日消誌

2015;112:1251―1258

クローン病診療における画像診断・内視鏡診断の活用法

クローン病画像モダリティーとしての MRI 藤 井

俊 光

渡 辺

守1)

要旨:クローン病診療においてはリアルタイムな病態把握とそれに呼応した治療戦略の構築が必須であ る.近年クローン病においてさまざまな画像評価法が進化している.しかしクローン病の病態評価に用 いるモダリティーは精度が高いだけでなく,疾患の性質上より非侵襲的である必要がある.MRI を用 いて消化管の評価も可能とした MR enterography(MRE)! MR enterocolonography(MREC)は, クローン病の腸管病変のみならず腸管外病変も同時に診断が可能で侵襲もなく,疾患モニタリングに最 適なモダリティーと考えられる.読影医の育成など解決すべき問題も残されているが,今後多くの施設 へ広がることが期待される. 索引用語:クローン病,活動性モニタリング,MRI,MRE,MREC

して機能障害へと至る疾患の進行を抑制するため

はじめに クローン病診療は,約 20 年前の生物学的製剤

には,適切な時期に適切な治療介入を行うことが

の開発以降劇的に変化を遂げた.その驚異的な有

重要で,そのためには疾患活動性の評価と病態の

効性ゆえに,治療のみならず粘膜治癒といった高

把握が必須となる.疾患活動性の評価はこれまで

1)

い治療目標を生み出した .さらに疾患概念すら

臨床症状によっていたが,小腸病変には必ずしも

も変貌させてきた.これまでクローン病は再燃と

症状がともなわず,クローン病の臨床的活動性の

寛解を繰り返す疾患と考えられていたが,現在で

指 標 で あ る Crohn s

Disease

Activity

Index

は慢性進行性の炎症性疾患としてとらえられてい

(CDAI)や疾患活動性と相関する CRP も,小腸

る2).臨床的に寛解であっても炎症そのものを確

病変を十分には反映していないことは以前より指

実にコントロールできなければ,持続的な炎症が

摘されていた4).また,炎症そのものが治癒して

腸管狭窄やそれに引き続く瘻孔形成,あるいは膿

いても過敏性腸症候群の合併による腸管症状を合

瘍の合併といった器質的な障害をきたして機能障

併し QOL を低下させる原因になっている場合も

害に陥るケースがしばしばある.その結果腸管切

ある5).つまり画像モダリティーを用いた病態評

除が必要となり,さらに術後も低くない再手術率

価が必要となる.近年粘膜治癒が予後を改善する

が報告されており,腸管切除の反復は短腸症候

と考えられるようになったが,クローン病は全層

群,そして生命の維持すら脅かすことになりかね

性の炎症であるため粘膜の活動性のみでは全体像

ない3).この炎症から不可逆的な器質的障害,そ

の把握は不十分で,器質的障害である狭窄や瘻

1)東京医科歯科大学消化器内科,潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター Advances of magnetic resonance imaging in Crohn s disease Toshimitsu FUJII and Mamoru WATANABE1) 1)Department of Gastroenterology and Hepatology, Advanced Clinical Center for Inflammatory Bowel Diseases, Tokyo Medical and Dental University Corresponding author:藤井 俊光([email protected]) (15)

1252

日本消化器病学会雑誌

第112巻

第7号

Table 1. 腸管の器質的障害評価(Lémann score)において病変部位に対して推奨される モダリティー 上部消化管 内視鏡

病変部位 上部消化管 小腸 大腸,直腸 肛門

下部消化管 内視鏡

腹部 MRI MRE



○ ○ ○ ○



骨盤 MRI



腹部骨盤 CT/CTE ○ ○ ○ ○

Pariente B, et al. Inflamm Bowel Dis 2011 より.

孔,膿瘍などの評価も必要である.最近これらの

痛をともない,小腸追跡では苦痛はともなわない

器質的障害の評価法として Lémann score が開発

が微細な病変の指摘は困難である.また骨盤内回

された.そこでは,MRI を中心に各モダリティー

腸などでは造影の重なりにより観察が不十分とな

を組み合わせて上部消化管から肛門病変までを評

ることもある.バルーン内視鏡を含めた消化管内

2)

.その後 15 価するようになっている(Table 1)

視鏡は他のモダリティーに対する gold standard

カ 国 24 セ ン タ ー の 多 施 設 共 同 研 究 に て こ の

としての位置づけであり,生検も可能で狭窄部の

6)

score の妥当性が validate された . I

バルーン拡張術など,唯一治療にも応用可能であ

画像モダリティーの診断能とクローン病

る.しかし,小腸観察において鎮静は必須であり

患者における放射性被曝

一般的には入院が必要となることも少なくない.

これまでのクローン病の画像評価は X 線造影

また検査時に若干の放射線透視を用いることにな

や内視鏡が主に行われてきた.それに加え近年小

り,さらに癒着や狭窄などにより観察範囲の制限

腸を対象としたモダリティーはめざましい進化を

もともなう.カプセル内視鏡は非侵襲的かつ簡便

遂げており,小腸内視鏡,カプセル内視鏡,消化

で,診断能についてはメタアナリシスでも病変検

管超音波,さらに cross sectional imaging である

出能は MRI と同等と報告されている8).しかし狭

CT

enterography

窄の可能性が否定できない状況では安易に用いる

(MRE) ! MR enterocolonography(MREC)が開

ことはできない9).なお,クローン病は全層性の

発され,クローン病の画像診断は新時代への幕が

炎症であるため前述のように狭窄から瘻孔,膿瘍

開いた.特にクローン病の 40∼70% は小腸に病

といった腸管外病変を形成するが,内視鏡もカプ

変を有しており,小腸の活動性評価が重要である

セル内視鏡もそれ単体では腸管外病変の評価は困

のは疑いようがない7).画像モダリティーはそれ

難である.消化管超音波は非侵襲的で簡便でかつ

ぞれに一長一短があるが,多くはある程度の侵襲

安価であるが,検査施行者の技量に大きく依存す

をともなう検査である.疾患活動性モニタリング

るという欠点があり10),普及を困難にさせてい

は定期的に行うことが重要であり,治療を変更し

る.CT や MRI といった cross sectional imaging

た際の効果判定にも頻用することになる.若年に

は,透視検査における造影の重なりを避けること

好発するクローン病では長期に繰り返し行わなけ

ができ,さらに膿瘍や痔瘻など腸管外の情報を同

ればならず,また妊娠・出産を経る時期にもあた

時に得ることができるという他のモダリティーに

るため,より簡便でかつきわめて侵襲性が低く放

はない最大のメリットがあり11),潰瘍などの活動

射性被曝をともなわないモダリティーが最も適し

性炎症のみならず器質的障害の評価も可能であ

ている.これまで重要な位置を占めていた小腸透

る.そのため欧米のガイドラインで cross

視は放射性被曝が不可避であること,二重造影で

tional

は詳細な観察が可能であるがゾンデ挿入による苦

score においても中心的なモダリティーとして位

enterography(CTE),MR

(16)

sec-

imaging が 第 1 選 択 と さ れ12),Lémann

2015年 7 月

1253

置づけられている2).ただし,これらのモ ダ リ

のではなく,さらに新規の装置やソフトウェアも

ティーによる診断能についての研究は多数あるも

必要としないため導入が容易である.また造影剤

のの,個々の病変の検出能について gold standard

の副作用も CT と比べ少ないのも MRI の利点で

である小腸内視鏡と直接比較を行っている研究は

ある.このように MRE! MREC はクローン病の

きわめて少ないのが事実である.

腸管および腸管外のすべての病変の評価が可能

CT や X 線透視で避けられないのが放射性被曝

で,また苦痛や放射性被曝をともなわないため非

である.CT は約 16mSv と小腸透視の 5 倍の被

侵襲的であり,若年より反復して検査が必要なク

曝量となる.10mSv の被曝は 2000 人に 1 人の小

ローン病活動性モニタリングにおいて最適なモダ

13)

児癌リスクとなると報告されており ,またオー

リティーといえる.

ストラリアでの 1090 万人を対象とした研究でも

MRE! MREC の撮影法の実際であるが,腸管

未成年での被曝において CT 施行により発癌リス

の評価においては 1.5T 以上の MRI 装置が必要で

クが 1.24 倍となり,さらに線量反応関係がみら

ある.3T ではより高い解像度が得られるがアー

れ CT が 1 回追加される毎に発症率比が 0.16 上

チファクトの影響を受けやすく,特に腹部骨盤領

昇し,検査時の年齢が若年であるほど発症率比が

域では画像ムラの克服が課題となる.また 1 つの

14)

高い結果であった .炎症性腸疾患患者では増悪

シークエンスを一度に撮像するためには腹部から

時の CT 検査などにより他の疾患よりも過剰に被

骨盤,つまり横隔膜から肛門までを覆う 50cm 程

15)

曝している可能性も指摘されており ,若年から

度の受信コイルが必要となる.より短いコイルで

16)

の被曝をいかに避けるかが重要である .つま

も撮像は可能であるが,撮影範囲を 2 回に分割し

り,緊急時以外の活動性モニタリングや治療効果

て撮影するため約 2 倍の時間を要し,またアーチ

判定に用いるモダリティーでは放射性被曝を可能

ファクトの問題も発生する.

な限り回避する必要がある. II

撮影に先立って前処置が必要となる.CTE で

MRI の進化と MRE! MREC

も同様であるが,腸管壁の評価のためには何らか

MRI は組織分解能に優れるため,クローン病

の方法で消化管腔内を液体で満たし十分に拡張さ

において肛門病変や膿瘍などの評価に最も有用な

せる必要がある.拡張が不十分であると狭窄の判

検査として用いられてきたが,空間分解能は CT

定のみならず炎症性病変の特定も困難となる.ま

に劣っていた.しかし,近年 1.5T や 3T といっ

た MRI では管腔内に残存した空気が接する部位

た機器の進化により解像度が上昇し,さらに撮像

はアーチファクトが発生する可能性がある.小腸

時間もきわめて短縮され,現在ではシークエンス

に対しては十二指腸ゾンデを留置し経管的に注入

によっては 1 秒以内に撮影可能となっている.そ

する MR enteroclysis,ゾンデ留置なしに経口の

のため蠕動や呼吸の影響を最小限に抑えられるだ

みで投与する MR enterography があり,大腸に

けでなく,多数の異なるシークエンスを短時間に

おいては経口での前処置に注腸での注入を加える

まとめて行えるようになり,多角的な評価を可能

MR colonography,そしてわれわれが開発した経

としている.2000 年以降 MRI による腸管評価の

口投与のみで小腸大腸の同時評価を可能とした

研究が徐々に行われるようになり,現在では消化

MR enterocolonogrphy20),前処置なしで diffusion

管の高度な評価が可能となっている.MRI によ

のみで評価する方法などがある. 1.MR enteroclysis

るクローン病の診断能は感度 80∼85%,特異度 17)

89∼100% とされ ,消化管病変の検出能は CT

留置した十二指腸ゾンデより 1500∼2000ml の

と同等18)で,33 の study を対象としたメタアナリ

contrast agent solution を注入する.注入量とタ

シスでも MRI,CT,消化管超音波の感度・特異

イミングが確実であるため,空腸から回腸まで均

MREC の前処置 度に有意差はなかった19).MRE!

一に良好な拡張が得られる.経口投与による MR

のプロトコールは消化器病医にとっては特殊なも

enterography より微細な表層性病変や空腸病変 (17)

1254

日本消化器病学会雑誌

第112巻

第7号

の検出には優れ,ゾンデ留置による小腸 X 線透

シークエンスはメーカーによって呼称は異なる

視と同等とされるが,中等度以上の病変検出につ

もののそれぞれ概ね共通の設定である.使用する

いては MR entrography と差はない.ゾンデ留置

代表的なシークエンスは,1.Single-shot fast spin

の苦痛だけでなくその際の透視による放射性被曝

echo:FASE(Toshiba) ,SSFSE(GE) ,HASTE

も少ないながらともなうため,MRI というモダ

(Siemens),SSTSE(Philips),2.Steady-state

リティーの利点が減少している.活動性モニタリ

gradient echo:true SSFP(Toshiba),FIESTA

ングで反復して行うよりも診断時精査に適してい

(GE) ,true FISP(Siemens) ,bFFE(Philips) ,

る.

3.Fast spin echo:FSE(Toshiba,GE),TSE

2.MR enterography

( Siemens , Philips ) with

fat-saturation , 4 .

最も一般的に行われている方法である.ゾンデ

Diffusion-weighted EPI,5.3D Ultra fast gradient

留置は行わず 1350∼2000ml の経口投与にて腸管

echo:Quick 3Ds (Toshiba) ,SPGR-LAVA(GE) ,

拡張を行う.プロトコールにもよるが MRI 撮影

VIBE(Siemens) ,eTHRIVE(Philips)with fat-

60 分前に全量の polyethylene

(Table 2)などが挙げられる. saturation21)28)

glycol(PEG)を

III

内 服 す る.感 度 は 88∼98%,特 異 度 は 78∼ 17) 21) ∼23)

100%

で苦痛や被曝がないため,活動性モ

MRE! MREC の評価

活動性病変とし て は 消 化 管 壁 肥 厚(3mm 以

ニタリングに適している.

上) ,壁の増強効果,血管の増加などをとらえ,

3.MR colonography

同時に狭窄や瘻孔を検出する.T2 強調像である

腸管洗浄のため 1500ml の PEG を撮影 45 分前

Single-shot fast spin echo や,T2 強調類似の画像

に内服し,さらに経肛門バルーンカテーテルを留

が得られる Steady-state gradient echo は消化管

置し 1000∼2000ml の solution を逆行性に注入す

壁の描出が良好で,潰瘍などの活動性の炎症を壁

る.内視鏡との比較において大腸病変の感度 87∼

の不整として得ることができる(Figure 1) .ま

24)

89%,特異度 85∼100% であるが ,前処置を行

た 2S! 3D 高速 T1 強調像は,造影前後の撮像に

わず diffusion を用いて 58% の感度と 85% の特

て腸管壁の炎症やリンパ節などの増強効果を評価

異度が得られている報告もある25).潰瘍性大腸炎

し,活動性の炎症を検出する.造影後タイミング

においても有用(感度 87%,特異度 88%)であ

を変えての 2 相撮像を行う.軽度の炎症性病変は

26)

るとされる .

粘膜表層の造影効果にとどまるが,高度の炎症性

4.MR enterocolonography

病変や粘膜下層以深の浮腫はより強い造影効果や

それまで小腸または大腸いずれかしか評価でき

comb sign としてとらえられる28).また,壁肥厚

なかった MRI による消化管評価であるが,プロ

は腸管拡張が不十分な部位において疑陽性となり

トコールの改良により小腸大腸を同時に評価可能

得るため,cine-MRI や複数のシークエンスで確

な MREC が開発された.Magnesium citrate 200

認する.Single-shot fast spin echo の撮像時間は

ml を検査前日に経口投与,当日 MRI 撮影 60 分

約 1 秒であり,連続撮影により cine 表示が可能

前に PEG 1000ml を経口投与することで小腸と大

で腸管蠕動が評価できる.狭窄も拡張の程度ある

20)

腸を同時に拡張する .MRI について小腸内視鏡

いは蠕動による影響を受けるため,cine-MRI な

を gold

どで詳細な検討を行う.炎症性狭窄に対し線維性

standard とした唯一の検討が MREC に

て 報 告 さ れ て い る が,小 腸 炎 症 性 病 変 の 感 度

狭窄は T2 強調でより低信号となる(Figure 1)

82.4%,特異度 87.6%,大腸ではそれぞれ 82.8%,

ため,バルーン拡張の適応か,内科治療を優先す

93.2% であった27).当院での MREC シークエン

るかを決定するのに有用である可能性がある.瘻

スは SSFP,SSFP cine-MRI,FASE,T1WI,T1WI

孔などの穿通性病変は線状の高信号や低信号の索

dynamic

状物として描出され(Figure 2) ,cross sectional

3 相,DWI などを撮影し,検査時間は

患者の入れ替えを含めて 30 分以内である.

imaging である MRI が X 線透視より優れるとこ (18)

2015年 7 月

1255

Table 2. MRE/MREC に用いられるシークエンス Sequences Single-shot fast spin echo

(T2 weighted) FASE:fast advanced spin echo(Toshiba) SSFSE:single-shot fast spin-echo(GE) HASTE:half-Fourier acquisition single-shot fast spin-echo(Siemens) SSTSE:single shot turbo spin echo(Philips)

Steady-state gradient echo (axial & coronal) true SSFP:true steady-state free precession(Toshiba) FIESTA:fast imaging employing steady state acquisition(GE) true FISP:true fast imaging with steady-state precession(Siemens) true RARE:true rapid acquisition with relaxation enhancement(Siemens) bFFE:balanced fast field echo(Philips) Fast spin echo

Echo planar

(T2 weighted with fat-saturation) FSE:fast spin-echo(Toshiba, GE) TSE:turbo spin echo(Siemens, Philips) Diffusion-weighted EPI:echo planar imaging

3D Ultra fast gradient echo (pre and post Gadolinium contrast 3D with fat-saturation) Quick 3Ds:quick dimensional dynamic diagnostic scan(Toshiba) SPGR-LAVA:spoiled gradient recalled acquisition in the steady state - liver acquisition with volume acceleration(GE) VIBE:volumetric interpolated breath-hold examination(Siemens) eTHRIVE:enhanced T1 high resolution isotropic volume excitation(Philips)

ろである. IV

治癒を MaRIA<7 と定義することで感度 85%, 特異度 78% で評価できると報告された30).小腸

クローン病診療における応用

病変に対しても,小腸内視鏡による改変 simple

MRE! MREC の診断能あるいは病変検出能は これまで示してきたとおりであるが,診療の中に

endoscopic score for Crohn s disease(SES-CD)

取り込むことはできるであろうか.重症度を評価

と MaRIA がよく相関し,粘膜治癒の診断能は感

するために score の作成が試みられている.最も

度 87%,特異度 86% であった31).

validate されているものに magnetic

狭窄病変については最近 MRI 撮影後に切除と

resonance

index of activity(MaRIA)がある.

なった手術検体を対象として,造影効果と T2 高

MaRIA=1.5×wall thickness(mm)

信号の有無で混在する病理学的な線維化と炎症の 程度が評価できると報告されている32).今後内視

+0.02×relative contrast enhancement

鏡的バルーン拡張術の適応に対する指標の 1 つと

(RCE)

なる可能性がある.

+5×edema

クローン病の治療目標は臨床的寛解から血清学

+10×ulcers として定義され,下部消化管内視鏡による内視鏡

的寛解,そして内視鏡的粘膜治癒へと高度化して

的活動性とよく相関することが示されている29).

きた.それは粘膜治癒を達成することで再燃や手

また,抗 TNF-α 抗体製剤治療後の効果判定とし

術率が減少することが示されたからである.MRI

て有効であることが示され,さらに内視鏡的粘膜

は再燃予測としてのツール,さらにいえば新たな (19)

1256

日本消化器病学会雑誌

第112巻

第7号

Figure 1. 縦走潰瘍と線維性狭窄:小腸内視鏡で回腸に観察される縦走潰瘍(a)は MREC で非連続性の 壁肥厚と偏側性変形,腸間膜付着側の直線化として描出され増強効果を認める(b, c).遠位回腸の膜様狭 窄様の線維性狭窄(d)は増強効果のない狭窄(e)として認め,T2 強調でより低信号として認められる(f).

Figure 2. 回腸回腸瘻・回腸 S 状結腸瘻:小腸透視では回腸回腸瘻・回腸 S 状結腸瘻を認め(a), MREC でも回腸は一点で収束し,S 状結腸とも索状構造で連続して回腸回腸・回腸 S 状結腸瘻の複雑性瘻 孔であることがわかる(b, c).

治療目標となり得るだろうか.術後のクローン病

が重要であると示唆されている34).現在日本で当

において,MRE での腸管壁の肥厚や造影効果が

施設を中心に,臨床的寛解の MREC 活動性クロー

その後の再燃と強く関連したことが示されてい

ン病を対象に治療介入により再燃率の抑制が得ら

る33).さらに MREC で活動性を認めた群では臨

れるか多施設共同の無作為化比較試験が進行して

床的寛解でも有意に再燃,入院,手術を要し,血

い る(ClinicalTrials.gov:NCT02332356) .今 後

清学的寛解あるいは内視鏡的粘膜治癒であっても

さらに大規模なデータの蓄積が必要であるが,疾

有意に再燃することが報告され,MRI での寛解

患活動性モニタリングとして再燃予測に有用であ (20)

2015年 7 月

1257

るならば,MRI 寛解が治療目標となる時代が来

dictors of quality of life in coeliac disease and inflammatory bowel disease. Eur J Gastroenterol Hepatol 23 ; 159―165 : 2011 6)Pariente B, Mary JY, Danese S, et al : Development of the Lémann index to assess digestive tract damage in patients with Crohn s disease. Gastroenterology 148 ; 52―63.e3 : 2015 7)Travis SP, Stange EF, Lémann M, et al : European evidence based consensus on the diagnosis and management of Crohn s disease : current management. Gut 55 (suppl 1) ; i16―i35 : 2006 8)Dionisio PM, Gurudu SR, Leighton JA, et al: Capsule endoscopy has a significantly higher diagnostic yield in patients with suspected and established small-bowel Crohn s disease : a metaanalysis. Am J Gastroenterol 105 : 1240―1248 ; quiz 1249 : 2010 9)Cheifetz AS, Kornbluth AA, Legnani P, et al : The risk of retention of the capsule endoscope in patients with known or suspected Crohn s disease. Am J Gastroenterol 101 ; 2218―2222 : 2006 10)Fraquelli M, Colli A, Casazza G, et al : Role of US in detection of Crohn disease : meta-analysis. Radiology 236 ; 95―101 : 2005 11)Allen PB, De Cruz P, Lee WK, et al : Noninvasive imaging of the small bowel in Crohn s disease : the final frontier. Inflamm Bowel Dis 17 ; 1987― 1999 : 2011 12)Van Assche G, Dignass A, Panes J, et al : The second European evidence-based Consensus on the diagnosis and management of Crohn s disease : Definitions and diagnosis. J Crohns Colitis 4 ; 7― 27 : 2010 13)Brenner DJ, Hall EJ : Computed tomography--an increasing source of radiation exposure. N Engl J Med 357 ; 2277―2284 : 2007 14)Mathews JD, Forsythe AV, Brady Z, et al : Cancer risk in 680,000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence : data linkage study of 11 million Australians. BMJ 346 ; f2360 : 2013 15)Israeli E, Ying S, Henderson B, et al : The impact of abdominal computed tomography in a tertiary referral centre emergency department on the management of patients with inflammatory bowel disease. Aliment Pharmacol Ther 38 ; 513― 521 : 2013 16)Peloquin JM, Pardi DS, Sandborn WJ, et al : Diagnostic ionizing radiation exposure in a populationbased cohort of patients with inflammatory bowel disease. Am J Gastroenterol 103 ; 2015―2022 : 2008 17)Fiorino G, Bonifacio C, Malesci A, et al : MRI in

るかもしれない. おわりに 2013 年度の統計では本邦のクローン病患者数 はすでに約 4 万人を数え,より高い治療目標を目 指すのみならず,より患者に優しい診療を行う時 代となってきている.MRI はその有用性と非侵 襲性から欧米を中心にクローン病診療におけるモ ダリティーの第 1 選択として用いられるように なっている.内視鏡検査は,特に診断においては gold standard の位置はしばらくゆるがないであ ろう.しかしスクリーニングあるいは疾患活動性 モニタリングにおいては MRI が重要な位置を占 めつつある.MRI は多様なシークエンスを併用 することで腸管および腸管外の疾患すべての病変 の活動性を評価可能で,炎症あるいは器質的変化 の質も評価することができる.検査へのアクセス やコストの問題,なにより読影医が圧倒的に不足 しており,これらの課題をいかに解決するかが MRE! MREC の普及に重要な問題である. 本論文内容に関連する著者の利益相反 :なし 文



1)Rutgeerts P, Vermeire S, Van Assche G : Mucosal healing in inflammatory bowel disease : impossible ideal or therapeutic target? Gut 56 ; 453―455 : 2007 2)Pariente B, Cosnes J, Danese S, et al : Development of the Crohn s disease digestive damage score, the Lémann score. Inflamm Bowel Dis 17 ; 1415―1422 : 2011 3)Peyrin-Biroulet L, Loftus EV Jr, Colombel JF, et al : The natural history of adult Crohn s disease in population-based cohorts. Am J Gastroenterol 105 ; 289―297 : 2010 4)Landi B, Anh TN, Cortot A, et al : Endoscopic monitoring of Crohn s disease treatment : a prospective, randomized clinical trial. The Groupe d Etudes Therapeutiques des Affections Inflammatoires Digestives. Gastroenterology 102 ; 1647― 1653 : 1992 5)Barratt SM, Leeds JS, Robinson K, et al : Reflux and irritable bowel syndrome are negative pre(21)

1258

日本消化器病学会雑誌

Crohn s disease--current and future clinical applications. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 9 ; 23―31 : 2012 18)Fiorino G, Bonifacio C, Peyrin-Biroulet L, et al : Prospective comparison of computed tomography enterography and magnetic resonance enterography for assessment of disease activity and complications in ileocolonic Crohn s disease. Inflamm Bowel Dis 17 ; 1073―1080 : 2011 19)Horsthuis K, Bipat S, Bennink RJ, et al : Inflammatory bowel disease diagnosed with US, MR, scintigraphy, and CT : meta-analysis of prospective studies. Radiology 247 ; 64―79 : 2008 20)Hyun SB, Kitazume Y, Nagahori M, et al : Magnetic resonance enterocolonography is useful for simultaneous evaluation of small and large intestinal lesions in Crohn s disease. Inflamm Bowel Dis 17 ; 1063―1072 : 2011 21)Zimmermann EM, Al-Hawary MM : MRI of the small bowel in patients with Crohn s disease. Curr Opin Gastroenterol 27 ; 132―138 : 2011 22)Mazziotti S, Ascenti G, Scribano E, et al : Guide to magnetic resonance in Crohn s disease : from common findings to the more rare complicances. Inflamm Bowel Dis 17 ; 1209―1222 : 2011 23)Masselli G, Gualdi G : MR imaging of the small bowel. Radiology 264 ; 333―348 : 2012 24)Rimola J, Rodriguez S, García-Bosch O, et al : Magnetic resonance for assessment of disease activity and severity in ileocolonic Crohn s disease. Gut 58 ; 1113―1120 : 2009 25)Oussalah A, Laurent V, Bruot O, et al : Diffusionweighted magnetic resonance without bowel preparation for detecting colonic inflammation in inflammatory bowel disease. Gut 59 ; 1056―1065 : 2010 26)Ordás I, Rimola J, García-Bosch O, et al : Diagnostic accuracy of magnetic resonance colonography for the evaluation of disease activity and severity in ulcerative colitis : a prospective study. Gut 62 ; 1566―1572 : 2013

第112巻

第7号

27)Takenaka K, Ohtsuka K, Kitazume Y, et al : Comparison of magnetic resonance and balloon enteroscopic examination of the small intestine in patients with Crohn s disease. Gastroenterology 147 ; 334―342.e3 : 2014 28)Fujii T, Naganuma M, Kitazume Y, et al : Advancing magnetic resonance imaging in Crohn s disease. Digestion 89 ; 24―30 : 2014 29)Rimola J, Ordás I, Rodriguez S, et al : Magnetic resonance imaging for evaluation of Crohn s disease : validation of parameters of severity and quantitative index of activity. Inflamm Bowel Dis 17 ; 1759―1768 : 2011 30)Ordás I, Rimola J, Rodríguez S, et al : Accuracy of magnetic resonance enterography in assessing response to therapy and mucosal healing in patients with Crohn s disease. Gastroenterology 146 ; 374―382.e1 : 2014 31)Takenaka K, Ohtsuka K, Kitazume Y, et al : Correlation of the endoscopic and magnetic resonance scoring systems in the deep small intestine in Crohn s disease. Inflamm Bowel Dis (in press) 32)Rimola J, Planell N, Rodríguez S, et al : Characterization of inflammation and fibrosis in Crohn s disease lesions by magnetic resonance imaging. Am J Gastroenterol 110 ; 432―440 : 2015 33)Koilakou S, Sailer J, Peloschek P, et al : Endoscopy and MR enteroclysis : equivalent tools in predicting clinical recurrence in patients with Crohn s disease after ileocolic resection. Inflamm Bowel Dis 16 ; 198―203 : 2010 34)Fujii T, Naganuma M, Kitazume Y, et al : MR enterocolonography is useful to predict clinical recurrence of Crohn s disease and identify patients who need more aggressive treatment. DDW2013, #556 : 2013 !論文受領,2015 年 4 月 6 日" # # 受理,2015 年 4 月 13 日% $

(22)

[Advances of magnetic resonance imaging in Crohn's disease].

[Advances of magnetic resonance imaging in Crohn's disease]. - PDF Download Free
589KB Sizes 14 Downloads 12 Views