29: 817
“Visual Analogue
Scale”に よ る老 年 者 の
「主 観 的 幸 福 度 」 の 客 観 的 評 価: -ラ
II
イ フ ス タ イ ル な ら び に 認 知 ・行 動 標機 能 との 関 連松林
公蔵
木村
茂昭
岩崎
智子
濱田 竹内
富雄 克介
奥宮 河本
清人 昭子
藤沢 小澤
道子 利男
地 域 在 住 後 期 老 年 者313名 を 対 象 に, 主 観 的 幸 福 度 に 影 響 を 与 え る因 子 を 検 討 した. 幸 福 度
を 評 価 す る指 標 と し て は, Visual
Analogue
を 用 い た. ア ン ケ ー ト調 査 に よ るADL, 認知 ・ 行 動 機 能 の ス コ ア と“VAS-H”と
Scaleof
Happiness
(“VAS-H”)「
主 観的 幸福 度 ス ケール」
情 報 関 連 身 体 状 況, 社 会 的 状 況 な ど を ス コ ア化 し, ま た 各 種 の の 関 連 を 解 析 し た. そ の 結 果, ADLス
コ ア と幸 福 度 と の 関 連 は 薄
く, ま た 情 報 関 連 身 体 状 況, 認 知 ・行 動 機 能 と幸 福 度 と の 相 関 も 小 さ か っ た. 幸 福 度 と相 関 が 強 か った の は, 社 会 的 因 子 で あ り, と りわ け 経 済 状 況, 関 を 示 した. 年 者 で は, Key
同 居 形 態, 家 族 関 係, 集 団 行 動 な どが 幸 福 度 と有 意 の 相
こ の 結 果 は, 比 較 的 元 気 な地 域 在 住 老 年 者 を 対 象 母 集 団 と し た こ と に よ る と考 え られ, 老
よ り身 近 な 具 体 的 現 象 に よ っ て 幸 福 度 が 左 右 さ れ る も の と想 定 され た.
words:
主 観 的 幸 福 度, visual analogue
scale,
activity of daily living
(ADL),
認 知 ・行 動 機
能, 社 会 的 状 況
緒
ing) 言
や 認 知 ・行 動 機 能, 社 会 的 状 況 の うち,
どの 様 な
要 因 が, そ の個 人 の 主 観 的 幸 福 度 に 影 響 を 与 え て い る 老 年 学 の 目標 が, Rowe ら1)が提 唱 す る と こ ろ の “successful aging”「理 想 的 老 化 」で あ る とす れ ば, 具
か を 明 ら か に す る 目的 で, ア ン ケ ー ト調 査 か ら のADL
体 的 に “successful”の意 味 す る内 容 と は 一 体 ど の よ う
び に, 実 際 に検 診 し た 数 種 の 認 知 ・行 動 機 能 と“VAS-
な もの で あ ろ うか. 少 な く と も, 肉 体 的 な 苦 痛 や 苦 労
H”と の 関 連 を 検 討 し た.
が 少 な く身 体 が 健 康 で, 行 動 機 能 が 保 た れ,
の 程 度 や 身 体 状 況, 社 会 的 状 況 を 標 構成 す る各 因子 な ら
しか も社
会 的 状 況 に も恵 ま れ る, と い っ た 多 面 的 な 要 因 が, “successful”を実 現 す る た め に は 必 要 で あ ろ う. し か
対 象 と方 法 対 象 は, 高 知 県 香 北 町 の 地 域 在 住 の75歳 以 上 の 後 期
し, 何 よ り も まず, 老 年 者 個 人 の 主 観 的 満 足 度 や 幸 福
老 年 者313名
感 が, す べ て に 優 先 さ れ る べ き問 題 で あ る こ とに 異 論
歳)
は な い と考 え ら れ る. 我 々 は, 本 報 告 第 一 報2)に お い
(男:女=145:168,
全 員 に 対 し て,
て, 老 年 者 の 主 観 的 幸 福 度 を, 客 観 的 か つ 簡 便 に 評 価
(ADL),
す る た め の 尺 度 と し て Visual
状 況 を, そ れ ぞ れ4段
Happiness
(“VAS-H”)
Analogue
Scaleof
を 考 案 し, そ の 心 的 情 緒 や う
つ 状 態 と の 関 連 を 報 告 した.
K.
Matsubayashi, Hamada,
K.
S. Okumiya,
chi, A. Kawamoto,
(activity of daily liv-
Kimura, M.
T. Ozawa:
T.
Iwasaki,
Fujisawa,
K.
2.
28,
T.
Takeu-
高知 医科 大 学 老 年
病科 受 付 日: 1992.
9項
目か らな る 日常 生 活 動 作
8項 目 の 情 報 関 連 身 体 状 況,
採 用 日: 1992.
7.
29
7項 目の 社 会 的
階 に ス コ ア化 した ア ン ケ ー トを
配 布 し 解 答 を 得 て, 各 項 目別 に採 点 した (表1). 9項 目の ス コ ア の 合 計 をADLス
本 報 告 で は, 老 年 者 のADL
平 均 年 齢79.5±4.0
で あ る.
ADL
コ ア, 情 報 関 連 身 体
状 況 の8項
目 の ス コ ア の 合 計 を 身 体 状 況 ス コ ア, 社 会
的 背 景5項
目の ス コア の合 計 を 社会 状 況 ス コア と し
た. ま た, 実 際 に 検 診 を 行 っ た 認 知 機 能 の 指 標 と して は 長 谷 川 式 簡 易 知 能 評 価 ス ケ ー ル 改 訂 版3)(HDS-R) “Mini-Mental State”4)テストの日本語版5)(MMS) を
と
29:
818
日本 老年 医学 会 雑 誌
表1
29巻11号
(1992:
11)
地 域 在 住 老 年 者 に 対 し て 配 布 し た ア ン ケ ー
ト調 査 用 紙
お 年 寄 り の 健 康 長 寿 計 画 の た め の ア ン ケ ー トの お 願 い この調 査 は, 昨年 度 の 結果 と比較 す る こ とに よ り香北 町 在 宅 の65歳 以上 の お年 寄 りの健 康 を, 維 持増 進 す るた め の大 事 な資 料 とな る もので す. この数 ヶ月 のお 体 の具 合 か らみ て, さま ざ まな問 い に 対 して 一番 あ て は まる と思 わ れ る答 え を4つ の なか か ら ひ とつ 選 ん で, ○で か こん で下 さ い. お元 気 な方 か らねた き りの ご老人 まです べ て の人 が もれ な く, あ りの まま をお 答 え下 さ るよ うお願 い します.
ご自分 で書 い て も, ご家族 の 方 が代 りに書 い て も結構
で す が, 一応 計 画 推進 委 員 がチ ェ ック させ てい た だ きます. 昨年 お 答 え いた だ いた 方 は, 必 ずお 願 い致 します. 生 活 ア ン ケート回答用紙 お 名前:
(男, 女)
明治 大正 昭和
年
最終 学 校 ()
月
日生
お 所: 香 北 区
区
記 入年 月 日: 平 成
年
記
家族
入
者:
本人,
(○を つ け て下 さい) 教 育 年数 ()
年
その 他
月
日
“Visual
Analogue
Scale”
に よ る 老 年 者 の 「主 観 的 幸 福 度 」 の 客 観 的 評 価:
VCPS 図1
II
29:
819
Button-S
認 知 ・行 動 機 能 評 価 の た め の 視 空 間 認 知 ・運 動 協 応 動 作 テ ス ト (VCPS)
と手 指 の 巧 緻 運 動 能
力 を 評 価 す る た め の ボ タ ン テ ス ト (Botton-S).
用 い た. 行 動 機 能 の 指 標 と して は,
コン ピ ュータを用
いた視 空間 認知 ・ 運 動 協 応 動 作 ス コ ア (VCPS)6),
ボタ
ンの付 け外 しに要 す る時間 を測定 して手 指 の巧緻 運動
い て は, analysis 結 果 は 平 均 ±SDで
of variance
結
ー トル 歩 き,
果
ア ン ケ ー ト調 査 に よ るADL,
再 び 戻 っ て 椅 子 に か け な お す 時 間 を測 定 す る こ とに よ
身 体 状 況, 社 会 状 況 の
り, 姿 勢 反 射 と歩 行 の 安 定 度 と俊 敏 性 を評 価 す る た め
各 項 目 の グ レ ー ド別 の “VAS-H”ス
の “Up &
3,
Go”テ ス ト8)9)を 用 い た.
これ ら の 諸 種 指 標 と“VAS-H”と
を 用 い た.
と した.
機 能 を 評 価 す る た め の ボ タ ン ス コ ア (Button-S)7)(図 1), な ら び に, 椅 子 か ら 立 ち 上 が っ て3メ
(ANOVA)
示 し, 推 計 学 的 有 意 水 準 はp
“Visual Analogue
Scale”に よ る老 年 者 の
「主 観 的 幸 福 度 」 の 客 観 的 評 価: -ラ
II
イ フ ス タ イ ル な ら び に 認 知 ・行 動 標機 能 との 関 連松林
公蔵
木村
茂昭
岩崎
智子
濱田 竹内
富雄 克介
奥宮 河本
清人 昭子
藤沢 小澤
道子 利男
地 域 在 住 後 期 老 年 者313名 を 対 象 に, 主 観 的 幸 福 度 に 影 響 を 与 え る因 子 を 検 討 した. 幸 福 度
を 評 価 す る指 標 と し て は, Visual
Analogue
を 用 い た. ア ン ケ ー ト調 査 に よ るADL, 認知 ・ 行 動 機 能 の ス コ ア と“VAS-H”と
Scaleof
Happiness
(“VAS-H”)「
主 観的 幸福 度 ス ケール」
情 報 関 連 身 体 状 況, 社 会 的 状 況 な ど を ス コ ア化 し, ま た 各 種 の の 関 連 を 解 析 し た. そ の 結 果, ADLス
コ ア と幸 福 度 と の 関 連 は 薄
く, ま た 情 報 関 連 身 体 状 況, 認 知 ・行 動 機 能 と幸 福 度 と の 相 関 も 小 さ か っ た. 幸 福 度 と相 関 が 強 か った の は, 社 会 的 因 子 で あ り, と りわ け 経 済 状 況, 関 を 示 した. 年 者 で は, Key
同 居 形 態, 家 族 関 係, 集 団 行 動 な どが 幸 福 度 と有 意 の 相
こ の 結 果 は, 比 較 的 元 気 な地 域 在 住 老 年 者 を 対 象 母 集 団 と し た こ と に よ る と考 え られ, 老
よ り身 近 な 具 体 的 現 象 に よ っ て 幸 福 度 が 左 右 さ れ る も の と想 定 され た.
words:
主 観 的 幸 福 度, visual analogue
scale,
activity of daily living
(ADL),
認 知 ・行 動 機
能, 社 会 的 状 況
緒
ing) 言
や 認 知 ・行 動 機 能, 社 会 的 状 況 の うち,
どの 様 な
要 因 が, そ の個 人 の 主 観 的 幸 福 度 に 影 響 を 与 え て い る 老 年 学 の 目標 が, Rowe ら1)が提 唱 す る と こ ろ の “successful aging”「理 想 的 老 化 」で あ る とす れ ば, 具
か を 明 ら か に す る 目的 で, ア ン ケ ー ト調 査 か ら のADL
体 的 に “successful”の意 味 す る内 容 と は 一 体 ど の よ う
び に, 実 際 に検 診 し た 数 種 の 認 知 ・行 動 機 能 と“VAS-
な もの で あ ろ うか. 少 な く と も, 肉 体 的 な 苦 痛 や 苦 労
H”と の 関 連 を 検 討 し た.
が 少 な く身 体 が 健 康 で, 行 動 機 能 が 保 た れ,
の 程 度 や 身 体 状 況, 社 会 的 状 況 を 標 構成 す る各 因子 な ら
しか も社
会 的 状 況 に も恵 ま れ る, と い っ た 多 面 的 な 要 因 が, “successful”を実 現 す る た め に は 必 要 で あ ろ う. し か
対 象 と方 法 対 象 は, 高 知 県 香 北 町 の 地 域 在 住 の75歳 以 上 の 後 期
し, 何 よ り も まず, 老 年 者 個 人 の 主 観 的 満 足 度 や 幸 福
老 年 者313名
感 が, す べ て に 優 先 さ れ る べ き問 題 で あ る こ とに 異 論
歳)
は な い と考 え ら れ る. 我 々 は, 本 報 告 第 一 報2)に お い
(男:女=145:168,
全 員 に 対 し て,
て, 老 年 者 の 主 観 的 幸 福 度 を, 客 観 的 か つ 簡 便 に 評 価
(ADL),
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状 況 を, そ れ ぞ れ4段
Happiness
(“VAS-H”)
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Scaleof
を 考 案 し, そ の 心 的 情 緒 や う
つ 状 態 と の 関 連 を 報 告 した.
K.
Matsubayashi, Hamada,
K.
S. Okumiya,
chi, A. Kawamoto,
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Kimura, M.
T. Ozawa:
T.
Iwasaki,
Fujisawa,
K.
2.
28,
T.
Takeu-
高知 医科 大 学 老 年
病科 受 付 日: 1992.
9項
目か らな る 日常 生 活 動 作
8項 目 の 情 報 関 連 身 体 状 況,
採 用 日: 1992.
7.
29
7項 目の 社 会 的
階 に ス コ ア化 した ア ン ケ ー トを
配 布 し 解 答 を 得 て, 各 項 目別 に採 点 した (表1). 9項 目の ス コ ア の 合 計 をADLス
本 報 告 で は, 老 年 者 のADL
平 均 年 齢79.5±4.0
で あ る.
ADL
コ ア, 情 報 関 連 身 体
状 況 の8項
目 の ス コ ア の 合 計 を 身 体 状 況 ス コ ア, 社 会
的 背 景5項
目の ス コア の合 計 を 社会 状 況 ス コア と し
た. ま た, 実 際 に 検 診 を 行 っ た 認 知 機 能 の 指 標 と して は 長 谷 川 式 簡 易 知 能 評 価 ス ケ ー ル 改 訂 版3)(HDS-R) “Mini-Mental State”4)テストの日本語版5)(MMS) を
と
29:
818
日本 老年 医学 会 雑 誌
表1
29巻11号
(1992:
11)
地 域 在 住 老 年 者 に 対 し て 配 布 し た ア ン ケ ー
ト調 査 用 紙
お 年 寄 り の 健 康 長 寿 計 画 の た め の ア ン ケ ー トの お 願 い この調 査 は, 昨年 度 の 結果 と比較 す る こ とに よ り香北 町 在 宅 の65歳 以上 の お年 寄 りの健 康 を, 維 持増 進 す るた め の大 事 な資 料 とな る もので す. この数 ヶ月 のお 体 の具 合 か らみ て, さま ざ まな問 い に 対 して 一番 あ て は まる と思 わ れ る答 え を4つ の なか か ら ひ とつ 選 ん で, ○で か こん で下 さ い. お元 気 な方 か らねた き りの ご老人 まです べ て の人 が もれ な く, あ りの まま をお 答 え下 さ るよ うお願 い します.
ご自分 で書 い て も, ご家族 の 方 が代 りに書 い て も結構
で す が, 一応 計 画 推進 委 員 がチ ェ ック させ てい た だ きます. 昨年 お 答 え いた だ いた 方 は, 必 ずお 願 い致 します. 生 活 ア ン ケート回答用紙 お 名前:
(男, 女)
明治 大正 昭和
年
最終 学 校 ()
月
日生
お 所: 香 北 区
区
記 入年 月 日: 平 成
年
記
家族
入
者:
本人,
(○を つ け て下 さい) 教 育 年数 ()
年
その 他
月
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VCPS 図1
II
29:
819
Button-S
認 知 ・行 動 機 能 評 価 の た め の 視 空 間 認 知 ・運 動 協 応 動 作 テ ス ト (VCPS)
と手 指 の 巧 緻 運 動 能
力 を 評 価 す る た め の ボ タ ン テ ス ト (Botton-S).
用 い た. 行 動 機 能 の 指 標 と して は,
コン ピ ュータを用
いた視 空間 認知 ・ 運 動 協 応 動 作 ス コ ア (VCPS)6),
ボタ
ンの付 け外 しに要 す る時間 を測定 して手 指 の巧緻 運動
い て は, analysis 結 果 は 平 均 ±SDで
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結
ー トル 歩 き,
果
ア ン ケ ー ト調 査 に よ るADL,
再 び 戻 っ て 椅 子 に か け な お す 時 間 を測 定 す る こ とに よ
身 体 状 況, 社 会 状 況 の
り, 姿 勢 反 射 と歩 行 の 安 定 度 と俊 敏 性 を評 価 す る た め
各 項 目 の グ レ ー ド別 の “VAS-H”ス
の “Up &
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Go”テ ス ト8)9)を 用 い た.
これ ら の 諸 種 指 標 と“VAS-H”と
を 用 い た.
と した.
機 能 を 評 価 す る た め の ボ タ ン ス コ ア (Button-S)7)(図 1), な ら び に, 椅 子 か ら 立 ち 上 が っ て3メ
(ANOVA)
示 し, 推 計 学 的 有 意 水 準 はp
