1262

日 内 分 泌 会 誌.(Folia

endocrinol.

jap.)54,

1262∼1270.

1978

ア ン ジ オ テ ン シ ンIIア ナ ロ グ を用 い た 副 腎 皮 質機 能 不 全 症 の 診 断,病

態に

関 す る研 究 大阪大学医学部第四内科 荻

原

俊

男,波

多

丈,圓

山

ア ンナ

中

丸

光

昭,三

上

洋,萬

代

隆

能

A Study

原

雄

on the Pathophysiology Adrenocortical

OGIHARA, Mitsuaki Takashi

and Diagnosis

Insufficiency

Angiotensin Toshio

一

Takeshi

Using

II Blocker HATA,

NAKAMARU, MANDAI

of

Anna MARUYAMA,

Hiroshi

and Yuichi

MIKAMI,

KUMAHARA

Department of Medicineand Geriatrics Osaka UniversityMedical School Fukushima-ku,Osaka, Japan Angiotensin II analogue (AIIA), 1-sarcosine, 8-isoleucine angiotensin II (Sari , Ile8-AII), was given in a graded dose to patients with adrenal hypofunction of various etiologies , and the blood pressure response to AIIA was observed to investigate the role of the renin angiotensin system for the maintenance ficiency.

of blood pressure in the state of adrenal insuf-

An agonistic pressor response to AIIA was observed in the control subjects without adrenal hypofunction.

In contrast with this, patients with Addison's disease showed a blood

pressure fall to AIIA. When the test was repeated on the same patients after hydrocortisone replacement, these patients showed a neutral or pressor response . Three patients with adrenalectomy

and hydrocortisone

replacement

showed a pressor

response to AIIA in a supine position. When these patients were tilted , fall in blood pressure to AIIA was observed in two of them who had been on a regular diet , whereas one patient who had been on a high sodium diet showed no fall in blood pressure with this procedure . We concluded that the renin-angiotensin system plays an important role in the mainte nance of normal or subnormal blood pressure in Addison's disease and in the postural change of adrenalectomized

patients on hydrocortisone

and regular salt intake . The response of blood pressure to AIIA may be a clue for the diagnosis of Addison's disease and the evalu ation of the adequacy of replacement therapy with regard to these patients . 第54巻

第11号

.

日

本

内

分

泌

学

緒

療 可 能 で あ り,ミ

減 少 が 存 在 す る.こ

療 面 で は,本

邦 に お い て は,グ

の た め 未 治 療 患 者 で は,低 血 圧,

ル コ コ ル チ コ イ ドの 補 償 の み で 大 部 分 は 治

ネ ラ ル コ ル チ コ イ ドの 補 償 は 必 要 と して い な い.

近 年 開 発 さ れ た ア ン ジ オ テ ン シ ンII(AII)の 因,病

1263

誌

ル チ ゾ ー ル お よ び ミ ネ ラ ル コ ル チ コ イ ドの 欠 乏 に よ り,

環 血 漿 量 お よ びexchangeableNa+の

起 立 性 低 血 圧 な ど が 見 ら れ る.治

雑

言

ア ジ ソ ン 病 あ る い は 副 腎 摘 除 患 者 に お い て は,コ 細 胞 外 液 量,循

会

特 異 的 拮 抗 性 抑 制 剤 で あ るAIIア

態 に 関 す る レ ニ ン ー ア ン ジ オ テ ン シ ン 系(R-A系)の

ナ ロ グ は,高

血 圧症 の病

解 明 手 段 と し て 広 く用 い られ て お り,診

断的

有 用 性 に つ い て も 論 議 さ れ て い る!2)(4)(5)(10)(12L方,Ba。tter症 候 群(6)(10)(1%腹 水 を{半 う肝 硬 変(lo)(15)(16)に おv・て も AIIア

ナ ロ グ に よ る 降 圧 が 認 め ら れ て お り,こ

れ ら 二 次 性 ア ル ドス テ ロ ン 症 に お け る 上 昇 し たR-A系

の血

圧 維 持 機 構 に お け る重 要 性 が 認 識 さ れ る に 至 っ て い るlio)(12)先 に 述 べ た 副 腎 皮 質 機 能 不 全 症 患 者 に お い て も体 液 喪 失 傾 向 に あ る た め 血 漿 レ ニ ン 活 性(PRA)は

上 昇 し て い る こ とが 知 ら れ て い るi')(13)本 研 究 に お い て1ま,

各 種 副 腎 皮 質 機 能 低 下 症 患 者 な ら び に 副 腎 摘 除 患 者 にAIIア

ナ ロ グ の 一 種 で,我

た!8)(9)〔1-Sarcosine,8-lsoleucine〕AngiotensinII(Sa尋lle8-AII)を 血 圧 維 持 に 関 す るAIIの

意 義 お よ びAIIア

々 が 人体 応 用 を関 始 し

用 い,こ

ナ ロ グ テ ス トの 診 断 的 応 用,さ

れ ら患 者 にお け る

らに 補 償 療 法 のadequacyを

判 定

す る手 段 と な り う る か 否 か に つ い て 検 討 を加 え た の で報 告 す る. 症 例 な らび に方 法 用 い た 症 例 は,内

分 泌 学 的 検 索 に よ りア ジ ソ ン 病 と 診 断 さ れ た4例,お

主 訴 に 来 院 し た が,精

査 の 結 果,副

副 腎 摘 除 を 受 け た 後,ハ

イ ドロ コ ー チ ゾ ン の 補 償 療 法 中 の もの3名,気

後,withdrawalstateに Ile8-AIIの

あ る 婦 人 で,二

点 滴 試 験 を施 行 した.ア

制 限 食)下

の も の2名

中 よ り60度 のtiltingを

行 い,血

Sar1,Ile8-AII(第

行 い,か

つAII溶

腎 全 摘 患 者 で は,ハ

最綴

液(Hypertensin(R),Ciba)を 例 で は 両 親)に

行 っ た3例

毎 に 自動 血 圧 測

以 外 は す べ て 安 静,

量 よ り段 階 的 なSar1,Ile8-AIIの

投与 を

た だ ち に 投 与 で き る状 態 に し て 事 故 に 備 え た.ま は あ らか じめ 検 査 の 性 格 を 十 分 説 明 し,了

た,検

査

解 を 得 た 後 に 施 行 し た.

果 一 覧 表 と し て 掲 げ た.以

下 に 代 表 的 な 症 例 な ら び にSarl

与 に よ る 血 圧 変 化 の 締 果 を 述 べ る. ジ ソ ン病

ア ジ ソ ン 病 は4例

で,未

治 療 時Sar1,Ile8-AII投

と い ず れ も高 値 を示 し,補 20pg/ml以

で段 階 的 に増

以 外 は す べ て 常 食 下 で 本 テ ス トを 施 行 し た.本

ョ ッ ク な ど の 緊 急 事 態 を 防 ぐ た め,少

全 例 に お け る 本 テ ス トの 血 圧 変 化 をTable.1に

1)ア

り1200ng/kg/min.ま

与 量 で3・分 間 の 点 滴 を そ テっ たi8)(9>この 間 ・5分

結

Ile8-AII投

月

イ ドロ コ ー チ ゾ ン補 償 中 で,常

よ り血 圧 を 測 定 し た.Tiltingtestを

腎 全 摘 患 者 で 高 塩 食 摂 取 を 行 っ た1例

を 施 行 し た 各 患 者(8才

に お い て,Sar1,

に お い て 本 テ ス ト を ま ず 臥 位 に お い て 行 い,途

生 食 水 に 溶 解 し,200ng/kg/minよ

ラ マ 社)に

テ ス ト施 行 に 当 っ て は,シ

計11名

で は 未 治 療 時 に 本 テ ス ト を ま ず 施 行 し,次 に1∼2ヶ

お よ び 高 塩 食 下 の もの1名

量,6・ ・あ る い は12・ ・ng/kg/min.の

臥 床 の 状 態 で 行 い,副

管 支 喘 息 の た め ス テ ロ イ ド長 期 療 法

圧 の 変 動 を 観 察 し た.

一 製 薬)は

定 装 置(Non-stheto(壼),パ

身 倦 怠感 を

ッ シ ン グ 症 候 群 に よ り両 側

次 的 に 副 腎 皮 質 萎 縮 状 態 に あ る も の,の

ジ ソ ン病 の4例

間 の ハ イ ドロ コ ー チ ゾ ン 補 償 療 法 後 に 再 検 を 行 っ た.副 食(Na+非

よ び 皮 膚 色 素 沈 着,全

腎 皮 質 機 能 正 常 と 判 定 さ れ た 健 常 者3名,ク

下 で あ り,感

のSar1,Ile8-AII投

与 前 のPRAは9.3∼15.Ong/ml/hr(正

償 療 法 に よ り2.7∼6.2ng/ml/hrと 度 以 下 で あ っ た.代

低 下 した.血

表 的 な1例(R.M.52才)の

与 に よ る 血 圧 の 変 動 をFig.1,2に 第54巻

示 し た.即 第11号

常0.3∼3.O)

漿 ア ル ドス テ ロ ン 値 は い ず れ も 症例 の要 約 な らびに 補 償 療 法前 後

ち,R.M.例

で は 未 治 療 時Sar1,

1264

ア ン ジオ テ ン シ ンIIア ナ ロ グを用 い た 副 腎皮 質機 能 不 全症 の診 断,病 態 に 関 す る研 究(荻 原,他6名)

Ile8-AII投

与 前 の 血 圧 は110/70'mmHgで

め ら れ た.Sar1,Ile8-AII投 ー チ ゾ ン(20mg/日)の

こ れ に 対 し,色 OHCS,血

軽 度 上 昇 し た.他

の3例

や ・高 値 で あ っ た 症 例3に 素 沈 着,全

身 倦 怠,低

もPRA,血

,Ile8。AII点

お い て はSar1,Ile8-AIIに

お い て はSar1,Ile8-AII投

均 血 圧 で+4∼+20mmHgと

イ ドロ コ

圧 は115/70mmHg

よ る血圧 変 化 は不 変 で あ っ た.

ス トな ど に よ り,下

与 に よ り,平

降圧 が 認

だ し補 償 療 法 後 のPRA

血 圧 な ど を 主 訴 に ア ジ ソ ン病 の 疑 い で 紹 介 さ れ た3例

漿 ア ル ドス テ ロ ン値 の 測 定 で 正 常 で あ り,最

代 表 的 な 症 例 をFig.3,4に

滴 に よ り,血

に お い て も 同 様 な 傾 向 が み ら れ た.た

中 コ ル チ ゾ ー ル 値,ACTH値,ACTH-Zテ

つ,R-A系

与 に よ り96/55mmHgと

覚 的 に も何 ん ら 副 作 用 は 認 め ら れ な か っ た.ハ

補 償 療 法 一一ヶ 月 後 の 再 検 で はSar1

か ら124/80mmHgと が6.2ng/ml/hrと

あ っ た が,Sar1,Ile8-AII投

与 に よ り理 学 的,自

で,尿

中17-

垂 体一 副 腎皮 質 機 能 は 正 常 でか

終 的 に は ア ジ ソ ン病 が 否 定 さ れ た 例 に 軽 度 な い し有 意 な 昇 圧 反 応 を示 した .

示 し た.

Table 1. Summary of PRA, plasma aldosterone concentration (PAC) and blood pressure response to Sari, Ile8-AII infusion in patients with adrenocortical insufficiency of various causes.

2)ス

テ ロ イ ド長 期 療 法 に よ る 下 垂 体 抑 制 に よ る 副 腎 皮 質 機 能 不 全

気 管 支 喘 息 の た め プ レ ドニ ゾ ロ ン を5年

間 に わ た り服 用 後,離

Sar1,Ile8。AIIの

点 滴 を行 っ た と こ ろ 血 圧 は127/74mmHgか

Sar1,Ile8-AII投

与 前 のPRAは1.1ng/ml/hr,血

脱 の 目 的 で 入 院 し た48才 の 婦 人 に お い て, ら140/84mmHgと

昇 圧 を 示 し た.本

患者の

漿 ア ル ドス テ ロ ン値 は44pg/mlと

い ず れ も正 常 範 囲

な ら び に 下 垂 体 性 ク ッ シ ン グ病1例

に お い て ク ッ シ ン グ症

内 で あ っ た. 3)両

側 副 腎全 摘 患者

異 所 性ACTH産

生 に 伴 う ク ッ シ ン グ症 候 群2例

候 改 善 の た め 両 側 副 腎 摘 除 を 受 け,ハ て,本

テ ス ト を安 静 臥 床 時,次

に60度

イ ドロ コ ー チ ゾ ン25∼35mg/日 のtiltingの

の 補 償 療 法 を受 け て い る患 者 に お い

状 態 で テ ス ト を 続 行,血

第54巻

第11号

圧 の 変 動 を 観 察 し た 結 果,常

食

日

下 の2名(尿

中Na+排

本

内

分

泄 量159∼168mEg/日)に

か し 高 塩 食 下(尿

AIIに

昇 を 認 め,tiltingに

よ り臥 床 時,上

Fig. 1.

Case summary

学

会

即 ち,Bartte,症 下 で はR-A系

泄 量324mEg/日)の

与に

与 前 値 よ りも低 い血 圧

一 例 に お い て は,血

圧 はSarIlle8-

of a 52 year old male patient

with Addison's

disease.

按

の 役 割 に つ い て,AIIア

ナ ロ グ を 用 い て 検 討 し た 報 告 は 数 多 く見 ら れ る.

候 群!6)(10(16)腹 水 を 伴 う 肝 硬 変!10(}5)(16)う っ 血1生心 不 全 の 一 部(10)およ び 健 常 人 に お い て も 減 塩 食 が 関 与 し て い る こ と が 知 ら れ て い る!7)ア ジ ソ ン病 で は グ ル コ コ ル チ コ イ ドの み な ら ず,ミ

よ び 血 中AII濃

り血 圧 は 下 降 し,コ

よ び 水 分 の 喪 失 の た め,脱

圧 は 軽 度 昇 圧 を 示 し た.即

血 圧 維 持 に 重 要 で あ り,PRAの

コル チ ゾ ー ル の 補 償 に よ り,R-A系

上 昇 はhomeostasisを

は 正 常 化 し,も

ナ ロ グ は 健 常 人 に 示 す と 同 様1ア

ら に こ の 事 実 は,ア

水 状 態 に あ り,R-A系

度 は 高 値 の 状 態 に あ る!1)(13)未 治 療 の ア ジ ソ ン 病 患 者 で はAIIア

ル チ ゾ ー ル の 補 償 に よ り,血

お い て は,AIIは

AIIア

示 す よ うにSar・,Ile8-AII投

よ っ て も降 圧 は 認 め ら れ な か っ た(Fig.6).

ラ ル コ ル チ コ イ ドの 分 泌 に も障 害 が あ り,Na+お し,PRAお

1265

誌

よ り 降 圧 を示 し,Sar1,Ile8。AII投

中Na+排

考 血 圧 維 持 機 構 に お け るR-A系

雑

お い て は,Fig.5に

よ り臥 床 時 は 血 圧 は や ・上 昇 し た が,tiltingに 低 下 が 認 め ら れ た.し

泌

は やAIIは

ち,未

ネ

は充 進

ナ ログ の 投 与 に よ

治療 のア ジ ソン病 患 者 に

保 つ た め の 代 償 機 転 と考 え ら れ る.

血 圧 維 持 に 直 接 的 関 与 は 薄 い 状 態 に な り,

ゴ ニ ス ト と して 働 き!10)(11)昇 圧 効 果 を 示 す に 至 る も の と 思 わ れ る.さ

ジ ソ ン 病 の 治 療1こ9α

一flud,。c。rtis。neacetate(Fl・

ル コ ル チ コ イ ドの 補 償 を 必 ず し も必 要 と し な い こ と を 物 語 っ て い る.こ コ ル チ コ イ ド作 用 が あ る た め の み な ら ず,本

・inef(g2)やDOCAな

ど の ミネ ラ

れ は コル チ ゾー ル に軽 度 の ミネ ラル

邦 に お い て は 一 般 に 食塩 摂 取 量 が 多 い こ と も そ の 一 因 と考 え ら

れ る.

第54巻

第11号

1266

ア ンジ オ テ ンシ ンIIア ナ ロ グ を用 い た副 腎 皮 質機 能不 全 症 の 診断,病 態 に関 す る研 究(荻 原,他6名)

Fig.

2.

Blood

pressure

replacement

Fig.

3.

Case low

response in a patient

summary blood

adrenal

of

pressure.

a 48 This

to Sari with

year

, Ile8-AII infusion before and after Addison's disease shown in Fig. 1.

old

patient

male

patient

was diagnosed

function. 第54巻

第11号

with to

cortisol

skin

pigmentation

have

normal

and

pituitary-

日

Fig. 4.

Fig. 5.

本

内

分

泌

学

会

雑

Blood pressure response to Sad , Ile8-AII infusion in a patient without Addison's disease whose case summarywas shown in Fig. 3.

Blood pressure

response

and hydrocortisone

to Sar1 , Ile8-AII

replacement.

This

in a patient with adrenalectomy patient

diet, and the test was done in supine position

次 に,コ tiltingに

ル チ ゾ ー ル 補 償 中 の 副 腎 摘 除 患 者 に お い て,常 よ っ て 降 圧 は み ら れ な か っ た.こ

血 圧 維 持 にAIIが

の こ と は,こ

ナ ロ グ の 一 種)に

Johnsonら(5!Gavrasら(3)はAIIア

was kept

と 減 塩 食 に よ り脱 水 し た 状 態 で は,本

よ り降 圧 し た が,増 塩 食 時 に は

の よ う な 患 者 に お い て は,常

よ り降 圧 し た こ と を 報 告 し て い る.ま

ナ ロ グ お よ び 変 換 酵 素 抑 制 剤 を 用 い て,脱

用 い て,コ

た 実 験 動 物 に お い て も,

水 お よび 心不 全 状 態 の血 圧 ら(14)は,変 換 酵 素 抑 制 斉Uの

ー チ ゾ ン ア セ テ ー ト補 償 中 の 副 腎 摘 除 犬 で 少 量 のDOCA

剤 に よ り 降 圧 す る こ と を 認 め て い る.以 第54巻

食下 で は体 位変 換 時 の

健 常 人 に お い て も,減 塩 食 下 で は 体 位 変

の 上 昇 が 重 要 な 役 割 を 果 し て い る こ と を確 認 し て い る.Samuel・

一 つ で あ るSQ20881(nonapeptide)を

on unrestricted

and 60 degree tilting.

食 下 で はtiltingに

関 与 し て い る 可 能 性 を 示 唆 し て い る.Nothら(7)は

換 に よ りSaralasin(AIIア

維 持 にR_A系

1267

誌

第11号

上 の こ と よ り,副

腎 皮 質不 全

1268

ア ンジ オテ ンシ ンIIア ナ ロ グ を用 い た副 腎 皮 質機 能 不 全症 の 診 断,病 態 に関 す る研 究(荻 原,他6名)

あ る いは 健常 人に お い て も,Na+,水

喪 失状 態 の 血 圧 維持 に はR-A系

食下 で体 液量 が 増加 して い る状 態 では 血圧 の維 持 にAIIは

が 重 要 な役 割 を果 して い るが,高 塩

さほ ど作 動 して い ない と考 え られ る.こ の こ とか

ら も,副 腎摘 除 また は不 全 患 者 で は高 塩 食 がむ し ろ望 ま しい とい う臨 床 的事 実 が裏 づ け られ る. 本 剤 に よ り血 圧 下 降が み られ た患 者 は,結 果 的 に ア ジ ソ ン病 と診 断 され,初 診 時,ア ジ ソン病 が 強 く疑 わ れ て も,本 剤 に よ り血圧 が 上 昇 した3例 は最 終 的 に ア ジ ソ ン病 が 否 定 され た.ま た,ス テ ロイ ド長 期療 養 後 の副 腎 皮 質 萎縮 が あ る と考 え られ た症 例 に お いて も昇 圧 が み られ た.こ れ らの 事 実 は,本 テ ス トが ア ジソ ン 病 の 補助 診 断 と して 有用 と も考 え られ,さ

らに血 圧下 降の 程 度 に よ り,脱 水 の 状 態 が推 定 で きる可 能性 が あ

り・ 著 しい もの で は,可 及 的速 や か な コル チ ゾー ル補 償 療 法 を必 要 とす る症 例 と考 え られ る. ア ジ ソン病 に お い て,水,電

解 質 の バ ラ ン スか らみ た ミネ ラ ル コル チ コイ ドお よ び コル チ ゾー ル の補 償 の

妥 当性 の指 標 にPRAの

測 定が 有 用 で あ る こ と をOelkersら(13)は 報告 してい る .彼 らの 成績 に よ る と,PRA はNa+が 負 のバ ラ ンス にお い て1塙 値 を示 し,正 の バ ラ ン スに な る1こつ れ て速 や か に正 常 化 す る .そ して, PRAを 指 標 と して ミネ ラル コル チ コイ ドを補償 し,PRA値 を正 常 の 上 界 に維 持 す る 方 法 が望 しい と報 告 し て い る!13)我 々の場 合,未 治療 のdi・1」 腎不全儲 有 意 な昇 圧,ま たPRAが か らNa+,水

で はAIIア ナ ・ グに よt)降 圧,コ ル チ ゾ_ル 補 償+高 塩 食 で1ま

補 償 後 もや ・高 値 で あ っ た一例 で は血 圧 は不 変 で あ っ た ことより,血圧 の 反 応様 式

バ ラ ンス を推 定 で き,・,lkersら

の主 張 す るPRA測

定 の意 義 と同様 な意 味 備

償療 法 の妥

当性 を推 定 す る有用 な指 標 とな りうる もの と考 え る.本 検査 に 当 って は,脱 水状 態 に お け るAIIア ナ ロ グの 投 与 は低 血 圧,シ

ョッ クな どの 危 険性 も考 え られ る ため,慎 重 に 投与 す べ きで あ り,明 らか に脱 水 が顕 著 な

もの で は投 与 すべ き では な い.

Fig.

6.

Blood and and

pressure

response

hydrocortison the

test

to Sari

replacement.

was done

, Ile8-AII This

in supine

was

and

60 degree

position

結 各種 副 腎不 全 患者 にSar1,Ile8-AIIを

in a patient

patient

kept

with on

adrenalectomy high

salt diet,

tilting.

語

投 与 し,血 圧 の変 動 を観察 す る こ とに よ り,AIIの

副 腎不 全 患 者

に お け る血 圧 維持 へ の 関 与 を検 討 し,以 下 の 結論 を得 た . (1)ア

ジ ソン病 にお い て は,未 治療 時 では 降圧 が 認 め られ,コ ル チ ゾー ル補 償 に よ り軽度 昇 圧 へ と傾 いた .

これ に対 し色素 沈着,低 血圧 な どの ため ア ジ ソン病 の 疑 い で精 査 し,最 終 的 に は正 常 と判 定 され た 患者 では 昇 圧 を示 した.ア ジ ソ ン病 では,AIIが

血 圧 維持 に重 要 な役 割 を果 して い るこ とが 認 め られ る.AIIア

ナロ

グテ ス トは ア ジ ソ ン病 の 診断 お よび鑑 別 診 断 に 有用 で あ り,ま た補 償 療 法 の 妥 当性 の判 定 の 指標 に もな り う るこ とが 示 唆 され た. 第54巻

第11号

日

本

内

分

泌

学

会

雑

1269

誌

(2)長 期 ス テ ロ イ ド療 法 に よ り,下 垂 体 抑制 性 の 副 腎皮 質 不 全患 者 で は昇 圧 を示 した. (3)ハ

イ ドロ コー チ ゾ ン補 償 療 法 中の 両 側 副 腎摘 除 患者 に お い て,常 食下 の 者 で は臥 床 時 には や ・昇 圧 し

た がtiltingに よ り降圧 し,高 塩 食下 の 患者 ではtiltingに よ り降圧 を 認 め なか った.常 食下 の 副 腎全 摘 患 者 で は補 償 療 法 に あ って も体 位 変 換 時 の血 圧 維持 にAIIが 直 接 関 与 して い る こ とを示 唆 して い る.

謝

辞

本研 究 の 一部 は厚 生 省特 定 疾 患 ス テ ロ イ ド異常 症 班,文 部 省科 学 研 究 費 の援 助 を受 け た. 文

献

1) Brown, J.J., Davis, D.L., Lever, A.F. and Robertson, J.I.S.: Variations in plasma renin concentration in several physiological states and pathological state. Canad. Med. J., 90: 201-206, 1964. 2) Brunner, H.R., Gavras, H. and Laragh, J.H.: Specific inhibition of the renin-angiotensin

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原 俊 男:ア

ン ジオ テ ン シ

ンII拮 抗 性 ア ナ ロ グ の 臨 床 応 用 に よ る 高 血 圧 な らび に 血 圧 維 持 機 構 解 明 に 関 す る 研 究 。 大 阪 大 学 医 学 雑 誌 ・ 29:91-97,1977.11) Kumahara, with 丈,三

Y. : Effects

various 上

Ogihara,

sodium

洋,熊

原 雄 一:レ

関 す る 最 近 の 進 歩,医

of

two

balances.

angiotensin Life

T.,

Hata,

II analogues

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T., on

Mikami,

blood

H.,

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Mandai,

T.

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12)

subjects

荻 原 俊 男,波

ニ ン ー ア ン ジ オ テ ン シ ン 系 抑 制 剤 の 臨 床 応 用 に よ る 高 血 圧 診 断,病

学 の あ ゆ み, 102

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