14

沖縄 県 に お け るB型

肝炎 ウイル ス感 染 と慢 性 肝疾 患 との 関連

琉 球 大学 医学 部 第1内 科(現,琉 佐

Key

words:





い.一

方,肝

硬 変,肝



(平成3年7月8日

受 付)

(平成3年8月9日

受 理)

hepatitis

B e antigen,

hepatitis

B virus

要 沖 縄 県 の 献 血 者 に お け るHBs抗

球 大学 医 学 部 附属 病 院 輸血 部)

hepatocellular



原 陽 性 率 は3.5%で,全

国 平 均(1.5%)の2倍

癌 の 死 亡 率 は 全 国 平 均 の 約 半 分 で,全

今 回 著 者 は 沖 縄 県 のHBV感

carcinoma,

以 上 を 示 し,全 国 一 高

国 で 最 も低 い .

染 と慢 性 肝 疾 患 との 関 連 に お け る この 疫 学 的 特 異 性 を 解 明 す る た め に 疫

学 調 査 を 含 め た 臨 床 的 検 討 を 行 った. 先 ず,血 HBs抗

清 疫 学 的 調 査 か ら次 の よ うな 成 績 が 得 られ た.1)沖

原 の 陽 性 率 は そ れ ぞ れ15.2%,24.4%で,全

よ り低 い.2)無

縄 県 の 肝 硬 変,肝

細 胞癌 患 者 に おけ る

国 平 均 の 陽 性 率(肝 硬 変;23.4%,肝

症 候 性 キ ャ リア に お け る 年 齢 別 のHBe抗

共 に そ の 陽 性 率 は 低 下 し,20代 で15.7%で,30歳

以 上 で は2∼3%あ

れ らの 症 例 の 年 間 の 消 失 率 は25.6%で

この よ うに,沖 縄 県 のHBs抗

齢 と

る い は そ れ 以 下 の 陽 性 率 を 示 した .

ま た,肝 外 来 を 受 診 した 無 症 候 性 キ ャ リア の 内,6.3%が 慢 性 肝 炎,1例(0.2%)が 一方 ,HBe抗 原 陽 性B型 慢 性 肝 炎24例 の検 討 で は,2年 間 の 観 察 期 間 中 に56.3%の の 自然 消 失 を 認 め,こ

細 胞 癌;31.4%)

原 陽 性 率 は20歳 以 下 の年 齢 で50%で,年

肝 硬 変 で あ っ た. 症 例 にHBe抗



あ った .

原 キ ャ リア に お い て,若 い 時 期 に あ る い は 慢 性 肝 炎 の 初 期 の段 階 でHBe

抗 原 を 陰 性 化 させ て い る こ とが そ の 予 後 に 良 好 な結 果 を も た ら し,B型

慢 性肝 疾患 の有 病率 を低 下 させ

て い る と推 定 され た.

は じめ に B型 肝 炎 ウ イル ス(HBV)は 解 明 の 研 究 の 中 で,そ され た が,そ

ど多 くの デ ー タが 集 積 され た2). 輸血 後肝炎 の原因

の 病 因 ウイ ル ス と して発 見

沖 縄 県 の 献 血 者 に お け るHBs抗 3.5%で,全

原陽性 率は

国 平 均(1.5%)の2倍

以 上 を 示 し,

の 後,慢 性 肝 疾 患 との 関 連 が 明 らか

全 国一 高 い こ とが 知 られ て い る(日 本 赤 十 字 血 液

とな り,特 に肝 細 胞 癌 の原 因 ウ イ ル ス と し て注 目

セ ン タ ーの1983年 度 の 資 料) .一 方,肝 硬 変,肝 癌

さ れ る よ うに な った.

の 死 亡 率 は 全 国平 均 の 約 半 分 で,全

HBVの

浸 淫 地 区 の 分 布 と肝 癌 多 発 地 区 の 分 布

は 地 理 的,疫 学 的 に よ く一 致 し,そ の こ とがHBV

(厚 生 省 大 臣 官房 統 計 情 報 部,"昭

国 で 最 も低 い

和58年 人 口動 態

統 計 編 下 巻").

と肝 細 胞 癌 との 関連 に つ い て の そ の 後 の研 究 の 発

こ の よ うに沖 縄 県 は,HBs抗

原 陽 性 率 は高 い

端 とな った こ とは よ く知 られ て い る1).こ の 数 年,

が,肝 硬 変,肝

臨 床 的 あ るい は動 物 実 験 さ らに は 分 子 生 物 学 的 研

が低 い.す なわ ち,HBVの

究 な ど,多 方 面 か らの研 究 が 展 開 され,HBVと



亡 率 は 地 理 的 あ る い は疫 学 的 に密 接 な 関 連 を有 す

細 胞 癌 の 関連 に関 して は も はや 疑 う余 地 もな い ほ

る とい う これ まで の調 査 結 果 と相 反 す る現 象 が み

別 刷請 求 先:(〒903-01)沖

佐 久川

保 育 率 と肝 細 胞 癌 の 死

られ て い る.

縄 県 西原 町字 上 原207

琉 球 大 学 医学 部 第1内 科

細 胞 癌 な どの 慢 性 肝 疾 患 の死 亡 率



今 回 著 者 は 沖 縄 県 に お け るHBV感 感染 症 学 雑誌

第66巻

染 と肝 硬 第1号

沖 縄 県 に お け るHBV感

変,肝

細 胞 癌 との 関 連 に お け る この 疫 学 的 特 異 性

Table

1

Patients

chronic

の原 因 を 解 明す るた め に疫 学 調 査 を 含 め た 臨 床 的

type

検 討 を 行 った の で報 告 す る.

with

HBe

cases

18/6

Age (Mean•}SD) Follow-up

癌症例

沖 縄 県 内 の15の,公

period

12-78

CAH



成 因 に 関 す る調 査 表 を 配 布

し,そ の うち9施 設 よ り解 答 が 得 られ た(回 収 率: 60%). 366例 の 肝 硬 変 患 者 の 成 因 に 関 す る成 績 が 集 積 れ ら の患 者 の 中 で,特 殊 型 肝 硬 変 症 例25

(27.3•}18.8)

Histology

立 病 院 とそ れ に準 ず る医 療

変 及 び 原 発 性 肝 癌)の

6-33 (22.5•}6.7)

(Mean•}SD)

施 設 を 有 す る私 的 病 院 を 対 象 に慢 性 肝 疾 患(肝

positive

24

M/F

対 象 と方 法 1. 肝 硬 変,肝

antigen

B hepatitis

No.

I. 対 象

され,こ

15

染 と慢 性肝 疾 患

12

CPH

9

NSRH

1

NT

2

CAH=

Chronic

aggressive

CPH=

Chronic

persistent

NSRH=

Non-specific

NT=Not

performed

hepatitis hepatitis

reactive

hepatitis

例 を 除 い た341例 を 研 究 対 象 と した.一 方,原 発 性 肝 癌 に 関 して は113例 が 集 積 され,そ の 中 か ら肝 内

あ っ た. こ れ ら の 症 例 は す べ て1か

胆 管 癌 症 例 を 除 い た85例 の 肝 細 胞 癌 につ い て検 討 した.ま

た,肝 細 胞 癌 患 者 の59例 は 肝 硬 変 を伴 っ

ら3ヵ

月 間 隔 で(症

例 に よ っ て は そ れ 以 上 の 頻 度 で)肝

機能 検査 お よ

て お り,そ れ ぞ れ の疾 患 群 の 中 で重 複 し て解 析 し

びHBe抗

た.

ず れ の症例 も抗 ウイル ス療 法 を 受 けて い な か っ

2. 検 診 受 診HBs抗

1983年 よ り1990年 ま で の 期 間 中 に住 民 検 診,人

無 症 候 性 のHBs抗

原 陽 性 を 指 摘 され た

原 陽 性 者829人 を 対 象 と した.

829人 中 男 性 は563名,女

性 は266名 で,年 齢 は2

歳 か ら83歳 まで 分 布 し,平 均 年 齢 は41.7±11.1歳 829名 中431名 が 精 査 の た め に我 々 の 施 設 の肝 臓 こで 問 診,肝 機 能 検 査,肝 炎

ウ イル ス マ ー カ ー,さ 行 され,そ

らに 腹 部 超 音 波 検 査 等 が施

れ らの 結 果 を総 合 し て臨 床 診 断 が 下 さ

れ た.慢 性 肝 炎,肝 硬 変 が 疑 わ れ る症 例 は さ らに 肝 生 検 や 肝 癌 の ハ イ リス ク グル ー プ と して の経 過

に 肝 生 検 が 施 行 さ れ,ヨ

3. HBe抗

原 陽 性B型

1986年 よ り1990年 ま で 当 科 を 受 診 したHBe抗 原 陽 性B型

1. 肝 炎 ウ イ ル ス マ ー カ ー の 測 定 HBs抗

原 の 測 定 は 主 にreverse

慢 性 肝 炎 症 例 の 中 で,12ヵ 月 以 上 経 過

24例 中,男

性 は18例,女

る い はenzyme ま た,HBe抗

原,HBe抗

2.

性 は6例

で,年 齢 は6

れ らの 症 例 の 中 に6歳

小 児 が 含 ま れ て い た が,他

と13歳 の2例



は い ず れ も17歳 以 上 で

passive

に て 行 い,一

部 の

(RIA)法,あ

immunoassay

法 あ る い はEIA法

(EIA)法

を 用 い た.

体 の 測 定 は い ず れ もRIA

に て 行 っ た.

肝機能検査

検 診 受 診HBs抗

原 陽 性 者 に 対 し て,GOT, ル カ

ZTT,血

リ フ ォス フ ァタ ー ゼ

清 総 ビ リル ビ ン(T.Bil),総

ル ブ ミ ン の 測 定 を 行 っ た.ま

陽 性 慢 性 肝 炎 のfollow-upの GOT,

歳 か ら33歳 ま で 分 布 し,平 均 年 齢 は22。5±6.7歳 で

平 成4年1月20日

(RPHA)法

症 例 に 対 し て はradioimmunoassay

白,ア

観 察 で き た24例 を 対 象 と した.

1).

II. 方 法

(ALP),

慢性肝炎

ー ロ ッパ

分 類 に よ っ て 組 織 学 的 に 分 類 し た(Table

GPT,γ-GTP,ア

観 察 を 行 っ た.

あ った.こ

24例 中,22例

hemoagglutination

で あ った.

外 来 を 受 診 した.そ

た,い

た.

原陽 性者

間 ドッ ク,献 血 等 でHBs抗

原 ・抗 体 の 検 査 を 施 行 さ れ た.ま

GPT,

応 じ てT.Bil,

た,HBe抗

蛋 原

た め の検 査 と して

γ-GTP,

ZTTを

必 須 と し,必

ALP,総

胆 汁 酸,コ

要 に

リン エ ス テ ラ ー

ゼ 等 の 検 査 も 加 え た. 3.

超音波検査

超 音 波 検 査 に は 主 に ア ロ カSSD-270の

機 械 を

佐久川 廣

16

使 用 した.ま

た,超 音 波 に よ る慢 性 肝 疾 患 の 診 断

は肝 表 面 な らび に 辺 縁 の性 状,実

Fig. 1

Prevalence

asymptomatic

質 像,脾 腫,側

of HBe

antigen

HBs antigen

by age among

carriers

副 血 行 路 等 の所 見 を 参 考 に した. 4. 統 計 的 処 理 年 齢 別,疾 患 別 の 陽 性 率 の 比 較 はx2検 定 を 用 い た.ま た,HBe抗 るHBe抗

原 陽 性B型

慢 性肝炎症例 にお け

原 の消 失 率 は 生命 表 を用 い て 算 出 し

た. 結



1. 肝 硬 変,肝 癌 の成 因 と肝 炎 ウイ ル ス マ ー カ ー の陽性率 341例 の 通 常 型 肝 硬 変 症 例341例 中,男 例,女 性 は113例 で,男 女 比 は2:1で

性 は228

あ った.ま

例 全 例 にHBe抗

た,年 齢 は25歳 か ら90歳 まで 分 布 し,平 均 年 齢 は

ちHBe抗

56.8±12.8歳

者 は90.6%で

で あ った.

341例 中328例 に つ い てHBs抗

原 が 測 定 され,

そ の うち50例(15.2%)がHBs抗

原陽性であっ

た.

原 ・抗 体 の 検 査 を施 行 し,こ の う

原 陽 性 者 は29名(3,5%)HBe抗

体陽性

あ った.

年 齢 別 のHBe抗

原 陽 性 率 は,20歳

層 で は そ の50%がHBe抗

未満 の年齢

原 陽 性 で あ り,年 齢 が

高 くな るに 従 い逆 に そ の 陽 性 率 は 低 下 し,20代 で

ま た,飲 酒 歴 と輸 血 歴 は そ れ ぞ れ51.8%,6.9% に認 め られ た(Table

2).

原 発 性 肝 癌 症 例 の 中 で,胆

1で あ った.ま

管 細 胞 癌 を 除 く85例

性 は19例 で,男 女 比 は3.5:

た,年 齢 は24∼87歳 ま で 分 布 し,

平 均 年 齢 は60.8±12.9歳

で あ った.

85例 中,82例 に つ い てHBs抗 例(24.4%)がHBs抗

原 が 測 定 さ れ,20 た,飲

認 め られ

2).

方,HBe抗

体の

陽 性 率 は年 齢 と と もに上 昇 し,30歳 以 上 で は どの 年 齢 層 で も90%以 上 の 陽 性 率 を示 した. 肝 臓 外 来 を 受 診 した431名 の 臨 床 診 断 とHBe 抗 原 ・抗 体,肝

機 能 検 査 結 果 をTable

3に 示 す. れ か の異 常 を

示 す 症 例 の頻 度 を 表 して い る. 431例 中,27例(6.3%)が

慢 性 肝 炎 と診 断 され,

肝 硬 変 と診 断 さ れ た 症 例 は1例(0.2%)の

みで

あ った.慢 性 肝 炎27例 中5例(18.5%)がHBe抗

2. 検 診 受 診HBs抗

原 陽 性 者(無 症 候 性 キ ャ リ

ア)に お け る肝 疾 患 の頻 度 検 診,献 血 等 でHBs抗

原 陽 性 で あ り,ま た,ほ

原 陽 性 を 指 摘 され た829

Table 2 Etiologic factors in patients with chronic liver disease (liver cirrhosis and hecarcinoma)

とん ど の症 例 が トラ ンス

ア ミナ ーゼ の異 常 を 示 した.こ れ ら27例 中 の8例 が組 織 学 的 に検 討 され,2例 肝 炎(CAH2A)で,残

patocellular

るいはそれ以

表 中 の肝 機 能 異 常 はGOT,GPT何

原 陽 性 で あ った.ま

酒 歴 と輸 血 歴 はそ れ ぞ れ43.4%,5.2%に た(Table

以 上 で は2∼3%あ

下 の陽 性 率 を 示 した(Fig.1).一

の肝 細 胞 癌 症 例 に つ い て 同様 の 検 討 を行 った.85 例 中,男 性 は66例,女

10∼20%,30歳

in Okinawa

が軽度 の活動性慢 性

りの6例 は いず れ も慢 性 持

続 性 肝 炎(CPH)で

あ った.

3. B型 慢 性 肝 炎 に お け るHBe抗

原 の 自然 消

失率 24例 のHBe抗

原 陽 性B型

慢 性肝炎症例 の中

で,経 過 観 察 中 の 最 初 の2年 間 で,13例 にHBe抗 原 の消 失 を 認 め,さ LC= liver *

cirrhosis,

80 ml ethanol/day

HCC=

hepatocellular

for more than 5 years

carcinoma

後HBe抗 HBe抗

ら にそ の13例 中 の9例 に そ の

体 の 出 現 を 認 め た.ま 原 の 累 積 消 失 率 は56.3%で 感 染 症学 雑 誌

た,2年

間の

あ った.そ 第66巻

第1号



沖縄 県 にお け るHBV感 Table

3

Clinical

diagnosis,

antigen

positive

health

()

Fig. 2

HBe

antigen,

17

染 と慢 性 肝 疾患

anti-HBe

and liver function

tests result

in HBs

examinees

indicates%

a

Cases

with

normal

b

Cases

with

high

Cumulative

in HBe antigen

values values

clearance positive

rate

chronic

of GOT

of either

of HBe

and GOT

GPT or GPT

て い るが,そ

antigen

の 原 因 と し て 非A非B型

ル ス が 最 も多 く,肝 癌 症 例 のHBs抗

type B hepatitis

せ いぜ い30%程 HBs抗

肝 炎 ウイ 原陽 性率 は

で あ る5).こ の よ うに 肝 癌 症 例 の

原 陽 性 率 が 低 い と こ ろ で は,そ の地 域 内 で

のHBV保

有 率 と肝 癌 死 亡 率 が 相 関 しな い こ とは

十 分 考 え られ る こ とで あ る.す なわ ち,HBs抗 陽 性 肝 癌 の死 亡 率 が 高 くて も,非A非B型

原 肝炎

ウ イル ス が原 因 とな る肝 癌 の 死 亡 率 が 低 け れ ば, 全 体 と して肝 癌 の 死 亡 率 は 低 くな る.し た が っ て, HBV保 合,肝

有 率 と肝 癌 死 亡 率 との 関 連 を 検 討 す る場 細 胞 癌 症 例 に お け るHBs抗

原 陽 性 率 も併

せ て 検 討 す る必 要 が あ る. 後,残

りの11例 中,4例

そ の うち1例

にHBe抗

の 獲 得 を 認 め た.こ

以 上 経 過 観 察 され

原 が 消 失 し,さ

らに 抗 体

れ ら24例 の 年 間 のHBe抗

消 失 率 は 平 均25.6%で HBe抗

が3年

常 化 を認 め た が,HBe抗 考



原 が 持 続 して 陽 性 で あ っ

た10例 は1例 を 除 い てGPT高

性 者 の 割 合 は,肝 硬 変 症 例:15.2%,肝 例:24.4%で

値 が 持続 した.



この よ うに,沖 縄 県 で は,肝 硬 変,肝 れ に お い て もHBs抗

癌 のいず

原 陽 性 率 が 低 く,さ

らに両

原 陽 性 の肝

硬 変,肝 癌 の死 亡 率 は全 国 平 均 よ り低 い も の と推 定 され る. 致 死 率 が 高 い疾 患 の場 合,そ

有病率 有 率 の 高 い 地 域 と肝 癌 多 発 地

区 は地 理 的 に よ く一 致 す る.す なわ ち,HBV感 の 高 浸 淫 地 区 で あ る東 南 ア ジ ア や 中 国,南

細胞癌症

あ り,全 国 平 均 よ りむ し ろ低 い値 を

疾 患 の 死 亡 率 も低 い こ と よ り,HBs抗

原 陽 性 慢 性 肝 疾 患(肝 硬 変 ・肝 癌)の

世 界 的 にHBV保

原陽

示 した.

あ った(Fig.2).

原 が 消 失 した14例 中12例 に,GPTの

1. HBs抗



沖 縄 県 の 慢 性 肝 疾 患 症 例 に 占め るHBs抗



アフリ

は 正 比 例 す る が,肝 硬 変,肝 あ て は ま る.つ

の死 亡 率 と有 病 変

癌 に つ い て もそ れ が

ま り,こ れ らの 疾 患 に お い て は死

亡 率 を 有 病 率 に 置 き換 え て検 討 す る こ とが 可 能 で

カ等 の 国 々 は肝 癌 の 死 亡 率 も ま た 高 い1).こ れ ら

あ る.例

の 地 域 に共 通 し て い る こ と は肝 癌 症 例 の 大 部 分 が

100と す る と,そ の 中 のHBs抗

HBs抗

病 率 は31.4と い う指 数 で表 され る(全 国 調 査 で 集

原 陽 性 と い う こ とで あ る3)4).

日本 は肝 癌 死 亡 率 が 比 較 的 に高 い こ とが 知 られ 平 成4年1月20日

え ば,全 国 平 均 の 男 性 の肝 癌 の 有 病 率 を 原 陽 性 肝 硬 変 の有

計 さ れ た 肝 細 胞 癌 症 例 の31.4%がHBs抗

原陽

佐久川

18

廣 績 に類 似 して い た.

Fig. 3 Mortality rate of HBs antigen positive hepatocellular carcinoma (comparison between Okinawa prefecture and the average for the whole of Japan)

HBe抗

原 ・抗 体 系 の 重 要 な 臨 床 的 意 義 と し て,

そ の肝 炎 の 活 動 性 との 関 係 が あ げ られ る 。つ ま り, HBe抗

原 が持続 的 に陽性 で あれ ば肝 障害 が 進行

し や す い.一 方,HBe抗 SMR:

HBe抗

68.8

原 の 陰 性 化,あ

るい は

体 の 獲 得 に よ り肝 炎 の 活 動 性 は 鎮 静 化 さ

れ,肝 障 害 の 進 行 も停 止 す る と され て い る10).した が っ て,若 い 時 期 にHBe抗 と えHBs抗

原 が陰 性 化 す れ ば,た

原 キ ャ リア で あ って も健 康 人 と して

の 生 活 を送 る こ とが可 能 で,事 実,大 Japan

部分 のキ ャ

リアが 無 症 候 性 の ま ま終 始 す る11).

Okinawa

また,肝 硬 変,肝 癌 の 約99%は30歳

以 上 の年 齢

性5)).一 方,沖 縄 県 の 場 合,肝 癌 の 標 準 化 死 亡 比

で 発 症 し て お り12),沖 縄 県 の よ うに30歳 以 下 で ほ

が68.8で6),肝 細 胞 癌 症 例 中 のHBs抗

と ん ど のHBs抗

24.4%で

あ る こ と よ り,HBs抗

原陽性 率が

原 陽 性 の肝 細 胞 癌

の 有 病 率 を 同 様 に指 数 で表 す と16.8と な る.つ り,HBs抗



原 陽 性 肝 細 胞 癌 の 有 病 率 は 全 国平 均 の

約 半 分 とい うこ とに な る.同 様 に,HBs抗 肝 硬 変 症 例 に お い て,そ

原 陽性

の有病率 を指数で求 め る

と,全 国 平 均 が23.4で,沖

縄 県 が11.4と い う こ と

に な る(Fig.3). 沖 縄 県 のHBV保 り,そ の一 方 でHBs抗

原 陽性者 か ら

原 か ら抗 体 へ のseroconversionは

キャ

細 胞 癌 患 者 の 多 くが

リア→ 慢 性 肝 炎 → 肝 硬 変 → 肝 細 胞 癌 とい う疾 患 の 進 行 過 程 の 中 で,ど の 時 期 にseroconversionす



か とい うこ とが 重 要 に な っ て く る. 原 ・抗 体

慢 性 肝 炎 の 進 行 度 を 決 定 す る因 子 と して 肝 細 胞

ャ リア に お け る 年 齢 別 の

壊 死 の 強 さ と肝 炎 の 持 続 時 間 が あ る.特 に,肝 炎

えば,飯

以上 で わ ず

原陽

野 の 報 告 に よ る と,

同 様 に無 症 候 性 キ ャ リアの 群 で,20代 のHBe抗

HBe抗

体 陽 性 で あ る8),した が っ て,無 症 候 性 キ ャ

台 湾 か ら の 報 告 と比 較 し て 明 ら か にHBe抗

9.5%と

原 陽 性 の 肝 硬 変,肝 癌 の 有 病 率 が

HBe抗

あ り,日 本 国 内 の 他 の 地 域 の 報 告 や

性 率 が 低 か った.例

か ら もHBs抗

低 い こ と は容 易 に 想 像 で き る.

原 陽 性 肝 硬 変,肝 癌 の有 病

原 陽 性 率 は20代 で15.7%,30歳

か2∼3%で

原 陽 性 者 のcross sectional study

原 陽 性 の 肝 硬 変,肝

原 キ ャ リアの 予 後 とHBe抗

無 症 候 性HBVキ

そ の 後 肝 硬 変,肝 癌 進 行 す る こ とは 稀 と思 わ れ る. つ ま り,HBs抗

HBs抗

約1/4と 推 定 され る.

HBe抗

化 を 示 し,そ れ に と も な っ て肝 炎 も鎮 静 化 す れ ば,

であ

有 率 は全 国 平 均 の約2倍

細 胞 癌 に進 展 す る危 険 率 は 全 国 平 均 の

2. HBs抗

原の陰性

リア の 予 後 に 良好 な 結 果 を もた らす が,一 方 で,

率 は 約 半 分 で あ る こ とよ り,HBs抗 肝 硬 変,肝

原 キ ャ リ ア がHBe抗

で25∼30%

原 陽 性 率 を示 し,30代;14.6%,40代; な っ て い る7).さ らに,Liawら

の台湾の無

症 候 性 キ ャ リア に お け る成 績 で は20代;56.6%, 30代;25.9,40代10.5%で,30歳

以 上 で もま だ か

な りHBe抗 原 陽 性 者 が存 在 す る8). 一 般 にHBs抗 原 キ ャ リ ア の 年 齢 別 のHBe抗 原 陽 性 率 は 欧 米 と比 較 し て ア ジ ア 地 区 で は 高 く な って お り9),今 回 の成 績 は 欧 米 に お け る 調 査 成

の 持 続 時 間 は 慢 性 肝 炎 の 場 合,そ

の予後 に大 きな

影 響 を与 え る. 今 回 検 討 した24例 のHBe抗 炎 患 者 の 中 で,そ

原 陽 性B型

の 約60%が2年

原 が 消 失 し,年 平 均 のHBe抗 で あ っ た.ま たHBe抗

慢 性肝

以 内 にHBe抗 原 消 失 率 は25.6%

原消失 例 の ほ とん どに肝

炎 の 鎮 静 化 を 認 め た. HBe抗

原 陽 性B型

慢 性 肝 炎 に お け るHBe抗

原 の 自然 消 失 率 に 関 して は 多 くの報 告 が あ る.一 般 に 欧 米 の キ ャ リア に お い て は 消 失 率 が 高 く,日 本 を 含 め ア ジ ア地 区 で は低 い. 例 えば,Hoofnagleら 性B型

は,米 国人 のHBe抗

原陽

慢 性 肝 炎 症 例 に つ い て 検 討 し,HBe抗 感染症学雑誌

第66巻 第1号



沖 縄 県 に おけ るHBV感

の 自然 消 失 率 は年 平 均25.4%で

あ った と報 告 して

い る13).一 方,台 湾 で は,Liewら し14),ま た,香 港 で はLokら

が17.0%と

い うHBe抗

け るHBe抗

症 例 に肝 硬 変 を

伴 って お り,肝 癌 の発 症 まで に はHBV持



続感 染

とそ れ に伴 う慢 性 の 肝 細 胞 壊 死 とい う過 程 が必 要 で あ る.

くの 施 設 が

原 の 自然 消 失 率 の 成

日本 を 含 め て ア ジ ア の 国 々の 多 くの キ ャ リア は

績 を 報 告 して い る16). 沖 縄 県 のHBe抗

19

また,肝 細 胞 癌 は そ の 約80%の

報告

に よ って13.4%と

告 され て い る15).さ ら に 日本 で も,多 7.3∼11.9%と

染 と慢性 肝 疾 患

母 児 間 感 染 や 幼 少 児 期 の水 平 感 染 に よ って 成 立 し

原 陽 性B型

た キ ャ リアで あ る.キ

慢性肝 炎症 例 にお

原 の 自然 消 失 率 の成 績 は 同 じ ア ジ ァ

ャ リア の 初 期 す な わ ち,幼

小 児 期 の キ ャ リア の 多 くがHBe抗

原 陽 性 で,肝

の 他 の 地 域 と比 較 し て あ き らか に高 率 で あ り,こ

障 害 を有 し な い症 例 が 多 い.そ の 後,10代

れ らの 地 域 に お け る イ ンタ ー フ ェ ロン療 法 の 成 績

よ り20代 に か け て 肝 炎 を 起 こ し,あ

と比 較 し て もむ し ろ高 い消 失 率 を 示 して い る17).

抗 原 が陰 性 化 し,さ ら に肝 炎 も鎖 静 化 し,HBe抗

3. HBV持 HBV感

続 感 染 と肝 癌 との 関連

体 陽 性 の 無 症 候 性HBs抗

染 と肝 癌 の 関 連 に つ い て は 多 くの調 査

方,残

りの10%(こ

原 キ ャ リア に な る.一

の 数 字 は地 域 に よ っ て差 が あ

報 告 よ り明 らか で あ るが,感 染 そ の も の が直 接 癌

るが)はHBe抗

化 に結 び つ くわ け で は な い.例 え ば,HBs抗

肝 硬 変,肝 細 胞 癌 へ と進 展 して い く11).

体陽

性 者 は過 去 の 一 過 性 感 染 者 が ほ とん どで あ る が,

の後半

る者 はHBe

原 が 持 続 し,肝 炎 も遷 延 化 し て,

沖 縄 県 のHBVキ

ャ リアの 予後 が他 の地 域 の

そ れ らの 人 達 に肝 癌 が 発 症 す る危 険 度 はHBVに

キ ャ リア と比 較 して 良 好 な理 由 と して2つ 考 え ら

暴 露 さ れ て い な い集 団 の そ れ と差 が な い18).つ ま

れ る.1つ

り,専 ら肝 癌 との 関 連 が取 り沙 汰 され るの はHBs

原 の 消 失 が 若 い 時期 に高 率 に 起 こ っ て い る こ と.

抗 原 陽 性 の 集 団 す なわ ちHBVキ

次 に,慢 性 肝 炎 症 例 にお い て,肝 炎 の 持続 時 間 の

a:

Fig.

4

The

great

acquired b:

carriers

in

disappeared The

平成4年1月20日

both

outcome

majority

Prevalence

LC

of In

Japan and

the

the time

developing are

49.6•}12.8

HCC

being

HBs

HBs

B virus

Okinawa.

ages

in

of of

hepatitis

before

mean

(HCC) of

Clinical

their

period.

ャ リア で あ る.

antigen

HBe

carriers

antigen (HBV)

infection by

age

when

a HBsAg

carrier

cirrhosis

(LC)

and more

than

of

54.9•}10.8 30

years

HBsAg

and

years

have

post-natal-

asymptomatic HBe 30

years

hepatocellular old,

age.

Okinawa

during

carriers, became

of

prefecture in

or

among

majority

liver

Okinawa

carriers perinatally

great

to

in

(HBsAg)

antigen

は,キ ャ リア の 自然 史 の 中 で,HBe抗

respectively, (by

Matsushita,

HBsAg antigen of

age.

had c, d:

carcinoma with H.12))

99%

佐久川

20

比 較 的 短 い 時 期HBe抗 とい う事 で あ る.す

原 の 陰 性 化 が 認 め られ る なわ ち,Fig.4に

示 す よ うに

沖 縄 県 の 多 くの キ ャ リア が10代 の 後 半 か ら20代 に か け てHBe抗

原 を 消 失 さ せ,一 般 に 肝 硬 変 へ と

廣 頭病 院),慶

田喜 秀(沖 縄 県 立 中部 病 院),佐 久 本 健,島 袋

隆 志,宮 平守 博,大 湾 朝 二(那 覇 市 立 病 院),仲 宗 根 和 則(琉 生病 院),金

城武 俊(沖 縄県 立 名 護病 院),真 喜 志 金 造,潮

平英 敏(国 療沖 縄 病 院),城 間 盛 光(沖 縄 県立 南 部 病 院), 大城 一 郎(沖 縄 赤 十 字 病 院),高 江 州 均,恩 河 尚清,新 里

進 展 す る と され る40代 よ り さ ら に若 い30代 で 肝 炎 を鎮 静 化 させ て い る.ま た,B型

慢性肝 炎症例 で



(沖縄 県 立 宮 古病 院) 尚,本 研 究 の一 部 は 厚生 省 肝 炎 連絡 協議会B型

肝 炎 研究

も そ の 組 織 学 的 進 行 度 が 軽 度 の 時 期(CPH,

班 の研 究 費 な らび に肝 炎財 団 の 研究 助 成 金 に よ って 行 わ れ

CAH2A)にHBe抗

た.

原 が 消 失 し て お り,HBV

キ ャ リアか ら肝 硬 変,肝 細 胞 癌 へ と進 展 す る頻 度 は低 い と推 定 され る. この よ うに,若 い 時 期 に あ るい は肝 障 害 が 軽 い 時 期 にseroconversionす

れ ぽ その キ ャ リアの予

後 は 良 好 で あ る と 言 え る.ア HBs抗

ジ ア地 区 に お い て

原陽 性肝 細胞 癌 の死 亡率 が高 いの は もち

ろ ん そ の 地 域 のHBV保

有 率 が 高 い こ とが 一 番 の

原 因 で あ ろ うが,そ れ と と も にHBVキ る い は 慢 性 肝 炎 症 例 に お け るHBe抗

ャ リア あ 原 消失 率が

低 い こ と も重 大 な原 因 の 一 つ で あ ろ う と思 わ れ る. HBVキ

ャ リア の 予 後 は個 人 差 は もち ろ ん の こ

と,地 域 差 や 人 種 差 が あ り,そ の 差 は 自然 経 過 の 中 で の,HBe抗

原 の 消 失 あ るい は抗 体 の 獲 得 に お

け る差 とい う こ とが で き る.こ の ウ イ ル ス の 増 殖 の 停 止 を 意 味 す るHBe抗 疫 能,栄

養 状 態,あ

原 の 消 失 に は個 体 の 免

文 献 1) Szmuness, W.: Hepatocellular carcinoma and hepatitis B virus: Evidence for a causal association. Progr. Med. Virol., 24: 50-59, 1978. 2) Popper, H., Shafritz, D.A. & Hoofnagle, J. H.: Relation of the hepatitis B virus carrier state to hepatocellular carcinoma. Hepatology, 7: 764 -772

6)

7)

の 解 明 がB型

れ らの 原 因

慢 性 肝 炎 の 治 療 に な ん らか の 好 結

果 を もた らす こ とを 期 待 す る. 謝辞 た斎藤

稿を終えるにあた り,御 指導 と御校閲を賜 りま し 厚教授に深謝 します.ま た,数 々の助言 を頂 きま

した小張一峰名誉教授に感謝 の意を表 します.さ らに,試 薬の供給や疫学調査 について助言を頂 いた 自治医科大学の 真弓 忠教授,津 田文男氏な らびにAuグ ループの皆様 に 深謝 します. また,以 下に本研究に御指導,御 協力頂いた方 々の名前 と所属 を列挙 して,感 謝の言葉に代えさせて頂 きます. 金城福則助教授,第 一内科消化器グループ(琉 球大学医 学部第一内科),嘉 手納啓三(沖 縄 メデ ィカル病院),親 川 富憲,宮 城

護(宜野湾記念病院),池 宮城喜春,新 垣善輝

(沖縄県予防医学協会),石 原 昌清,玉 城政弘,親 泊康朝(中

充,

福 村 圭 介,

飯 野 四 郎:

桑 江 な お み:

キ ャ リア 対 策:

炎 連 絡 協 議 会,

が19)20),それ だ け で は地 域 間 あ るい は 人 種 間 の 差 を 説 明 す る こ とは 出 来 な い.今 後,そ

本成

沖縄 県 にお け

る が ん 死 亡 に 関 す る 統 計 的 解 析-昭 和48-59年 - . 沖 縄 県 公 害 衛 生 研 究 所 報, 20: 23-38, 1987.

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SAKUGAWA Hospital,

Faculty

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In Okinawa prefecture, prevalence of hepatitis B surface antigen (HBsAg)among blood donors is 3.5% and is twice as high as the average for the whole of Japan (1.5%),and is the highest in Japan (p

[Correlation between hepatitis B virus infection and chronic liver disease in Okinawa].

In Okinawa prefecture, prevalence of hepatitis B surface antigen (HBsAg) among blood donors is 3.5% and is twice as high as the average for the whole ...
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