日 内 分 泌 会 誌,(Folia
765
Endocrinol.)68.765∼772.1992
S状 結腸癌 の 甲状 腺転移 の1例 兵 庫 県 立 尼 崎 病 院 内 科1),大 阪 赤 十 字 病 院 内 科2),京 都 大 学 臨 床 検 査 医 学3) 渋
谷
雄
平1),井 奥
田
上 譲
大
輔1),横
田
治3),森
敏
彦2),
徹3)
Metastatic Carcinoma of the Sigmoid Colon to the Thyroid Gland Yuhei SHIBUTANI 1), Daisuke INOUE 1), Toshihiko YOKOTA 2), Jyoji OKUDA3) and Toru MORI3) 1) Department of Internal Medicine, Hyogo Prefectural Amagasaki Hospital 2) Department of Internal Medicine , Osaka Red Cross Hospital 3) Department of Clinical Laboratory and Medicine , Kyoto University School of Medicine
A case of metastatic A 52-year-
thyroid cancer from sigmoid colon cancer
old woman
colon in April 1988. Serum 1990 along with multiple in January anterior function aspiration
carcinoembryonic
metastatic
1991. Two months neck.
remained
within
biopsy
showed was
adenocarcinoma
normal
colon
but anti-thyroglobulin
Key words : Thyroid
range.
tall columnar
metastasis,
noticed
and
in the lung.
a painless
Cytological
and firm lump on the left
findings
cells with
histological
obtained
an acinar
examination
Immunohistochemical
rose from July
They were resected
mass in the left thyroid
carcinoma
cancer.
of the sigmoid
(CEA) levels gradually
appeared
to have a solitary
performed,
from
due to adenocarcinoma
antigen
lesions which
later the subject
She was found
thyroidectomy
positive
had a sigmoidectomy
is presented.
staining
lobe.
Thyroid
by fine-needle pattern.
revealed by
Subtotal metastatic
anti-CEA
was
was negative. Sigmoid colon cancer
緒
言
甲状 腺 の悪 性腫 瘍 はそ の ほ とん ど が原 発性 の 甲状腺 癌 であ り,他 臓 器 原発癌 が甲状腺 へ転 移 し, 臨床 的 に 甲状 腺腫 を触知 す る例 は きわめ て稀 であ る。今 回,S状 れ た症例 を経 験 した ので,若 干 の文 献 的考察 を加 えて報告 す る。
結腸 原発癌 の甲状 腺転 移 と確 診 さ
症 患者:52才,女
例
性
主訴:左 頚 部腫瘤 第68巻
第8号
766
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転移 の1例(渋
家 族 歴:特
記 すべ きこ とな し
既 往 歴:39歳 現 病 歴:昭
子 宮 筋 腫,47歳 和63年4月
に 腹 痛,下
signを 認 め た(Fig.1)。 で は,高
谷,他4名)
急性 肝炎 血 に て 当 院 外 科 を 受 診 し,注 腸 透 視 検 査 でS状
生 検 でgroupV.S状
結 腸 癌 と 診 断 さ れ,切
結 腸 にapple
円 柱 状 腫 瘍 細 胞 が 乳 頭 状 腺 管 構 造 を 示 す 高 分 化 型 腺 癌 で あ っ た(Fig.2)。
年7月 頃 よ りCEAが のS6,S8,お
徐 々 に 上 昇 し,両 側 肺 野 に 転 移 巣 を 認 め た た め(Fig.3),平
よ び 左 肺 のS3の
Fig. 1
Fig.
2
Histologic well-differentiated
core
除術 を受 けた。 病理組 織所 見 そ の 後,平 成3年1月
成2
に右 肺
区 域 切 除 が 施 行 さ れ た 。 病 理 組 織 で は 結 腸 由 来 の 高 分 化 型 腺 癌 と診
Ba enema showing apple core sign in the sigmoid colon (April 1988).
section
of
the
adenocarcinoma
第68巻
tumor
in
the
(Hematoxylin
第8号
sigmoid and
colon eosin;•~200).
showing
日
本
内
分
泌
学
会
雑
767
誌
断 され た 。 さ ら に3月 初 め 頃 よ り左 頚 部 腫 瘤 を 自覚 す る よ う に な り,急 速 に 増 大 傾 向 を 示 し た た め 精 査 目的 に て 内 科 へ 紹 介 され た 。 現 症:身
長166cm,体
重62kg,血
圧120/78mmHg,脈
拍78/分
で 整,結
膜 に黄 疸 ・貧血 な し。 心 肺
に異 常 な く,肝 脾 を触 知 せ ず 。 頚 部 の 触 診 で は 甲 状 腺 左 葉 全 体 に 一 致 して,比 腫 瘤(2.5×4.0cm)を
較 的表 面平 滑 で硬 い
認 め た 。 リ ン パ節 は 触 知 しな か っ た 。
入 院 時 検 査 成 績:一
般 検 血 お よび 生 化 学 検 査 で は 特 に 異 常 値 は み られ な か った 。 腫 瘍 マ ー カ ー で は
α フ ェ トプ ロ テ ィ ソは 正 常 範 囲 な が ら,CEAとCA19-9は ソ は や や 高 値 な が ら,カ
非 常 に高値 であ った。 サ イ ロ グ ロブ リ
ル シ トニ ンの 上 昇 は認 め られ な か っ た 。 甲状 腺 機 能 はeuthyroidで,抗
甲状 腺 抗 体 は 陰 性 で あ っ た(Table.1)。
Fig. 3
Table
1
Chest X-ray showing multiple metastatic lesions in the lung (January 1991). Laboratory
data on admission
第68巻
第8号
768
S状 結腸 癌 の 甲状腺 転 移 の1例(渋
甲 状 腺 シ ソ チ(Fig.4)で で,不 部CTで
は,99m TCO4-で
均 一 な像 を示 し,delayed は,左
scanで
谷,他4名)
左 葉 部 は 抽 出 され な か っ た 。201T1の 左 葉 へ の 集 積 も不 良 はwash
outさ れ た 。67Gaの 集 積 は認 め ら れ な か っ た 。 頚
葉 全 体 を 占 め るlowdensityareaを
認 め た(Fig.5)。
部 に か け て 内 部 エ コ ー が や や 不 均 一 で,hypoechoicな
超 音 波 検 査 で も左 葉 全 体 と 峡
充 実 性 腫 瘤 を 認 め た 。 尚,頚
部 単 純 レ線 や
超 音 波 検 査 で も石 灰 化 は み られ な か っ た 。 同 部 位 の 穿 刺 吸 引 細 胞 診 で は,腺 管 構 造 を 呈 す る高 円 柱 状 の癌 細 胞 が み られ,原
発 性 の甲状腺 癌
よ り も転 移 性 甲 状 腺 癌 を 示 唆 す る所 見 と 考 え られ た(Fig.6)。 臨 床 経 過:甲
状 腺 左 葉,峡
部 お よ び 右 葉 の 一 部 を 含 め た 亜 全 摘 を お こ な っ た 。 頚 部 に腫 大 した リ ン
パ 節 は み られ な か っ た 。 病 理 組 織 所 見 は,高
円 柱 状 腫 瘍 細 胞 が 乳 頭 状 腺 管 構 造 を 示 す 高 分 化 型 腺 癌 で あ っ た(Fig.7)。
疫 組 織 化 学 的 検 査 で は,サ
イ ロ グ ロ ブ リ ン染 色 は 陰 性 で,CEA染
上 よ り原 発 のS状
よ び 肺 と 甲 状 腺 の 病 巣 の 組 織 所 見 は す べ て 同 一 の 高 分 化 型 腺 癌 で あ り,
結 腸,お
色 は 陽 性 で あ っ た(Fig.8)。
免
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転 移 と診 断 した 。 術 後 化 学 療 法 が お こ な わ れ た が,全
Fig.
4 99mTc
Fig.
5
- pertechnetate
身 性 転 移 の た め8カ 月 後 に死 亡 した 。
and
201T1- chloride
CT scan of the thyroid
showing
the left lobe. 第68巻
第8号
scintiscan
of the
low density
area in
thyroid.
以
日
Fig.
Fig.
6
7
Fine-needle
carcinoma
Histologic
section
thyroid
内
aspirate
columnar
the
本
from cells
showing
(Hematoxylin
分
泌
学
the
with
an
第68巻
雑
tumor
in
acinar
metastasis and
会
eosin; •~
第8号
pattern
from 200).
誌
the
769
thyroid
showing
(Papanicolaou; •~
adenocarcinoma
tall 200).
of the
colon
to
770
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転移 の1例(渋
Fig. 8
谷,他4名)
Thyroglobulin (TG) and CEA staining ( x 40) . Positive staining for TG is observed in normal thyroid follicles and positive staining for CEA is observed in focus of adenocarcinoma. 考
悪 性 腫 瘍 の剖 検 例 の 検 討 で は,甲
察
状 腺 へ の 転 移 の 頻 度 は1.9-9.5%と
報 告 され て お り1)2)3),あま
りめ ず ら しい もの で は な い 。 しか し,臨 床 上 問題 と な る 他 臓 器 原 発 癌 の 甲状 腺 へ の 転 移 は 極 め て 少 な く,Wychulisら
の 報 告 ので は,甲
状 腺 の 手 術 症 例20,262例
の 転 移 性 甲 状 腺 腫 瘍58例 の 集 計 に よ れ ば,そ 肺 癌,乳
癌 の 順 と な っ て い る。MayoClinicで
中10例(0.05%)で
あ っ た 。Elliottら5)
の 原 発 巣 は 腎 癌 が33例 と最 も多 く,次 い で 消 化 器 系 癌, は,1946-1982の36年
間 に30例 の 転 移 性 甲 状 腺 腫 瘍
を 経 験 して お り,原 発 巣 は 同様 に 腎 癌,乳 癌,肺 癌 が 多 く,そ の3疾 患 で 全 体 の7割 以 上(23例)を
占め て
い た6)。 大 腸 癌 の 甲状 腺 転 移 の 報 告 例 は 少 な く,ま た そ の 原 発 巣 は い ず れ も 直 腸 癌 で あ り4)5)7)8)9)10),本 第68巻
第8号
日
症 例 の よ うにS状 討11)では,結
本
内
分
泌
学
会
雑
771
誌
結 腸 癌 の 甲 状 腺 転 移 は ほ と ん ど報 告 され て い な い 。 大 腸 癌 の 遠 隔 臓 器 再 発 の 検
腸 癌 は 肝 が 多 く,直 腸 癌 と 比 べ て 肺 に転 移 す る こ と が 少 な い こ と が 指 摘 さ れ て い る 。
解 剖 学 的 特 徴 と して,結 脈 系 に 支 配 され,静
腸 は 単 一 動 脈 系 に 支 配 され,静
脈 は 門 脈 に 向 か うの に対 し,直 腸 は 複 数 動
脈 は 門 脈 と大 静 脈 の 両 方 に流 れ て い る こ と が そ の 理 由 の 一 つ と考 え ら れ る。 転
移 性 甲 状 腺 腫 瘍 で は 同 時 期,あ
る い は そ れ 以 前 よ り肺 転 移 を 高 頻 度 に 認 め る こ と か ら6),肺 へ の 転
移 の 少 な い 結 腸 癌 で は 甲状 腺 転 移 の 可 能 性 は 極 め て 稀 で あ る こ と が推 察 され る。 一 般 に 甲 状 腺 へ の 転 移 が 少 な い理 由 と して は ,古 くか らWillis12)に よ り2つ の 仮 説 が 提 唱 され て い る。 そ の1つ はmechanical
factorと
し て,甲
状 腺 が560ml/100g甲
状 腺 組 織/分 と い う極 め て 豊
富 な 動 脈 血 の 供 給 を受 け て い る臓 器 で あ る こ と で あ る 。 そ の 速 い 血 流 速 度 が 甲 状 腺 に お け る腫 瘍 細 胞 の 定 着 を 妨 げ て い る と考 え られ て い る。 さ ら にchemicalfactorと 酸 素 飽 和 度,お が っ て,甲
して,甲
状 腺組織 にお け る高
よ び 高 ヨ ー ド含 有 量 が 腫 瘍 細 胞 の 発 育 を 妨 げ て い る可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 した
状 腺 に 器 質 的 な 障 害 が あ る場 合,動
脈 血 流 量 の 減 少,低
酸 素,あ
態 に 陥 り,転 移 を 来 た しや す い こ と が 考 え られ る。 実 際,Smithら13)は,転
る い は 低 ヨー ド容 量 状
11例 に 以 前 か らadenomatous,multinodular,あ い た こ と を報 告 して い る。 ま た,直 られ て お り,Willisの
る い はlymphocytic
移 性 甲状 腺 腫 瘍19例 中 goiterの
腸 癌 の 甲状 腺 転 移 の4例 の 集 計7)で も,2例
存 在 が 認 め られ て
に橋 本 病 の合併 が み
仮 説 を支 持 す る所 見 と思 わ れ る 。 しか し,本 症 例 で は 抗 甲状 腺 抗 体 は 陰 性 で,
組 織 で もadenomatous
changeや
慢 性 の 炎 症 像 は み られ な か った 。
転 移 性 甲 状 腺 腫 瘍 の 特 徴 と して は,本 症 例 の ご と く一 見 未 分 化 癌 を 疑 わ せ る様 な硬 い腫 瘍 とそ の 急 速 な 増 大 が 挙 げ ら れ る14)。画 像 診 断 で は,頚 部 単 純 レ線 で 石 灰 化 像 が ほ と ん ど み られ な い こ と も 一 つ の 特 徴 で あ る7)14)15) 。 ま た,本 症 例 の 甲状 腺 シ ソ チ で,99TcO4-が 欠 損 を 示 した 左 葉 部 へ201T1と 67Gaの 有 意 な 集 積 が 認 め られ な か っ た こ と も 甲 状 腺 原 発 の 分 化 癌 や 未 分 化 癌 に 合 致 し難 い 所 見 で あ る。 原 発 性 と転 移 性 の 甲 状 腺 腫 瘍 の 鑑 別 に は 穿 刺 吸 引 細 胞 診 が 有 用 で あ る13)14)。 原 発巣 に よって若 干 異 な る が,本
症 例 の よ うに 乳 頭 状 腺 管 構 造 を 呈 す る高 円 柱 状 の腫 瘍 細 胞 が み られ た 場 合,結
腸由
来 を示 唆 す る所 見 で あ り,穿 刺 吸 引 細 胞 診 の 診 断 的 価 値 は 高 い 。 しか し,甲 状 腺 乳 頭 癌 の 中 に は 大 腸 原 発 の 腺 癌 に 類 似 した 組 織 像 を 示 す 円 柱 細 胞 亜 型"columnar-cell
variant"の
報 告16)もあ り,確
定 診 断 に は 免 疫 組 織 化 学 的 に サ イ ロ グ ロ ブ リ ンの 確 認 が 必 要 と考 え られ る 。 本 症 例 で は サ イ ロ グ ロ ブ リ ン は 陰 性 で,CEAが 予 後 に つ い て は,原
陽性 で あ った。 発 巣 の 悪 性 度 と 甲状 腺 以 外 の 臓 器 へ の 転 移 の 有 無 に よ っ て 異 な る。 腎 細 胞 癌
は 比 較 的 悪 性 度 が 低 く,さ
らに は 肺 を 介 さず にvertebral
venous
systemに
よ っ て 甲状 腺 へ 単 独 転
移 す る こ と も報 告 され て お り15)17),その よ う な症 例 で は外 科 的 切 除 に よ り良 好 な 予 後 が 期 待 で き る。 そ れ に 対 して,肺 癌 や 消 化 器 系 癌 の 甲状 腺 転 移 は す で に他 臓 器 へ の 転 移 を来 た して い る こ と が 多 く, 予 後 は 極 め て 不 良 で あ る。 直 腸 癌 の 報 告 例7)8)では,血
行 性 に 肺 を 介 して 甲状 腺 へ 転 移 し,そ の ほ と
ん ど が 手 術 後 数 ケ 月 以 内 に全 身 性 転 移 の た め 死 亡 して い る。 手 術 適 応 に つ い て は 原 発 巣 の 部 位,他 臓 器 へ の 転 移 の 程 度,全
身 状 態,お
よ び 局 所 圧 迫 症 状(呼
吸 ・嚥 下 困 難 等)の
有 無 を 考 慮 し,慎 重
に対処 す べ き ことと思 われ る 結
語
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転 移 が み られ た 稀 な 症 例 を報 告 し た。 臨 床 的 に は 甲 状 腺 の 悪 性 腫 瘍 は そ の ほ と ん ど が 原 発 性 の 甲 状 腺 癌 で,転
移 性 甲 状 腺 腫 瘍 は極 め て 少 な い。 しか し,本 症 例 の よ うに 臨 床 経 第68巻
第8号
772
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転移 の1例(渋
谷,他4名)
過 は しば しば急 速で 予後不 良の ことが多 いので,そ の存在 も 日常 診察 上留意 すべ きこと と思 われ た。 文
献
1) Abrams H.L. , Spiro R. and Goldstein N. : Metastases in carcinoma. -Analysis
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autopsied cases. Cancer, 1950; 3: 74-85 2) Mortensen J.D. , Woolner L.B. and Bennett W.A. : Secondary malignant tumors of the thyroid gland. Cancer, 1956; 9: 306-309 3) Shimaoka K. , Sokal J.E. and Pickren J.W. : Metastatic neoplasms in the thyroid gland: Pathological and clinical findings. Cancer, 1962; 15: 557-565 4) Wychulis A.R. , Beahrs 0.H.
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to the
thyroid gland. Ann. Surg. , 1964; 160: 169-177 5) Elliott R.H.E.
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carcinoma
masquerading
as primary
thyroid cancer: A repot of authors' 14 cases. Ann. Surg. , 1960; 151: 551-561 6) Ivy H.K. : Cancer metastatic to the thyroid: A diagnostic problem. Mayo Clin. Proc. , 1984; 59: 856-859 7)
石 田 常 博,川
井 忠 和,平
井 利 幸,泉
直 腸 癌 甲状 腺 転 移 の1例.癌 8)
9)
伊 藤 隆 夫,国
井 康 彦,田
雄
勝,福
田
中 千 凱,佐
藤 昭 夫,操
の 臨 床,1983;29:364-368
小林
木
薫,八
10) Sklaroff
代
亨,鈴
章,真
移 性 甲 状 腺 癌 の2例.日
D.M. : Metastatic
radioactive
功:甲
状 腺 腫 に よ り発 見 され た
厚,木
田
恒,梶
間 敏 彦,加
発 の 扱 い(結
鍋 嘉 尚,尾
崎 修 武,伊
藤 國 彦,濱
地 秀 樹:直
名 元 一 ,三
村
腸
孝,
臨 外 会 誌,1988;49:814-819
carcinoma
iodine studies.
11) 小 山 靖 夫:再
林
の 臨 床,1982;28:151-157
癌 の 甲 状 腺 転 移 の1例.癌
石 原 恒 夫:転
均,小
A.M.A.
of rectum
Arch.
to the thyroid
gland:
correlation
with
Surg. , 1954; 68: 117-119
腸 ・直 腸 ・肛 門)臨
床 腫 瘍 学.東
京 ,朝
倉 書 店,1982;543-548
12) Willis R.A. : Metastatic tumors in the thyroid gland. Am . J. Pathol. , 1931; 7: 187-208 13) Smith S.A. , Gharib H. and Goellner J .R. : Fine-needle aspiration: Usefulness for diagnosis and management of metastatic carcinoma to the thyroid gland. Arch . Intern. Med., 1987; 147: 311-312 14) 宮 内
昭,古
武 彌 宏,前
田 昌純,小
林 哲 郎,高
井 新 一 郎,小
刺 吸 引 細 胞 診 で 診 断 さ れ た転 移 性 甲 状 腺 癌 に つ い て.第17回
林
彰,松
塚 文 夫 ,隈
寛 二:穿
甲 状 腺 外 科 検 討 会 抄 録 集,1984;
77 15) 清 水 一 雄,伊
藤 國 彦,三
村
腺 転 移 を きた したGrawitz腫
16) Evans
aggressive
variant 科
of thyroid 彰,松
川 義 彦,浜
瘍 の2症 例.日
H.L . : Columnar-cell
17) 永 野 道 夫,保 1例.西
孝,西
carcinoma. 野
昇,百
渓 尚子,細
田泰 弘 ,薬 丸 一 洋:甲
状
臨 外 会 誌,1978;39:373-377
carcinoma
本 純 一,中
田
of the
thyroid . A report
Am. J. Clin. Pathol., 洋,矢
花
日泌 尿,1990;52:1035-1037
第68巻
第8号
正:甲
of two
cases
of an
1986; 85: 77-80
状 腺 単 独 転 移 を き た した 腎 細 胞 癌 の (受 付
日:'92.4.17)
(採 択
日:'92)5.11)
765
Endocrinol.)68.765∼772.1992
S状 結腸癌 の 甲状 腺転移 の1例 兵 庫 県 立 尼 崎 病 院 内 科1),大 阪 赤 十 字 病 院 内 科2),京 都 大 学 臨 床 検 査 医 学3) 渋
谷
雄
平1),井 奥
田
上 譲
大
輔1),横
田
治3),森
敏
彦2),
徹3)
Metastatic Carcinoma of the Sigmoid Colon to the Thyroid Gland Yuhei SHIBUTANI 1), Daisuke INOUE 1), Toshihiko YOKOTA 2), Jyoji OKUDA3) and Toru MORI3) 1) Department of Internal Medicine, Hyogo Prefectural Amagasaki Hospital 2) Department of Internal Medicine , Osaka Red Cross Hospital 3) Department of Clinical Laboratory and Medicine , Kyoto University School of Medicine
A case of metastatic A 52-year-
thyroid cancer from sigmoid colon cancer
old woman
colon in April 1988. Serum 1990 along with multiple in January anterior function aspiration
carcinoembryonic
metastatic
1991. Two months neck.
remained
within
biopsy
showed was
adenocarcinoma
normal
colon
but anti-thyroglobulin
Key words : Thyroid
range.
tall columnar
metastasis,
noticed
and
in the lung.
a painless
Cytological
and firm lump on the left
findings
cells with
histological
obtained
an acinar
examination
Immunohistochemical
rose from July
They were resected
mass in the left thyroid
carcinoma
cancer.
of the sigmoid
(CEA) levels gradually
appeared
to have a solitary
performed,
from
due to adenocarcinoma
antigen
lesions which
later the subject
She was found
thyroidectomy
positive
had a sigmoidectomy
is presented.
staining
lobe.
Thyroid
by fine-needle pattern.
revealed by
Subtotal metastatic
anti-CEA
was
was negative. Sigmoid colon cancer
緒
言
甲状 腺 の悪 性腫 瘍 はそ の ほ とん ど が原 発性 の 甲状腺 癌 であ り,他 臓 器 原発癌 が甲状腺 へ転 移 し, 臨床 的 に 甲状 腺腫 を触知 す る例 は きわめ て稀 であ る。今 回,S状 れ た症例 を経 験 した ので,若 干 の文 献 的考察 を加 えて報告 す る。
結腸 原発癌 の甲状 腺転 移 と確 診 さ
症 患者:52才,女
例
性
主訴:左 頚 部腫瘤 第68巻
第8号
766
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転移 の1例(渋
家 族 歴:特
記 すべ きこ とな し
既 往 歴:39歳 現 病 歴:昭
子 宮 筋 腫,47歳 和63年4月
に 腹 痛,下
signを 認 め た(Fig.1)。 で は,高
谷,他4名)
急性 肝炎 血 に て 当 院 外 科 を 受 診 し,注 腸 透 視 検 査 でS状
生 検 でgroupV.S状
結 腸 癌 と 診 断 さ れ,切
結 腸 にapple
円 柱 状 腫 瘍 細 胞 が 乳 頭 状 腺 管 構 造 を 示 す 高 分 化 型 腺 癌 で あ っ た(Fig.2)。
年7月 頃 よ りCEAが のS6,S8,お
徐 々 に 上 昇 し,両 側 肺 野 に 転 移 巣 を 認 め た た め(Fig.3),平
よ び 左 肺 のS3の
Fig. 1
Fig.
2
Histologic well-differentiated
core
除術 を受 けた。 病理組 織所 見 そ の 後,平 成3年1月
成2
に右 肺
区 域 切 除 が 施 行 さ れ た 。 病 理 組 織 で は 結 腸 由 来 の 高 分 化 型 腺 癌 と診
Ba enema showing apple core sign in the sigmoid colon (April 1988).
section
of
the
adenocarcinoma
第68巻
tumor
in
the
(Hematoxylin
第8号
sigmoid and
colon eosin;•~200).
showing
日
本
内
分
泌
学
会
雑
767
誌
断 され た 。 さ ら に3月 初 め 頃 よ り左 頚 部 腫 瘤 を 自覚 す る よ う に な り,急 速 に 増 大 傾 向 を 示 し た た め 精 査 目的 に て 内 科 へ 紹 介 され た 。 現 症:身
長166cm,体
重62kg,血
圧120/78mmHg,脈
拍78/分
で 整,結
膜 に黄 疸 ・貧血 な し。 心 肺
に異 常 な く,肝 脾 を触 知 せ ず 。 頚 部 の 触 診 で は 甲 状 腺 左 葉 全 体 に 一 致 して,比 腫 瘤(2.5×4.0cm)を
較 的表 面平 滑 で硬 い
認 め た 。 リ ン パ節 は 触 知 しな か っ た 。
入 院 時 検 査 成 績:一
般 検 血 お よび 生 化 学 検 査 で は 特 に 異 常 値 は み られ な か った 。 腫 瘍 マ ー カ ー で は
α フ ェ トプ ロ テ ィ ソは 正 常 範 囲 な が ら,CEAとCA19-9は ソ は や や 高 値 な が ら,カ
非 常 に高値 であ った。 サ イ ロ グ ロブ リ
ル シ トニ ンの 上 昇 は認 め られ な か っ た 。 甲状 腺 機 能 はeuthyroidで,抗
甲状 腺 抗 体 は 陰 性 で あ っ た(Table.1)。
Fig. 3
Table
1
Chest X-ray showing multiple metastatic lesions in the lung (January 1991). Laboratory
data on admission
第68巻
第8号
768
S状 結腸 癌 の 甲状腺 転 移 の1例(渋
甲 状 腺 シ ソ チ(Fig.4)で で,不 部CTで
は,99m TCO4-で
均 一 な像 を示 し,delayed は,左
scanで
谷,他4名)
左 葉 部 は 抽 出 され な か っ た 。201T1の 左 葉 へ の 集 積 も不 良 はwash
outさ れ た 。67Gaの 集 積 は認 め ら れ な か っ た 。 頚
葉 全 体 を 占 め るlowdensityareaを
認 め た(Fig.5)。
部 に か け て 内 部 エ コ ー が や や 不 均 一 で,hypoechoicな
超 音 波 検 査 で も左 葉 全 体 と 峡
充 実 性 腫 瘤 を 認 め た 。 尚,頚
部 単 純 レ線 や
超 音 波 検 査 で も石 灰 化 は み られ な か っ た 。 同 部 位 の 穿 刺 吸 引 細 胞 診 で は,腺 管 構 造 を 呈 す る高 円 柱 状 の癌 細 胞 が み られ,原
発 性 の甲状腺 癌
よ り も転 移 性 甲 状 腺 癌 を 示 唆 す る所 見 と 考 え られ た(Fig.6)。 臨 床 経 過:甲
状 腺 左 葉,峡
部 お よ び 右 葉 の 一 部 を 含 め た 亜 全 摘 を お こ な っ た 。 頚 部 に腫 大 した リ ン
パ 節 は み られ な か っ た 。 病 理 組 織 所 見 は,高
円 柱 状 腫 瘍 細 胞 が 乳 頭 状 腺 管 構 造 を 示 す 高 分 化 型 腺 癌 で あ っ た(Fig.7)。
疫 組 織 化 学 的 検 査 で は,サ
イ ロ グ ロ ブ リ ン染 色 は 陰 性 で,CEA染
上 よ り原 発 のS状
よ び 肺 と 甲 状 腺 の 病 巣 の 組 織 所 見 は す べ て 同 一 の 高 分 化 型 腺 癌 で あ り,
結 腸,お
色 は 陽 性 で あ っ た(Fig.8)。
免
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転 移 と診 断 した 。 術 後 化 学 療 法 が お こ な わ れ た が,全
Fig.
4 99mTc
Fig.
5
- pertechnetate
身 性 転 移 の た め8カ 月 後 に死 亡 した 。
and
201T1- chloride
CT scan of the thyroid
showing
the left lobe. 第68巻
第8号
scintiscan
of the
low density
area in
thyroid.
以
日
Fig.
Fig.
6
7
Fine-needle
carcinoma
Histologic
section
thyroid
内
aspirate
columnar
the
本
from cells
showing
(Hematoxylin
分
泌
学
the
with
an
第68巻
雑
tumor
in
acinar
metastasis and
会
eosin; •~
第8号
pattern
from 200).
誌
the
769
thyroid
showing
(Papanicolaou; •~
adenocarcinoma
tall 200).
of the
colon
to
770
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転移 の1例(渋
Fig. 8
谷,他4名)
Thyroglobulin (TG) and CEA staining ( x 40) . Positive staining for TG is observed in normal thyroid follicles and positive staining for CEA is observed in focus of adenocarcinoma. 考
悪 性 腫 瘍 の剖 検 例 の 検 討 で は,甲
察
状 腺 へ の 転 移 の 頻 度 は1.9-9.5%と
報 告 され て お り1)2)3),あま
りめ ず ら しい もの で は な い 。 しか し,臨 床 上 問題 と な る 他 臓 器 原 発 癌 の 甲状 腺 へ の 転 移 は 極 め て 少 な く,Wychulisら
の 報 告 ので は,甲
状 腺 の 手 術 症 例20,262例
の 転 移 性 甲 状 腺 腫 瘍58例 の 集 計 に よ れ ば,そ 肺 癌,乳
癌 の 順 と な っ て い る。MayoClinicで
中10例(0.05%)で
あ っ た 。Elliottら5)
の 原 発 巣 は 腎 癌 が33例 と最 も多 く,次 い で 消 化 器 系 癌, は,1946-1982の36年
間 に30例 の 転 移 性 甲 状 腺 腫 瘍
を 経 験 して お り,原 発 巣 は 同様 に 腎 癌,乳 癌,肺 癌 が 多 く,そ の3疾 患 で 全 体 の7割 以 上(23例)を
占め て
い た6)。 大 腸 癌 の 甲状 腺 転 移 の 報 告 例 は 少 な く,ま た そ の 原 発 巣 は い ず れ も 直 腸 癌 で あ り4)5)7)8)9)10),本 第68巻
第8号
日
症 例 の よ うにS状 討11)では,結
本
内
分
泌
学
会
雑
771
誌
結 腸 癌 の 甲 状 腺 転 移 は ほ と ん ど報 告 され て い な い 。 大 腸 癌 の 遠 隔 臓 器 再 発 の 検
腸 癌 は 肝 が 多 く,直 腸 癌 と 比 べ て 肺 に転 移 す る こ と が 少 な い こ と が 指 摘 さ れ て い る 。
解 剖 学 的 特 徴 と して,結 脈 系 に 支 配 され,静
腸 は 単 一 動 脈 系 に 支 配 され,静
脈 は 門 脈 に 向 か うの に対 し,直 腸 は 複 数 動
脈 は 門 脈 と大 静 脈 の 両 方 に流 れ て い る こ と が そ の 理 由 の 一 つ と考 え ら れ る。 転
移 性 甲 状 腺 腫 瘍 で は 同 時 期,あ
る い は そ れ 以 前 よ り肺 転 移 を 高 頻 度 に 認 め る こ と か ら6),肺 へ の 転
移 の 少 な い 結 腸 癌 で は 甲状 腺 転 移 の 可 能 性 は 極 め て 稀 で あ る こ と が推 察 され る。 一 般 に 甲 状 腺 へ の 転 移 が 少 な い理 由 と して は ,古 くか らWillis12)に よ り2つ の 仮 説 が 提 唱 され て い る。 そ の1つ はmechanical
factorと
し て,甲
状 腺 が560ml/100g甲
状 腺 組 織/分 と い う極 め て 豊
富 な 動 脈 血 の 供 給 を受 け て い る臓 器 で あ る こ と で あ る 。 そ の 速 い 血 流 速 度 が 甲 状 腺 に お け る腫 瘍 細 胞 の 定 着 を 妨 げ て い る と考 え られ て い る。 さ ら にchemicalfactorと 酸 素 飽 和 度,お が っ て,甲
して,甲
状 腺組織 にお け る高
よ び 高 ヨ ー ド含 有 量 が 腫 瘍 細 胞 の 発 育 を 妨 げ て い る可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 した
状 腺 に 器 質 的 な 障 害 が あ る場 合,動
脈 血 流 量 の 減 少,低
酸 素,あ
態 に 陥 り,転 移 を 来 た しや す い こ と が 考 え られ る。 実 際,Smithら13)は,転
る い は 低 ヨー ド容 量 状
11例 に 以 前 か らadenomatous,multinodular,あ い た こ と を報 告 して い る。 ま た,直 られ て お り,Willisの
る い はlymphocytic
移 性 甲状 腺 腫 瘍19例 中 goiterの
腸 癌 の 甲状 腺 転 移 の4例 の 集 計7)で も,2例
存 在 が 認 め られ て
に橋 本 病 の合併 が み
仮 説 を支 持 す る所 見 と思 わ れ る 。 しか し,本 症 例 で は 抗 甲状 腺 抗 体 は 陰 性 で,
組 織 で もadenomatous
changeや
慢 性 の 炎 症 像 は み られ な か った 。
転 移 性 甲 状 腺 腫 瘍 の 特 徴 と して は,本 症 例 の ご と く一 見 未 分 化 癌 を 疑 わ せ る様 な硬 い腫 瘍 とそ の 急 速 な 増 大 が 挙 げ ら れ る14)。画 像 診 断 で は,頚 部 単 純 レ線 で 石 灰 化 像 が ほ と ん ど み られ な い こ と も 一 つ の 特 徴 で あ る7)14)15) 。 ま た,本 症 例 の 甲状 腺 シ ソ チ で,99TcO4-が 欠 損 を 示 した 左 葉 部 へ201T1と 67Gaの 有 意 な 集 積 が 認 め られ な か っ た こ と も 甲 状 腺 原 発 の 分 化 癌 や 未 分 化 癌 に 合 致 し難 い 所 見 で あ る。 原 発 性 と転 移 性 の 甲 状 腺 腫 瘍 の 鑑 別 に は 穿 刺 吸 引 細 胞 診 が 有 用 で あ る13)14)。 原 発巣 に よって若 干 異 な る が,本
症 例 の よ うに 乳 頭 状 腺 管 構 造 を 呈 す る高 円 柱 状 の腫 瘍 細 胞 が み られ た 場 合,結
腸由
来 を示 唆 す る所 見 で あ り,穿 刺 吸 引 細 胞 診 の 診 断 的 価 値 は 高 い 。 しか し,甲 状 腺 乳 頭 癌 の 中 に は 大 腸 原 発 の 腺 癌 に 類 似 した 組 織 像 を 示 す 円 柱 細 胞 亜 型"columnar-cell
variant"の
報 告16)もあ り,確
定 診 断 に は 免 疫 組 織 化 学 的 に サ イ ロ グ ロ ブ リ ンの 確 認 が 必 要 と考 え られ る 。 本 症 例 で は サ イ ロ グ ロ ブ リ ン は 陰 性 で,CEAが 予 後 に つ い て は,原
陽性 で あ った。 発 巣 の 悪 性 度 と 甲状 腺 以 外 の 臓 器 へ の 転 移 の 有 無 に よ っ て 異 な る。 腎 細 胞 癌
は 比 較 的 悪 性 度 が 低 く,さ
らに は 肺 を 介 さず にvertebral
venous
systemに
よ っ て 甲状 腺 へ 単 独 転
移 す る こ と も報 告 され て お り15)17),その よ う な症 例 で は外 科 的 切 除 に よ り良 好 な 予 後 が 期 待 で き る。 そ れ に 対 して,肺 癌 や 消 化 器 系 癌 の 甲状 腺 転 移 は す で に他 臓 器 へ の 転 移 を来 た して い る こ と が 多 く, 予 後 は 極 め て 不 良 で あ る。 直 腸 癌 の 報 告 例7)8)では,血
行 性 に 肺 を 介 して 甲状 腺 へ 転 移 し,そ の ほ と
ん ど が 手 術 後 数 ケ 月 以 内 に全 身 性 転 移 の た め 死 亡 して い る。 手 術 適 応 に つ い て は 原 発 巣 の 部 位,他 臓 器 へ の 転 移 の 程 度,全
身 状 態,お
よ び 局 所 圧 迫 症 状(呼
吸 ・嚥 下 困 難 等)の
有 無 を 考 慮 し,慎 重
に対処 す べ き ことと思 われ る 結
語
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転 移 が み られ た 稀 な 症 例 を報 告 し た。 臨 床 的 に は 甲 状 腺 の 悪 性 腫 瘍 は そ の ほ と ん ど が 原 発 性 の 甲 状 腺 癌 で,転
移 性 甲 状 腺 腫 瘍 は極 め て 少 な い。 しか し,本 症 例 の よ うに 臨 床 経 第68巻
第8号
772
S状 結 腸 癌 の 甲状 腺 転移 の1例(渋
谷,他4名)
過 は しば しば急 速で 予後不 良の ことが多 いので,そ の存在 も 日常 診察 上留意 すべ きこと と思 われ た。 文
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