Jpn. J. Clin. Immunol., 37(6)437~446(2014)Ⓒ 2014 The Japan Society for Clinical Immunology

437

総  説

慢性肉芽腫症の病態と新たな治療法の開発 河合利尚

A therapeutic approach towards chronic granulomatous disease Toshinao Kawai Department of Human Genetics, National Center for Child Health and Development (Accepted September 2, 2014) summary Chronic granulomatous disease (CGD) is a primary immunodeficiency (PID) characterized by the inability of phagocytes to produce reactive oxygen intermediates (ROIs) due to a defect in the NADPH oxidase complex. Recent studies have revealed that ROIs are involved in inflammatory signaling in phagocytes, illuminating the underlying mechanisms of hyper-inflamma­ tion in CGD. CGD patients frequently suffer from CGD-associated bowel inflammation, granuloma, and life-threatening infections. Based on the discovery of the regulatory function of ROIs in the immune response, therapeutic methods for excessive inflammation focusing on inflammatory cytokines are being developed for CGD. Although hematopoietic stem cell (HSC) transplantation (HSCT) is a curative therapy for CGD, successful transplants greatly depend on HSC source selection and the degree of matching of potential donors. Gene therapy trials for PID have been performed on over 120 patients with no HLA identical donor for HSCT, and have demonstrated clinical benefits. Genotoxicity in HSC gene therapy trials has expanded our knowledge on the mechanisms of vector-associated clonal expansion of gene-modified cells, which will advance gene therapy development using self-inactivating retrovirus and lentivirus vectors. We will discuss the complications of HSCT for CGD. We will then outline the status of gene therapy approaches in the treatment of CGD. Key words    primary immunodeficiency; chronic granulomatous disease; gene therapy; reactive oxygen intermediates; thalidomide 抄  録 慢性肉芽腫症は,活性酸素産生障害により易感染性や肉芽腫をきたす原発性免疫不全症として知られている.近 年,NADPH oxidase 複合体で生成される活性酸素の多岐にわたる生理作用が明らかになり,本疾患では肉芽腫形成 に代表される過剰炎症の病態の理解に繫がった.現在,過剰炎症の中心的役割を果たしている炎症性サイトカイン を標的とした治療の開発が試みられている.モノクローナル抗体を用いた抗サイトカイン療法の安全性には課題が 残されたが,今後も,細胞内シグナルの制御など分子免疫学の知見に基づいた治療法が検討されることになる.ま た,唯一の根治療法である造血幹細胞移植は,移植技術の進歩により治療成績が向上したが,HLA 適合ドナーの 存在が不可欠である.遺伝子治療は自己造血幹細胞を使用するため,欧米を中心にドナー不在の症例に対して臨床 応用が拡大し,既に 120 例を超える原発性免疫不全症で行われた.この背景には,重篤な有害事象である遺伝毒性 の機序が少しずつ明らかになり,遺伝子治療技術へ反映されていることもあげられる.今後,多施設国際共同臨床 試験により大規模な臨床研究も準備されている.

はじめに 食細胞の機能・数の異常症は,原発性免疫不全症

を構成する gp91

phox

, p22phox, p47phox, p67phox, p40phox の

いずれかの異常により活性酸素種(reactive oxygen intermediates (ROIs); H2O2, O2−, OH−, OCl−)を産生す

(primary immunodeficiency; PID)の約 20%を占める.

る殺菌機構が機能せず,乳児期から重篤な細菌や真

慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease; CGD)

菌感染症を反復する .特に,非 H2O2 産生性 catalase

はその中で最も多い疾患であり,発生頻度は 1 人/

陽性菌を殺菌できないため,しばしば重篤な感染症

22 万人である.本疾患は,NADPH oxidase 複合体

の原因となる.

1)

また,肉芽腫性の慢性腸炎(CGD 腸炎)をはじ 国立成育医療研究センター成育遺伝研究部

め,肉芽腫は全身の様々な組織で形成される.これ

日本臨床免疫学会会誌(Vol. 37 No. 6)

438

は免疫応答の制御異常による過剰炎症と考えられ, その機序に関する検討が進められている.そこで, 本疾患の病型と易感染性に関する新たな知見ととも に,CGD でみられる過剰炎症の特徴についてまと める.さらに,CGD 腸炎に対する新たな治療の取 り組みや,造血幹細胞移植と共に根治療法として期 待される遺伝子治療について国内外の現状について 述べる. NADPH oxidase と易感染性

表 1  慢性肉芽腫症の病型分類と発生頻度 分子名

遺伝子名

gp91phox p22phox p47phox p67phox p40phox

CYBB CYBA NCF1 NCF2 NCF4

発生頻度 Kuhns ら2)

布井

65% < 5% 30% < 5% 2例

78.10% 9.20% 6.00% 6.60% −

3)

結 合 ド メ イ ン ) の missense 変 異 よ り も 約 10 倍 の

病 原 体 が 生 体 内 へ 侵 入 す る と, 細 胞 質 蛋 白 の

570 番アミノ酸部分の missense 変異は gp91phox 蛋白

と NADPH oxidase 複合体を形成し,phagosome 内や

の発現にはほとんど影響しないが,NADPH oxidase

細胞外へ ROIs が産生され殺菌作用を示す(図 1 ) .

活性を著しく低下するため ,重篤な感染症に罹患

CGD は,障害される NADPH oxidase 複合体の分子

するリスクが高いと推測される.また,CYBB 遺伝

によって, 5 つの病型に分類される(表 1 ).病型

子 の deletion,frameshift,nonsense 変 異,splice 異

別では,gp91

蛋白をコードする CYBB 遺伝子の

ROIs 産生能は残存せず予後は不良であった 常では,

変異によっておこる X 連鎖 CGD が全体の約 65−78

(図 2 ).一方,NCF1 遺伝子の変異は 59 例中 49 例

%を占める.海外では NCF1 遺伝子変異は 30%に

が c.75_76delGT で,CYBB 遺 伝 子 の 1−309 番 ア ミ

みられるが ,国内では NCF1 遺伝子の変異は諸外

ノ酸 missense 変異と同様に ROIs 産生能が残存して

国に比べ少ない (表 1 ) .NCF4 遺伝子の変異は海

おり,臨床的にも生存率は高い傾向があった.しか

外で 2 例の報告があり,易感染性は軽度であったが

し,同じ遺伝子変異でも ROIs 産生能が異なる症例

重篤な CGD 腸炎のため造血幹細胞移植が行われた.

もあることから,遺伝子変異だけでなくエピジェネ

CGD では全ての病型で NADPH oxidase 活性は障

ティックな要因や遺伝子修飾なども ROIs 産生能の

p47

phox

, p67

, Rac が膜蛋白の gp91

ROIs 産生能が残存した(His222 変異を除く).310−

phox

phox

phox

, p40

phox

phox

, p22

2)

3)

害されるが,わずかに残存する ROIs 産生能によっ て易感染性の重症度が異なる .米国 National Insti2)

tutes of health(NIH) の CGD 症 例 287 例 の 検 討 で

4)

残存へ影響することが推測される. 炎症の制御異常による過剰炎症

は,CYBB 遺伝子の 1−309 番アミノ酸をコードする

CGD の約 70%は過剰炎症による肉芽腫症状を呈

遺伝子の missense 変異は 310−570 番アミノ酸(flavin

し,主に消化管(88.2%),肺(26.4%),尿生殖器

adeninedinucleotide(FAD)結合ドメイン,NADPH

(17.6%)に形成される . 5)

図 1  NADPH oxidase 活性化による ROIs 産生 phox phox phox phox phox 食細胞に発現する NADPH Oxidase 複合体は,細胞質蛋白(p47 ,p67 ,p40 ,Rac)と膜蛋白(gp91 ,p22 )で構成 − される.病原体の侵入刺激により,膜蛋白へ細胞質蛋白が移動し phagosome 内や細胞外へ O2 を放出する.その結果,さらに活 − − 性の高い H2O2,OH ,OCl などの ROIs が誘導され強い殺菌作用を示す.

河合・慢性肉芽腫症の病態と新たな治療法の開発

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症状,血液炎症反応(CRP,ESR),血清アルブミン, 内視鏡所見によって評価されることが多い .腸管 7)

の病理所見では泡沫状組織球の集簇は特異性が高 い . 8)

当科では,感染症に影響されず下部消化管症状を スコア化した pediatric ulcerative colitis activity index (PUCAI; 小児潰瘍性大腸炎の非侵襲的な腸炎活動 性スコア)を用いて,臨床症状の客観的な評価を 9) 行った .CGD 腸炎を合併した X 連鎖 CGD の 35 例

中 11 例(31.4%)では(発症年齢 7.0±5.3 歳),発 図 2  CYBB 遺伝子にコードされる gp91 蛋白の構造 gp91phox 蛋白は 6 つの膜貫通領域と C 末端の FAD 結合ド メインと NADPH 結合ドメインで形成される.1−309 番アミ ノ酸をコードする遺伝子の missense 変異は,FAD 結合ドメ インや NADPH 結合ドメインを有する 310−570 番アミノ酸の missense 変異よりも ROIs 産生能は残存する(His222 変異を 除く). phox

症年齢が 8 歳未満の症例は中等度以上の腸炎活動性 を示した.特に,重症に分類された 3 例中 2 例は難 治性 CGD 腸炎のため造血幹細胞移植を必要とした (図 3 ). 2. 肉芽腫性間質性肺炎 吸入刺激により肺で過剰炎症をきたす症例が報告

1. CGD 腸炎 CGD 腸炎は,以下の肥厚型と肉芽腫性腸炎型が みられる



6, 7)

(a)肥厚型 CGD 腸炎 腸管壁に肉芽腫が形成され,腸管壁の肥厚による 狭窄もみられる. (b)肉芽腫性腸炎型 CGD 腸炎

されており ,当科でも X 連鎖 CGD の 35 例中 4 例 10)

(11.2 %) に 肉 芽 腫 性 間 質 性 肺 炎 を 認 め た.CGD 腸炎と同様に各種培養検査は陰性であるが,血清 KL-6 は高値で,病理所見では均一な大きさの微小 肉芽腫を肺間質組織に認めた .しかし,CGD で 11)

は病原体も過剰炎症の誘因になり得るため,臨床的 に感染症を鑑別することは困難である.

炎症細胞浸潤を主体とする慢性腸炎で,炎症性腸 疾患に類似した症状を呈する.疾患活動性は,臨床

図 3  CGD 腸炎発症年齢と PUCAI 感染症に影響されずに下部消化管の炎症をスコア化する PUCAI を CGD 腸炎の 11 例について検討した.発症年齢 が 8 歳未満の症例の腸炎活動性は中等度以上であり,重症の 3 例中 2 例は難治性のため造血幹細胞移植を行った.

日本臨床免疫学会会誌(Vol. 37 No. 6)

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3. CGD における過剰炎症のメカニズム

改善がみられたが, 2 例が複数の病原体による敗

食細胞は貪食した病原体を殺菌できず持続的に活

血症のため致死的経過をとった .これにより,

性化されるため肉芽腫が形成されると考えられてき

TNFα が CGD 腸炎の病態に深く関与することが明

たが,近年,ROIs 産生障害による炎症の制御異常

らかになったが,TNFα の生体防御機構における重

も明らかになった.

要性も再認識された.

(a)細胞内炎症シグナルの制御異常

17)

サリドマイド製剤は多発性骨髄腫に対する希少疾

真菌成分である β(1–3)(1–6)-glucan は Dectin-1 受

病用医薬品であるが,近年,小児クローン病,サル

容体へ結合すると,Src と Syk kinase が活性化し,

コイドーシス,ベーチェット病など TNFα を介する

下 流 の NF-κB,MAPK,NLRP3 inflammasome を 介

難治性炎症疾患でも有効性が示された.CGD では,

して TNFα,IL-6,IL-1β などの炎症性サイトカイン

過剰炎症による肉芽腫性腸炎,肺肉芽腫,皮下肉芽

が産生される.ROIs はこの経路へ抑制的に作用す

腫,肝肉芽腫などに対して国内外で合計 12 例にサ

るため,CGD ではシグナルの活性化が持続し過剰

リドマイド治療が行われ,10 例で病変の縮小と抗

炎症をきたす

炎症効果がみられた

.実際に,細菌や真菌の構成蛋白

12, 13)

.サリドマイドは,TNF 受

9, 18)

(lipopolysaccharide と β-glucan)の吸入刺激だけで,

容体を介した NF-κB 活性化シグナル経路を阻害し

CGD モデルマウスは肉芽腫性間質性肺炎をきたし

炎症性サイトカインの作用を抑制するが,toll-like

た .CGD 症例でも,抗原の吸入により類似した

receptor(TLR)4 を介したシグナルは阻害しない19).

臨床経過を示した報告が散見される .

著者らの検討から,CGD の末梢血単球でもサリド

12)

10)

(b)apoptosis 細胞の除去障害

マイドの同様の薬理作用が示された .そのため, 9)

ROIs は apoptosis 細 胞 の 膜 表 面 に phosphatidylserine(PS)を表出する作用をもち,食細胞による

従来の治療と異なり感染防御に関わる免疫応答を維 持しながら免疫調節作用を示す可能性がある.

apoptosis 細胞の貪食を誘導する.CGD では PS 受

根治療法

容体を介した apoptosis 細胞の除去作用が低下する 14) ため ,死細胞が崩壊し damage-associated molecular

現時点で,CGD では造血幹細胞移植が唯一の根

patterns(DAMPs)が放出される.DAMPs は NLRP3

治療法である.1985−2000 年にかけて,欧州で骨髄

inflammasome を介して炎症性サイトカインの産生

破壊的前処置による HLA 一致血縁者間の造血幹細

を誘導するため,炎症が惹起される.

胞移植が行われ,生存率は 85%,event-free 生存率

(c)autophagy の障害

は 81%であった .その後の 10 年間で,骨髄破壊 20)

autophagy は,細胞内の蛋白や細胞内に侵入した

的前処置による移植は 14 歳未満の小児を中心にさ

病原体を autophagosome 内で分解し生体の恒常性

らに発展し,HLA 一致非血縁ドナーや非血縁臍帯

を維持する機構であり,感染症や様々な炎症の抑

血ドナーからの移植も行われるようになった

止にも寄与する.CGD では,microtubule-associated

しかし,14 歳以上の症例や,移植時に難治性感染

protein 1 light chain 3(MAP1LC3) の phagosome へ

症や過剰炎症を合併した症例では,死亡率が 28−50

の誘導が低下するために autophagy が障害され,

%と移植関連のリスクが高い.そこで,難治性感染

inflammasome の活性化が持続する .

症や過剰炎症をきたした症例あるいは 14 歳以上の

15)



21, 22)

症例の 56 例に対して,毒性を軽減した骨髄非破壊 4. 過剰炎症に対する治療 CGD 腸炎ではステロイド,5-アミノサリチル酸 製 剤, 免 疫 抑 制 剤(azathioprine,cyclosporine) が

的前処置の検討が行われ,grade III 以上の移植片対 宿主病(graft-versus-host disease; GVHD)は 4 %,拒 絶は 5 %,生存率は 96%と有効性が示された



20, 23)

用いられる.難治例では造血幹細胞移植も行われる

既報告および自験例から,国内ではこれまで骨髄

が,CGD 腸炎によりリンパ球や単球の活性が高い

ドナー36 例,末梢血幹細胞ドナー 9 例,臍帯血ド

と拒絶のリスクになる .

ナー13 例からの造血幹細胞移植が CGD で実施され

16)

炎症性腸疾患と同様に CGD 腸炎では炎症性サイ

た.HLA 一致ドナーによる骨髄移植は,生存率 93

トカインが関与しており,米国 NIH で CGD 腸炎の

%と海外と同様の結果が得られており,CGD の根

5 例に抗 tumor necrosis factor(TNF)α 治療(Inflix-

治療法として HLA 一致ドナーによる骨髄移植の有

imab)が行われた.全例で瘻孔の閉鎖や腹部症状の

用性は高い.HLA 不一致ドナー(HLA5/6 一致ド

河合・慢性肉芽腫症の病態と新たな治療法の開発

441

ナー,HLA4/6 一致ドナー)による骨髄移植は,症

導入することで治療効果が得られる.遺伝子治療

例数が少なく評価は難しいが,海外での報告と同様

は,ベクターを生体へ直接投与し生体内で治療遺伝

に event-free 生存率が低下し GVHD や拒絶の頻度は

子を導入する in vivo 遺伝子治療と,標的細胞を採

上昇した(図 4 ) .CGD に対する造血幹細胞移植で

取し生体外で遺伝子を導入し患者へ戻す ex vivo 遺

は,実施年齢,前処置の選択,GVHD 治療,潜在

伝子治療の 2 つに大別される.PID の遺伝子治療で

する感染症,過剰炎症など治療成績へ影響する因子

は,治療効果を長期にわたり維持するために,造血

は複雑であるが,HLA 一致ドナーの不在は大きな

幹細胞へ効率的に遺伝子導入できるベクターが用い

障害となる.

られる.現在,PID ではレトロウイルスやレンチウ 遺伝子治療

イルスベクターを用いた ex vivo 遺伝子治療が行わ れている.

遺伝子治療は,HLA 一致ドナーが不在の CGD 症

PID に対する造血幹細胞を標的とした遺伝子治

例の根治療法として期待される先進医療である.

療 は,1995 年 に adenosine deaminase(ADA) 欠 損

PID の遺伝子治療では自己造血幹細胞を用いるため,

症,1997 年に CGD で行われた.しかし,ex vivo で

HLA 一致ドナーの有無に制限されず,GVHD を発

の効率的な遺伝子導入にもかかわらず,末梢血の遺

症することもない.遺伝子治療は長期の治療成績や

伝子導入細胞はそれぞれ 2 − 5%,0.004−0.05%と十

安全性など未だ研究段階ではあるが,将来的にこれ

分な治療効果が得られなかった

らの課題が軽減されれば,PID に対する治療の選択

年に ADA 欠損症の遺伝子治療で busulfan が導入さ

肢が増えることに繫がる.

れ,末梢血の遺伝子導入細胞は 50−90%と著しい改

.その後,2000

24, 25)

善がみられた.これにより,自己造血幹細胞でも骨 1. 原発性免疫不全症における遺伝子治療 CGD など PID の多くは,単一遺伝子の変異によっ

髄間隙(niche)を確保するための前処置の必要性が 明らかとなり,以降の PID 遺伝子治療では busulfan,

ておこる遺伝性疾患である.そのため,疾患関連遺

melphalan,fludarabine などによる前処置が取り入

伝子が発現する細胞へ正常遺伝子(治療遺伝子)を

れられた.2014 年までに PID では,ADA 欠損症の 52 例,X 連鎖重症複合免疫不全症(X-linked severe combined immunodeficiency; SCID-X1) の 32 例, Wiskott-Aldrich 症候群(WAS)の 20 例,CGD の 20 例に対して遺伝子治療が実施され,治療の有用性が 報告された(表 2 ). 2. 遺伝子治療における有害事象;   遺伝毒性(genotoxicity) レトロウイルスやレンチウイルスベクターは,染 色体へ組み込まれることで長期に安定して治療遺伝 子を発現する.しかし,染色体への遺伝子導入は, 同時に生物の遺伝情報に大きな変化をもたらす危険 性を伴う.PID の遺伝子治療において重篤な有害事 象の一つは,ウイルスベクターの遺伝子導入によっ て引き起される細胞の腫瘍化(遺伝毒性)である. レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療では, SCID-X1 の 23 例中 5 例(T 細胞性白血病)26),WAS の 10 例中 6 例(T 細胞性白血病)と 3 例(骨髄性

図 4  慢性肉芽腫症に対する国内骨髄移植の既報告および 自験例 HLA6/6 適合ドナーからの骨髄移植では,event-free 生存 率(斜線)は 70%,GVHD(灰色)は 23%,拒絶(黒色) は 0 %であった. NCCHD: 成育医療研究センター

白血病; 2 例は T 細胞性白血病寛解後に発症) , 27)

CGD の 13 例中 3 例に骨髄異形成28, 29)が発生した. これらの報告から,レトロウイルスベクターの特性 と遺伝毒性の発生メカニズムが明らかとなった.

日本臨床免疫学会会誌(Vol. 37 No. 6)

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表 2  リンパ系の免疫不全症に対する遺伝子治療 疾患

ADA 欠損症

SCID-X1

WAS

国名

症例数

ベクター

前処置

臨床効果

遺伝毒性

イタリア

18

G1ADA1

Busulfan 4mg/kg

改善あり(18 例) ERT 中止(15 例)

なし

アメリカ

16

GCsapMADA1 MNDADA

Busulfan 4mg/kg

改善あり(16 例) ERT 中止(12 例)

なし

イギリス

8

SFada/W

または Melphalan

改善あり( 8 例) ERT 中止( 4 例)

なし

日本

2

GCsapMADA

なし

部分的な改善あり( 2 例)

なし

イギリス アメリカ

8

Lentivirus

改善あり( 7 例)

なし

フランス イギリス

20

MFG

なし

改善あり(16 例)

T-ALL( 5 例)

アメリカ

3

MFG

なし

改善あり( 3 例)

なし

フランス イギリス アメリカ

9

SIN retrovirus

なし

改善あり( 6 例)

なし

ドイツ

10

SFG-WASp

Busulfan 8mg/kg

改善あり(10 例)

T-ALL( 6 例) AML( 3 例)

フランス イギリス アメリカ

4

Lentivirus

Busulfan + Cyclosporin+/− ATG

検討中

なし

イタリア

6

Lentivirus

Busulfan + Cyclosporin+/− ATG

改善あり( 6 例)

なし

Busulfan 4mg/kg

Busulfan 4mg/kg または Melphalan

ERT, Enzyme Replacement Therapy

(a) transcription start sites(TSS)近傍へのセミラン

し,細胞分裂過程の正常な中心体複製を妨げること でクローナルな細胞増殖をきたした.さらに,それ

ダムな挿入 PID の遺伝子治療で用いられるレトロウイルスベ クターは,murine leukemia virus(MLVs)に由来す るベクターで,5' と 3' 末端 long terminal repeat(LTR)

は骨髄異形成に繫がるゲノム遺伝子の不安定性と第 7 染色体 monosomy の原因となった29). (c)原疾患の遺伝的背景

の enhancer/promoter によってベクター内の治療遺伝

SCID-X1,ADA 欠損症,WAS の 3 疾患では,疾

子を発現する.レトロウイルスはがん関連遺伝子の

患の原因遺伝子がリンパ系細胞の分化/成熟に関与

TSS 近 傍 に common integration sites(CISs) が 存 在

するため,治療遺伝子が導入された細胞は増殖優位

し,特に T 細胞白血病をきたした SCID-X1 症例で

性を獲得する.このような疾患では,ベクターの挿

は LMO-2 遺伝子,骨髄性白血病をきたした WAS 症

入により LMO-2 遺伝子などがん関連遺伝子の制御

例では MDS-1 遺伝子の近傍にある CISs にベクター

異常が生じるとリンパ球のクローナルな増殖に繫が

27)

が挿入され,クローナルな細胞増殖に繫がった .

る.ところが,興味深いことに ADA 欠損症でもレ

(b)強力な enhancer による近傍遺伝子の調節異常

トロウイルスベクターの LMO-2 遺伝子近傍への挿

LMO-2 遺伝子は造血幹細胞の分化とともに silenc-

入が確認されているが,これまで遺伝毒性をきたし

ing により発現が低下するが,SCID-X1 の白血病発

た症例は報告されていない.つまり,遺伝毒性はベ

症例ではベクター LTR の enhancer によって LMO-2

クターの挿入という単独の事象だけでなく,疾患特

遺伝子の不活化が阻害されクローナルな細胞増殖を

異性を含む複数の要因が重なって発症すると考えら

きたした .また,欧州の CGD 遺伝子治療では,

れる.

30)

spleen focus-forming virus(SFFV)ベクター LTR の enhancer が近傍の MDS-1 遺伝子を強制的に活性化

河合・慢性肉芽腫症の病態と新たな治療法の開発

443

表 3  慢性肉芽腫症に対する遺伝子治療 国名

症例数

ベクター

前処置

アメリカ

3

MFGSgp91

Busulfan 10mg/kg

ドイツ

2

SFFVgp91

Busulfan 8.8mg/kg

スイス

2 1

SFFVgp91

3

MFGSgp91

韓国

2

MT-gp91

日本

1

MFGSgp91

フランス イギリス アメリカ

2

Lentivirus

イギリス

臨床効果

遺伝毒性

既存感染症の改善あり ( 3 例) 限定的な長期的効果あり( 1 例)

なし

既存感染症の改善あり ( 2 例) 限定的な長期的効果あり( 2 例)

2 例 MDS

既存感染症の改善あり

( 2 例)

1 例 MDS

Melphalan 140mg/m2

既存感染症の改善あり

( 4 例)

なし

Busulfan 6.4mg/kg Fludarabine 120mg/m2

既存感染症の改善あり

( 2 例)

なし

Busulfan 10mg/kg

検討中

検討中

Busulfan 12−16mg/kg

検討中

なし

3. CGD に対する遺伝子治療

かな活性酸素産生能でも臨床的に易感染性が軽減さ

遺伝子治療は,骨髄前処置が導入される前の 1997 年に米国 NIH で p47

phox

欠損型 CGD へ ,2003 年以 24)

降は前処置が導入され,欧米と韓国で X 連鎖 CGD に対して実施された.これまで,SFFV と moloney murine leukemia virus(MoMLV)に由来する 3 つの レトロウイルスベクターが使用された(表 3 ).

れることから ,末梢血の遺伝子導入効率に関わら 2)

ず一定の活性酸素産生能が維持されることで,遺伝 子治療の効果が持続すると考えられる. (c)CGD 遺伝子治療の安全性(遺伝毒性) CGD の遺伝子治療では,SFFV ベクターを用いた 3 例で骨髄異形成が発生した.そのため,遺伝毒性

(a)遺伝子治療の効果

の原因として SFFV ベクターの特性である高い LTR

2003 年に SFFV ベクターを用いた遺伝子治療が実

転写活性(MFG ベクターの数十倍)の関与が示唆

施され, 1 年後,末梢血では 10−57%の遺伝子導入

された.MFGS ベクターは,ウイルスのコア構造

細胞が確認され,肝膿瘍などの感染症も軽快した .

タンパクをコードする gag 配列の一部に変異を挿入

また,2006 年に米国 NIH では MFGS ベクターを用

し,遺伝子組換え率の低下と免疫原性の軽減により

いて行われ,治療 2 − 3 週後に末梢血の遺伝子導入

安全性の向上が図られている(図 5 a–c).

28)

細胞は 4 −26%で臨床的にも感染症は軽快したが, 5 年後の遺伝子導入細胞は 0.03−0.6%であった31).

4. 新たなベクターの開発

CGD は 40 歳までに約半数が死に至る予後不良な

造血幹細胞への ex vivo 遺伝子導入操作では,造

疾 患 で あり , 予 後 を 改 善 す る た め に は 活 性 酸

血幹細胞の stemness を維持しながら染色体の安全

素を産生する好中球が 10%以上必要とされる .

な部位へ効率良く遺伝子を挿入することが理想とな

NIH の症例は治療から 8 年が経過し末梢血の遺伝子

る.欧米では新たなウイルスベクターが臨床応用さ

導入細胞は 1%以下で,CGD による易感染性は改

れ,検討が開始された.

32)

33)

善していない.しかし,治療前の様に重篤な感染症

SCID-X1 では T 細胞白血病の発症を避けるため,

を繰り返すことはないため,十分ではないものの易

レ ト ロ ウ イ ル ス LTR の enhancer を 除 去 し た self-

感染性に対する遺伝子治療の長期的な効果が示唆さ

inactivating(SIN)レトロウイルスベクターが開発

れる.

され(図 5 d),これまで白血病は発生していない.

(b)遺伝子治療における疾患特異性 SCID-X1 や ADA 欠損症などリンパ系の PID と異

しかし,遺伝子発現効率が低い傾向もみられ,感染 効率や promoter 活性の改良が必要と思われる.

なり,CGD の CYBB 遺伝子は食細胞の分化や成熟

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のレンチウイ

過程に関与しないため,遺伝子導入により増殖優位

ルスベクターは ADA 欠損症の 8 例,WAS の 10 例,

性を獲得することはない.しかし,CGD ではわず

X-CGD の 2 例で使用された.レンチウイルスベク

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図 5  原発性免疫不全症の遺伝子治療で使用されるウイルスベクター −(c)は,レトロウイルスベクター LTR の enhancer と promoter を使用して治療遺伝子の発現を行う.(a)SCID-X1 で使用さ (a) れた MFG ベクター.(b)NIH と日本の X 連鎖 CGD では,gag 配列の 3 カ所に stop codon と 1 カ所に linker を挿入した MFGS ベ クターが使用された.(c)欧州の X 連鎖 CGD で使用された SFFV ベクター. (d)SCID-X1 では,LTR から enhancer を除去した self-inactivating(SIN)レトロウイルスベクターが使用された.(e)欧米の WAS では WASP 遺伝子の promoter を挿入したレンチ ウイルスベクターが使用された. LTR, Long-terminal repeat; ψ, packaging signal recognition sequence; SD, splice donor site; SA, splice acceptor site; EFS, elongation factor-1 short promoter; WASp1.6, WAS 遺伝子の promoter

ターには,TSS から比較的離れた部位へセミランダ

CGD に対する遺伝子治療は,国立成育医療研究

ムに挿入されるため近傍の遺伝子へ影響し難い,ex

センターを中心に国内外の専門家とともに臨床研究

vivo 遺伝子導入に必要な培養期間が短いため造血幹

の準備が進められた.2012 年に『慢性肉芽腫症に

細胞の stemness を維持し易いなどの利点がある.

対する造血幹細胞を標的とした遺伝子治療臨床研

また,レンチウイルスベクターの LTR は不活化さ

究』が厚生労働省で承認され,2014 年に国内で初

れており,目的によって promoter を選択できる.

めて busulfan による骨髄前処置を取り入れた遺伝子

WAS では生理的な発現を期待して WASP 遺伝子の

治療を X 連鎖 CGD 症例で行った(表 3 ).本臨床

内部 promoter が用いられ,レトロウイルスベクター

研究は米国 NIH との共同研究であり,今後も,欧

で 70%に発生した遺伝毒性は,本ベクターでは一

米との国際共同臨床試験として他の PID でも遺伝

例も報告されていない(図 5 e) .CGD では治療遺

子治療を開始する準備をすすめている.

伝子を強力に発現するために,elongation factor-1α

最 後 に

(EF1α)short promoter が用いられ,現在も検討が進 められている.

CGD の過剰炎症では炎症性サイトカインが治療 の標的となるが,遺伝的背景による易感染性のため

5. 国内における PID の遺伝子治療 我国の PID に対する造血幹細胞遺伝子治療は, 2003−2004 年に北海道大学で初めて ADA 欠損症の 2 例に実施され,現在まで重篤な有害事象は発生し ていない.

抗炎症治療は制限される.そのため,ステロイドや 免疫抑制剤とは異なる作用を示す薬剤の開発が求め られる. また,遺伝子治療は安全性や有効性の面でいくつ か課題があるものの,造血幹細胞移植の HLA 適合

河合・慢性肉芽腫症の病態と新たな治療法の開発

ドナーの問題を解決し得る治療法である.これらの 課題を克服すべく検討が続けられ,現在,欧米では HLA 一致ドナーが不在の ADA 欠損症,SCID-X1, WAS,X-CGD 症例では,治療の選択肢として遺伝 子治療は認識されはじめた. 文   献 1) Kang, E.M., et al.: Chronic granulomatous disease: overview and hematopoietic stem cell transplantation. J Allergy Clin Immunol. 127: 1319⊖1326; quiz 27⊖28, 2011. 2) Kuhns, D.B., et al.: Residual NADPH oxidase and survival in chronic granulomatous disease. N Engl J Med. 363: 2600⊖2610, 2010. 3) Nunoi, H. [Two breakthroughs in CGD studies]. Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi. 30: 1⊖10, 2007. 4) Han, C.H., et al.: Characterization of the flavoprotein domain of gp91phox which has NADPH diaphorase activity. Journal of biochemistry. 129: 513⊖520, 2001. 5) Magnani, A., et al.: Inflammatory manifestations in a single-center cohort of patients with chronic granulomatous disease. J Allergy Clin Immunol. 2014. 6) Foster, C.B., et al.: Host defense molecule polymorphisms influence the risk for immune-mediated complications in chronic granulomatous disease. J Clin Invest. 102: 2146⊖2155, 1998. 7) Marciano, B.E., et al.: Gastrointestinal involvement in chronic granulomatous disease. Pediatrics. 114: 462⊖468, 2004. 8) Levine, S., et al.: Histopathological features of chronic granulomatous disease (CGD) in childhood. Histopathology. 47: 508⊖516, 2005. 9) Kawai, T., et al.: Thalidomide attenuates excessive inflammation without interrupting lipopolysaccharide-driven inflammatory cytokine production in chronic granulomatous disease. Clin Immunol. 147: 122⊖128, 2013. 10) Ameratunga, R., et al.: Fulminant mulch pneumonitis in undiagnosed chronic granulomatous disease: a medical emergency. Clinical pediatrics. 49: 1143⊖1146, 2010. 11) Katsuya, Y., et al.: Chronic granulomatous disease with pulmonary mass-like opacities secondary to hypersensitivity pneumonitis: a case report. Journal of medical case reports. 8: 242, 2014. 12) Segal, B.H., et al.: NADPH oxidase limits innate immune responses in the lungs in mice. PLoS One.

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