
583
他4名)
表5処
置
別
卵 大 であ った,本 腫瘍 と埋 伏 歯 牙 と の関 係 に つ い て は, 文 献 例26例 中22例 に埋 伏 歯 を認 め て お り,自 験 例 も症 例 写 真25病 表2報
理組織所見
2に 埋 伏 歯 を 認 め た が,腫 瘍 との因 果 関 係 は 定 か で な い. また 被膜 は26例 中20例 に 認 め られ,腫 瘍 の 緩 慢 な膨 潤 性
告例の比較
発 育 が 伺 わ れ る,自 験 例 は2例
とも被 膜 を 有 して い た.
摘 出物 の 病 理 組 織 学 的 検 索 を系 統 的 に 検 討 す る と,種 々 の移 行 型 が 認 め られ る.即 ち,エ ナ メ ル上 皮 線 維 腫 に 近 い も ので は 間 質 が 胎 生 期 結 合織 に類 似 し,エ ナ メル 上 皮 が 花 冠 状 ・島 状 ・柵 状 に増 殖 してお り,ま
た エ ナ メル
質,象 牙 質 の 形 成 が わ ず か で あ る.複 合 性 歯 牙 腫 に 近 い も の で は 線 維 性 結 合 織 の 増 殖 が 強 く な り,歯
牙 硬 組 織 の形
成 も エ ナ メ ル 質 ・象 牙 質 ・歯 髄 ・セ メ ン ト質 と,完
表3腫
牙 に 近 い も の が み ら れ る.自
瘍 に 気 付 い て か ら来 院 まで の 期 間
似 の 歯 牙 硬 組 織(形
な い.こ
成歯
はodontoma類
成 不 全 を 示 す エ ナ メ ル 質 ・象 牙 質)
の 形 成 と,ameloblastomaと し て い た.し
験 例2例
考 え ら れ る部 分 とが 混在
か し,線
の た め,き
維 性結 合 織 の腫 瘍 化 は み られ て い わ め て 稀 な 症 例 と 考 え,W.H.O.の
分 類 に 用 い ら れ て い るodonto-ameloblastomaの
診 断
名 を 使 用 し,あ え てameloblasticfibro-odontomaと
区
別 した(表1).処
置 と し て は,表5に
中 摘 出 掻 把23例,摘
示 す よ う に,28例
出 後 電 気 焼 灼 した も の が1例,骨
の た め 顎 間 固 定 し た も の が2例 も 全 摘 出 を 行 っ た.本
あ っ た.自
折
験 例 は2例
と
症 の経 過 は比 較 的 良 性 に 経 過 す る
よ う で あ る が,Frisselら6)は
再 発 の た め に3回
の手術
を 行 っ た 症 例,Thoma,Villa27)もameloblasticodo-
表4大
き
さ
別
ntosarcomaの
症 例 を 報 告 し て い る の で,注
摘 出 と長 期 間 の 術 後 観 察 が 必 要 で あ る.自
意深い完全
つ い て は,術
後4年
と2年
験 例2症
が 経 過 し た が,再
例に
発は認め ら
れ な い.
結
論
私 達 は き わ め て 稀 なodonto-ameloblastomaの2症 例 を 報 告 し,過 ameloblastic に 併 せ て,年 界 さ れ たradiolucent
area内
にradio
が 数 個 存 在 し て い る と 述 べ て い る が,自 見 を 呈 し て い た.摘
opaqueな
出 物 の 大 き さ は,表4に
小 指 頭 大 ・胡 桃 大 ・鶏 卵 大 が 多 く,自
物質
験 例 も 同 様 の所 示 す よ うに
去,こ
の 内 容 を 含 め て用 い ら れ て い た
odontomaそ
の 他 に つ い て 渉 猟 し得 た26例
令 ・性 別 ・発 生 部 位 別 ・腫 瘍 に 気 付 い て か
ら来 院 ま で の 期 間,X線
所 見,摘
の 有 無,被
理 組 織 学 的 所 見,臨
膜 の 有 無,病
出 物 の 大 き さ,埋
置 方 法 に つ い て 若 干 の 考 察 を 行 っ た.
験 例 は 胡 桃 大 と鶏
141
伏歯
床 診 断,処
日 本 口腔 外 科 学 会 雑 誌
584
授 に深 く感 謝 の意 を 表 し ます.
(尚,本 論 文 要 旨は,昭 和47年10月,第17回 昭和49年11月,第19回
日本 口腔
京都 歯 科 集 談 会,
日本 口腔 外 科 学 会総 会 に て そ の概
要 を報 告 した). 文
1976
Am J Dis Child 115: 332 1968. 12) Jacobson, PH., et al: Ameloblastic odontotmas . OS OM OP 26: 829 1968. 13) Friberg, S., et al.: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 28: 109 1969. 14) Silva, C. A. Odontoameloblastoma. OS OMOP 9: 545 1956. 15) Villa, V. G., et al: Calcification of the epithelial tissue element in soft mixed odontoma OS OM OP 9: 1218 1956.
稿 を 終 わ るに 当 り,病 理 組 織 学 的 検 索 に お い て御 教 示 頂 いた 岩 手 医 科 大 学 歯 学 部 口腔 病 理学 講 座,鈴 木 鐘 美 教
外科 学 会総 会,昭 和49年7月,第88回
Aug.
献
1) Pindborg, J. J., Kramer, I. R. H.: Histological typing of odontogenic tumours, jaw cysts, and allied lesions. World Health Organization, Geneva, 1971. 2) Field, H. J., et al.: Calcifying fibro-adamantoblastoma. Am J Orthl Surg 28: 543 1942. 3) Kemper, J. W., et al.: Adamant- odontoma. Am Orth Oral Surg 30: 709 1944. 4) Thoma, K. H., et al.: Adamanto- odontoma. Am J Orth Oral Surg 30: 244 1948. 5) Riddett, S. A.: A composite odontom at a very early age. Brit Dent J 77: 129 1944. 6) Frissel, C. T.,et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 6: 1129 1953. 7) Forsberg, A., et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 14: 726 1961. 8) Catuso, W. A., et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 16: 582 1963. 9) Choukas, N C., et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 17: 10 1964. 10) Olech E et al.: Ameloblastic odontoma OS OM OP 23: 487 1967. 11) Hamner, J. E., et al: Ameloblastic odontoma.
16)
宮 崎 吉 夫,
17)
病 誌13: 1 1939. 斉 藤 隆 吉: 珠 瑯 質 を 形 成 せ る 琺瑯 上 皮 腫 の1例,
他:
18)
小 林 八 州 男,
口 病 誌17:
琺邸 上 皮 腫 ノ組 織 由 来 ニ就 テ, 口
402
1943.
他:
歯 牙 硬 組 織 の 形 成 を 認 め た 軟性
歯 牙 腫 の1例. 19)
口 病 誌26:
1959.
20)
長 尾 喜 景,
21)
歯 科 学 報59: 154 1959. 新 国 俊 彦, 他: 下 顎 に 生 じたAmelobiastic ntomaの
22)
他:
Ameloblastic
一 例.口
石 木 哲 夫,
他:
科 誌11:
23)
他:
270
口 科 誌14:
高 橋 庄 二 郎, 他: 2才 blastic odontomaの1例.口 一,
odontomaの1例,
239
1965.
の 幼 児 に 見 られ たAmelo科 誌16:181 1967.
24)
林
25)
れ る1例. 日 口 外 誌15: 211 1968. 藤 野 博, 他: Ameloblastic odontomaの1例 つ い て. 日 口 外 誌14: 199 1969.
26)
服 部 孝 範,
27)
愛 院 歯 誌8: 48 1970. Gorlon et al: Ameloblastic 14: 87 1961.
他:
odo-
1962.
悪 性 転 化 を 来 た し た 下 顎 エ ナ メル
上 皮 歯 牙 腫 の1例.
142
2122
石 川 梧 郎: 歯 原 腫 瘍 に つ い て, 特 に 病 理 学 的 方面 か ら (そ の2). 口 病 誌27: 307 1960.
Ameloblastic
Ameloblastic
odontemaと
思わ に
odcnotmaの1例. odontoma.
Cancer
Vol.22No.4
Odonto-ameloblastomaの2症
森
喜
郎 ・古 田 正 彦
例 と文 献 的 考 察
・田 川
Odonto-ameloblastoma: with
Yoshio
A
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of
MORI •EMasahiko
Ichiro
俊 郎 ・佐 藤 一 郎 ・田 島 時 博
of two
FURUTA •EToshiro
SATO •ETokihiro
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literature
cases
TAGAWA
TAJIMA
歯 牙 の形 状 ・数 には 異 常 所 見 は み られ ない. は
じ
め
に
odonto-ameloblastomaは,歯
X線 写真 所 見:左 側 上 顎 側 切 歯 部 か ら第2小 臼 歯 部 の
胚 上 皮 成 分 と間 葉成 分
歯 槽 突 起 部 お よび 顎 骨 部 に 比 較 的境 界 明瞭 な胡 桃 大 の 透
の両 者 の構 成 か らな る歯 原 腫 瘍 で,歯 牙硬 組 織 の 形成 と エ ナ メル 上 皮 腫 類 似 の 歯 原 上 皮 を 伴 った甚 だ 稀 な 腫瘍 で あ る.最 近 私 達 は25才 男性 の 左側 上 顎 部 と26才 男 性 の右 側 下 顎 部 に 発 生 したodonto-ameloblaston璋
の2症
例
を経 験 し,こ の 自験 例 に 併 せ て,渉 猟 し得 た文 献 に つい て若 干 の 考 察 を 加 え た の で 報 告 す る. 症
例
症 例1 患
者:■25才
初
診:昭 和46年12月 ■
男性
主
訴:左 側 上 顎 側 切 歯 部 よ り第2小 臼歯 歯 肉頬 移 行
部の無痛性腫脹。 家 族 歴 ・既 往 歴:特 記 事項 な し. 現 病 歴:初 診 約3ヵ 月前 よ り左 側 上顎 側 切歯 部 よ り第 2小 臼 歯 唇 側 歯 肉部 の 軽 度 の 腫 脹 に 気付 い たが,無 痛 性 のた め 放 置 して い た.約1ヵ
月 前 よ り腫 脹 が漸 次増 大 す
るた め,某 医 を 受 診 し,精 査 の た め 当科 を 紹 介 さ れた. 現
写 真1術
症
前顔 貌 所 見
全 身 所 見:体 格 中 等 度,栄 養 状 態 は 良好 で,可 視 的 に 異 常 所 見 は 認 め られ な い. 顔 貌 所 見:左 側 鼻 下 部 か ら鼻 翼 部 に か け て軽 度 の腫 脹 がみ られ るが,発 赤 ・圧 痛 ・皮 膚 との癒 着 等 は な い.左 側 顎 下 リンパ 節 は 小 指 頭 大 の 腫 脹 を 認 め るが,可 動 性 で あ る(写 真1). D腔 内 所 見:左 側 上 顎 側 切 歯 部 か ら第2小 臼 歯 部唇 頬 移 行 部 に 無 痛 性 腫 脹 が あ り,境 界 は 比 較 的 明 瞭 で 正 常歯 肉色 を 呈 し,弾 性 硬 で 波 動 は 認 め ら れ な い(写 真2). 三 重 大 学 医 学 部 口 腔 外 科 学 教 室(主 Department
of
Medicine,
(Chief:
受 付:昭
Oral
Surgery, Prof
Tokihiro
任:田 School
島 時 博 教 授) of
Mie
University
Tajima)
写 真2術
和51年6月2日
133
前 口腔 内所 見
日本 口 腔 外 科 学 会 雑 誌
576
Aug.1976
写 真3 術 前X線 写 真
写 真4 術 前X線 写 真
写真5 摘出物肉眼的所見
写 真6 摘 出物 肉眼 的所 見 134
Vol.22No.4
Odonto-ameloblastomaの2症
写 真7摘
例 と文 献 的 考 察(森
他4名)
577
出物 の 軟X線 写 真
写 真10病
理組織所見
理組 織 所 見
写 真11病
理組 織 所 見
写 真8病
肉 眼 所 見1腫 瘍 塊 は胡 桃 大 で表 面 は 平 滑,結
合組織 様
の組 織 で被 包 され,暗 紫 色 を呈 し,割 面 で は や や 翼胞 状 を呈 し,そ の 内 壁 は 粗造,厚 み は 不 整 で あ っ た,本 腫 瘍 は 周 縁 骨 壁 とは 剥 離 容 易 で あ り,帯 黄 白色 を 呈 し,一 部 帽 針 頭 大 の 歯 牙 様硬 固物 を 認め た(写 真5,6). 摘 出 物X線 写 真 所 見:腫 瘍 実 質 内に 帽 針 頭 大 の 不透 過 性 の 強 い 部 分 が数 個 存在 してい る(写 真7). 病 理 組 織 学 的所 見:.嚢
胞 内 壁 お よび 内腔 内 に は,エ
ナ メル 芽細 胞 ない しエ ナ メル 器類 似 の上 皮 組 織 が,索 状 あ るい は 胞 巣 状 に 増 殖 し(写 真8,9),ameloblastolna の組 織 豫 を呈 して い る.間 質 組 織 は,粗 ま た は嚢 胞 状 を 呈 し,と くに 強い 増 殖 変 化 を み とめ な い.(写 写 真9病
理組 織 所 見
10).X線
真8,9,
的 に 不 透 過 像 と して 認 め られ た も の は,歯
牙
硬 組 織 よ りな る もの で,不 整 形 歯牙 の形 態 を示 して い る
過 豫が 認め られ る(写 真3,4), 臨 床 検 査 成 績:末 梢 血 ・血 液 生 化 学 検 査 値 ・尿 検 査 は
(写真11).こ の 硬 組 織 は,主 に 象牙 質 よ りな り,一 部 に エ ナ メ ル質 を 認 め るが,こ れ らは 形 態 的 に 形 成 不 全 を示
そ れ ぞ れ 正 常 範 囲 内 で あ る. 臨 床 診 断:歯 牙 腫 の疑 い 。
して い た.な お,エ ナ メ ル質 の添 加 をみ な い 象 牙 質 面 に
処 置 な らび に 経 過:局 所麻 酔 下 に,左 側 上顎 側 切 歯 よ
は,ameloblastomaが
接 してい る(写 真12).以
見 よ りodonto-ameloblastomaと
り第2小 臼 歯 の 抜 歯 と腫 瘤 摘 出 を 行 っ た.摘 出 は比 較 的 容 易 に 一 塊 と して 出 来,周 囲組 織 に異 常所 見 は み られ な
症 例2
か っ た.経 過 は 良好 で,再 発 等 は 認め られ ない.
患
者:■26才
初
診:昭 和48年11月 ■
摘 出 物 所 見: 135
診 断 した.
男性
上 の所
日本 口 腔 外 科 学会 雑 誌
578
写 真12病
Aug.1976
理組織所見
写 真14術
前 口腔 内 所 見
X線 写 真 上,広 範 囲 な 透 過 像 を 指 摘 され た,ま た 試験 穿 刺 に よ り茶 褐 色 の 内 容 液 を 認 め て い る.骨 折 の恐 れ あ り と手 術 を 勧 め られ て い た が,放 置 して い た.最 近 某 総 合 写 真13術 主
病 院 を 受 診 し,当 科 を 紹 介 さ れ た. 前顔貌所見
現
訴:右 側 下 顎 部 の 無 痛 性 腫 脹
家族 歴:弟 が 約5年 前,本 大 学 附 属病 院 整形 外 科 に お
な どの 外 胚 葉 性組 織 に 異 常 は な く,主 訴 以外 身 体 他 部 に 野
い て多 発 性 軟 骨 性 外 骨 腫 と診 断 さ れ て い る. 既 往 歴:5才
症
全 身 所 見:体 格 中 等 度,栄 養状 態 良好 で,皮 膚 ・毛 髪 特 記 す べ き所 見 は な い.
時 に 自転 車 よ り転 落 して右 側 下 顎 部 を 強
顔 貌 所 見:顔 貌は 左 右 非 対 称 で,右 側 下 顎 角 部 か ら骨
打 した 記 憶 が あ る.
体 部 に か け て 小鶏 卵 大 の限 局 性 膨 隆 を 呈 し,弾 性 硬 で圧
現 病 歴:約8年 前 よ り右 側 下顎 部 に小 指 頭 大 で 骨 様 硬 の無 痛 性 膨 隆 に 気 付 い て い た が,放 置 してい た.5年 前,
痛 ・発 赤 ・波 動 等は み られ ず,皮 膚 との 癒 着 も認 め られ
同 部 腫 脹 が,漸 次増 大 す る た め某 病 院 整 形 外 科 を 受 診 し,
が,圧 痛 な く可 動 性 で あ る(写 真13).
136
な か っ た.右 側 顎 下 リン パ節 は 小 指 頭 大 の 腫 脹 を 認 め る.
Vol.22
Odonto-ameloblastomaの2症
No.4
例 と文 献 的 考 察(森
他4名)
579
い る.歯 肉 お よび 口腔 粘 膜 に 異 常所 見 は み られ な い(写 真14). X線 写 真 所 見:病 態 像 は右 側 下顎 犬 歯 部 よ り骨 体 部 ・ 上 行 枝 中 央 部 に 至 る多 房 性 の嚢 胞 様 で,前 方 部 に塊 状 石 灰 化 組 織 を 思 わ せ るX線 不 透 過 像 を 認 め,周 囲組 織 は 一 層 の 透 過 像 で 明 瞭 に 境 界 され てい る.後 方 の部 分 は 嚢 胞 様X線 透 過 像 を 示 し,大 臼 歯 部 よ り下 顎 角 に 対 応 す る下 顎 下 縁 は 嚢 胞 の た め 圧 迫 され,薄 層 の 下 縁 を 残 す 膨 隆 像 を 呈 して い る.右 側 下 顎 第2小 臼 歯 は 歯 冠 部 を 下 顎 下 縁 に 向 け,第2,第
大 臼 歯 の 中 間 部 に 埋 伏 して い る(写 真
15,16). 術 後10カ 月 のX線 写 真 に お い て,右 側 下顎 下 縁 部 に 骨 新 生 壕 が 認 め られ る(写 真17,18). 摘 出物所見 肉 眼 的所 見:嚢 胞 様 組 織 の 内 部 は,凹 凸不 正 で,粘 液 性物 質 を 含 ん で い る.歯 牙 腫 様 硬 組 織 部 は,凹 凸不 正 形, 大 き さ は雀 卵 大,重 さ12.5gr.に で被 わ れ て い る(写 真19).硬
て,周
囲 を一 部 被 膜
組 織 の割 面は 灰 白色,礫
状 で,硬 度 は 歯 牙 様 硬 で あ る(写 真20). 硬 組 織 摘 出物X線 所 見:硬 組 織 内に 軟 組 織 が 介 在 して い る部 分 が 認 め られ る(写 真21). 病 理 組 織 学 的 所 見:第1例 に 増 殖 す るameloblastoma所
と 同様 索 状 あ るい は 胞 巣 状 見 と形 成 不 全を 示 す,象
牙 質 お よび エ ナ メル 質 の 形 成 を み る(写 真22,23,24). 本 例 に お け るameloblastoma部 写真15
は 円柱 状 のエ ナ メ ル 芽
細 胞 と と もに 星 状 細 胞 を 多 数 に 含 む エ ナ メル器 様 構 造 を
術 前X線 写 真
示 す 部 が 多 い(写 真23,24). 口腔 内所見:右 側 下 顎 第1小 臼 歯 部 よ り第3大 臼歯 部
本 例 も第1例
と同 様 線 維 性 結 合織 の 腫瘍 性増 殖 は全 く
にかけて鶏 卵 大 の頬 舌 的 顎 骨膨 隆 を 呈 し,弾 性硬 で,羊
み られ な い.
皮紙音は触 知 しな い.右 側 下顎 側 切歯,犬 歯 は癒 合歯,
な お,嚢 胞 内 よ り摘 出 され た歯 牙 硬 固 物 は,ameloblastoma所 見 と と も に,前 記 の形 成 不 全 を 示 す エ ナ メ
第1大 臼歯 は金 属 冠 が 装着 さ れ,第2小
臼歯 は 欠損 して
写 真16
術 前X線 写 真
137
日本 口腔 外 科 学 会 雑 誌
580
stomaと
Aug.1976
診 断 した. 考
察
1946年Thoma,Goldmanが
報 告 し た 歯 原 腫 瘍 の分
類 に 基 き,1950年American logyは し,混
academy
of oral patho-
歯 原 腫 瘍 を 外 胚 葉 性 ・中 胚 葉 性 ・混 合 性 に鈴頼 合 性 と し て エ ナ メ ル 上 皮 線 維 腫,エ
管 腫 ・ エ ナ メ ル 上 皮 神 経 鞘 腫,エ げ て い る1).以
来 本 腫 瘍 の 名 称 に つ い て は,表1に
如 く,calcifying
fibro-adamantoblastoma2),adaman-
to-odontoma3)4)a
composite
age5),ameloblastic
odontoma
し,近
at a very
年 は ほ と ん どameloblastic
odontomaの
omaとodonto-ameloblastomaの
fibro-odont-
名 称 が 使 用 され てい る.
こ の う ち,odonto-ameloblastomaは
と くに稀 なものと
さ れ て い る.こ
の 範 囲 に 入 る 疾 患 は,本
邦 に お い ては,
1939年
井16)の 報 告 が 最 初 で,以
来 琺 瑯 質 を形 成
宮 崎,荒
せ る 琺 瑯 上 皮 腫 の 一 例17)歯
牙 硬 組 織 を認 め た軟性歯牙
腫18),エ ナ メ ル 上 皮 歯 牙 腫10),ameloblastic ∼28)の名 称 で 報 告 さ れ て い る . 私 達 は,自
ル 質 ・象 牙 質 の ほ か,calcifying nic
tumorな
ど が,混
epithelial
し,考 odontoge-
どに み られ る 求 心 性 の 層 板 状 石灰 化 物 な
在 し て い た(写
以 上 よ り,第1例
真25).
と同 様,形
写 真18
索 は 年 令 ・性 別 ・顎 別 ・
発 生 部 位 別 ・気 付 い て か ら来 院 ま で の 期 間,X線
写 真,
摘 出 物 の 大 き さ,埋
理 組織
術 後X線 写真
伏 歯 の 有 無,被
床 診 断 名,処
Gorlin,Hooker11)服
138
odontoma20)
験 例 に 併 せ て 渉 猟 し得 た文 献 について集計
察 を 試 み た(表1).検
学 的 所 見,臨 能 的 にodnto-amelobla-
診断で
口腔 腫 瘍 分 類 に は,
本 名 称 は 使 用 さ れ て お らず,ameloblastic
写真
early
epithelial tissue element で記 載 され てい る .し か
報 告 さ れ て い た が,1971年WHOの
術 後X線
示す
odontoma6)∼13),odontoameloblast-
oma14),calcification of the in soft mixed odontoma15)ら
写 真17
ナ メ ル 上 皮血
ナ メル上 皮歯 牙腫をあ
膜 の 有 無,病
置 等 に つ い て 行 っ た.表2は,
部 ら の 報 告 と の 比 較 で あ る.年 令
VoL22No,4
Odonto-ameloblastomaの2症
写 真19摘
写真20摘
写 真21摘
例 と 文 献 的 考 察(森
581
他4名)
写 真22病
理組織所見
出 物 肉 眼的 所 見(割 面)
写 真23病
理組織所見
出 物 の 軟X線 写真
写 真24病
理組織所見
出物 肉眼 的 所 見
に つ い て,自 験 例 は25才 と26才 で,各 報 告 者 の11∼13才
ら21)は下 顎両 側 にわ た る巨 大 な症 例 を 報 告 して い るが,
とい う平均 年 令 よ り高 か っ た.性 別は 男 性に や や多 く,
自験 例 第2症 例 も右 側 の第1小 臼 歯 か ら上 行 枝 に お よぶ
自験 例 は2例
広 範 囲 な もの で あ っ た.表3に
とも 男 性 で あ った.ま た 顎 別 で は,Gorlin11)
は 上 顎 に 多 い と報 告 して い るが,私 達 の 渉猟 し得 た 文 献 例 で は 下顎 が 多 く,自 験 例 は上 顎1例,下
顎1例
示 す よ うに,腫 瘍 に気 付
い て か ら来 院 まで の 期 間 は,文 献16例 に お い て2週 間か
であっ
ら10年,平 均1.96年 で,本 腫瘍 の発 育 が 比 較 的 緩慢 で あ
た.発 生 部 位 に つ い て は,上 顎 は 前歯 部,小 臼歯 部,下
る こ とを 示 して い る.な お2週 と あ る症 例 は,感 染 を伴
顎 は 大 臼 歯 部,上 行 枝 部 に 多 発 して お り,Kemperら3)
い 疼 痛 を 主 訴 と して 来 院 して い る.X線
は 上 顎 右 側 犬 歯 か ら上 顎 結 節 に お よぶ症 例 を,ま た新 国
fne11)はameloblastomaの 139
検 査 で は,Sta-
典 型 的 所 見 と して 明 瞭 に境
582
日本 口腔 外 科 学 会 雑 誌
140
Aug.
1976
Vol.22
No.4
Odonto-ameloblastomaの2症
例 と文 献 的 考 察(森
583
他4名)
表5処
置
別
卵 大 であ った,本 腫瘍 と埋 伏 歯 牙 と の関 係 に つ い て は, 文 献 例26例 中22例 に埋 伏 歯 を認 め て お り,自 験 例 も症 例 写 真25病 表2報
理組織所見
2に 埋 伏 歯 を 認 め た が,腫 瘍 との因 果 関 係 は 定 か で な い. また 被膜 は26例 中20例 に 認 め られ,腫 瘍 の 緩 慢 な膨 潤 性
告例の比較
発 育 が 伺 わ れ る,自 験 例 は2例
とも被 膜 を 有 して い た.
摘 出物 の 病 理 組 織 学 的 検 索 を系 統 的 に 検 討 す る と,種 々 の移 行 型 が 認 め られ る.即 ち,エ ナ メ ル上 皮 線 維 腫 に 近 い も ので は 間 質 が 胎 生 期 結 合織 に類 似 し,エ ナ メル 上 皮 が 花 冠 状 ・島 状 ・柵 状 に増 殖 してお り,ま
た エ ナ メル
質,象 牙 質 の 形 成 が わ ず か で あ る.複 合 性 歯 牙 腫 に 近 い も の で は 線 維 性 結 合 織 の 増 殖 が 強 く な り,歯
牙 硬 組 織 の形
成 も エ ナ メ ル 質 ・象 牙 質 ・歯 髄 ・セ メ ン ト質 と,完
表3腫
牙 に 近 い も の が み ら れ る.自
瘍 に 気 付 い て か ら来 院 まで の 期 間
似 の 歯 牙 硬 組 織(形
な い.こ
成歯
はodontoma類
成 不 全 を 示 す エ ナ メ ル 質 ・象 牙 質)
の 形 成 と,ameloblastomaと し て い た.し
験 例2例
考 え ら れ る部 分 とが 混在
か し,線
の た め,き
維 性結 合 織 の腫 瘍 化 は み られ て い わ め て 稀 な 症 例 と 考 え,W.H.O.の
分 類 に 用 い ら れ て い るodonto-ameloblastomaの
診 断
名 を 使 用 し,あ え てameloblasticfibro-odontomaと
区
別 した(表1).処
置 と し て は,表5に
中 摘 出 掻 把23例,摘
示 す よ う に,28例
出 後 電 気 焼 灼 した も の が1例,骨
の た め 顎 間 固 定 し た も の が2例 も 全 摘 出 を 行 っ た.本
あ っ た.自
折
験 例 は2例
と
症 の経 過 は比 較 的 良 性 に 経 過 す る
よ う で あ る が,Frisselら6)は
再 発 の た め に3回
の手術
を 行 っ た 症 例,Thoma,Villa27)もameloblasticodo-
表4大
き
さ
別
ntosarcomaの
症 例 を 報 告 し て い る の で,注
摘 出 と長 期 間 の 術 後 観 察 が 必 要 で あ る.自
意深い完全
つ い て は,術
後4年
と2年
験 例2症
が 経 過 し た が,再
例に
発は認め ら
れ な い.
結
論
私 達 は き わ め て 稀 なodonto-ameloblastomaの2症 例 を 報 告 し,過 ameloblastic に 併 せ て,年 界 さ れ たradiolucent
area内
にradio
が 数 個 存 在 し て い る と 述 べ て い る が,自 見 を 呈 し て い た.摘
opaqueな
出 物 の 大 き さ は,表4に
小 指 頭 大 ・胡 桃 大 ・鶏 卵 大 が 多 く,自
物質
験 例 も 同 様 の所 示 す よ うに
去,こ
の 内 容 を 含 め て用 い ら れ て い た
odontomaそ
の 他 に つ い て 渉 猟 し得 た26例
令 ・性 別 ・発 生 部 位 別 ・腫 瘍 に 気 付 い て か
ら来 院 ま で の 期 間,X線
所 見,摘
の 有 無,被
理 組 織 学 的 所 見,臨
膜 の 有 無,病
出 物 の 大 き さ,埋
置 方 法 に つ い て 若 干 の 考 察 を 行 っ た.
験 例 は 胡 桃 大 と鶏
141
伏歯
床 診 断,処
日 本 口腔 外 科 学 会 雑 誌
584
授 に深 く感 謝 の意 を 表 し ます.
(尚,本 論 文 要 旨は,昭 和47年10月,第17回 昭和49年11月,第19回
日本 口腔
京都 歯 科 集 談 会,
日本 口腔 外 科 学 会総 会 に て そ の概
要 を報 告 した). 文
1976
Am J Dis Child 115: 332 1968. 12) Jacobson, PH., et al: Ameloblastic odontotmas . OS OM OP 26: 829 1968. 13) Friberg, S., et al.: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 28: 109 1969. 14) Silva, C. A. Odontoameloblastoma. OS OMOP 9: 545 1956. 15) Villa, V. G., et al: Calcification of the epithelial tissue element in soft mixed odontoma OS OM OP 9: 1218 1956.
稿 を 終 わ るに 当 り,病 理 組 織 学 的 検 索 に お い て御 教 示 頂 いた 岩 手 医 科 大 学 歯 学 部 口腔 病 理学 講 座,鈴 木 鐘 美 教
外科 学 会総 会,昭 和49年7月,第88回
Aug.
献
1) Pindborg, J. J., Kramer, I. R. H.: Histological typing of odontogenic tumours, jaw cysts, and allied lesions. World Health Organization, Geneva, 1971. 2) Field, H. J., et al.: Calcifying fibro-adamantoblastoma. Am J Orthl Surg 28: 543 1942. 3) Kemper, J. W., et al.: Adamant- odontoma. Am Orth Oral Surg 30: 709 1944. 4) Thoma, K. H., et al.: Adamanto- odontoma. Am J Orth Oral Surg 30: 244 1948. 5) Riddett, S. A.: A composite odontom at a very early age. Brit Dent J 77: 129 1944. 6) Frissel, C. T.,et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 6: 1129 1953. 7) Forsberg, A., et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 14: 726 1961. 8) Catuso, W. A., et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 16: 582 1963. 9) Choukas, N C., et al: Ameloblastic odontoma. OS OM OP 17: 10 1964. 10) Olech E et al.: Ameloblastic odontoma OS OM OP 23: 487 1967. 11) Hamner, J. E., et al: Ameloblastic odontoma.
16)
宮 崎 吉 夫,
17)
病 誌13: 1 1939. 斉 藤 隆 吉: 珠 瑯 質 を 形 成 せ る 琺瑯 上 皮 腫 の1例,
他:
18)
小 林 八 州 男,
口 病 誌17:
琺邸 上 皮 腫 ノ組 織 由 来 ニ就 テ, 口
402
1943.
他:
歯 牙 硬 組 織 の 形 成 を 認 め た 軟性
歯 牙 腫 の1例. 19)
口 病 誌26:
1959.
20)
長 尾 喜 景,
21)
歯 科 学 報59: 154 1959. 新 国 俊 彦, 他: 下 顎 に 生 じたAmelobiastic ntomaの
22)
他:
Ameloblastic
一 例.口
石 木 哲 夫,
他:
科 誌11:
23)
他:
270
口 科 誌14:
高 橋 庄 二 郎, 他: 2才 blastic odontomaの1例.口 一,
odontomaの1例,
239
1965.
の 幼 児 に 見 られ たAmelo科 誌16:181 1967.
24)
林
25)
れ る1例. 日 口 外 誌15: 211 1968. 藤 野 博, 他: Ameloblastic odontomaの1例 つ い て. 日 口 外 誌14: 199 1969.
26)
服 部 孝 範,
27)
愛 院 歯 誌8: 48 1970. Gorlon et al: Ameloblastic 14: 87 1961.
他:
odo-
1962.
悪 性 転 化 を 来 た し た 下 顎 エ ナ メル
上 皮 歯 牙 腫 の1例.
142
2122
石 川 梧 郎: 歯 原 腫 瘍 に つ い て, 特 に 病 理 学 的 方面 か ら (そ の2). 口 病 誌27: 307 1960.
Ameloblastic
Ameloblastic
odontemaと
思わ に
odcnotmaの1例. odontoma.
Cancer
