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メチ シ リン耐性 黄 色 ブ ドウ球菌(MRSA)の
鼻 腔 内保 菌 者 の検 討
新 潟 大 学 医学 部 第2内 科 学 教 室(指 導:荒 川 正 昭教 授) 川
Key
words:
島
崇
(平成4年1月16日
受 付)
(平成4年4月9日
受 理)
MRSA,
nosocomial
Povidon
Iodin,
要 メ チ シ リ ン耐 性 黄 色 ブ ド ウ球 菌(MRSA)感 一 つ として
infection,
nasal
旨
染 症 は,多
くの 病 院 で 問 題 に な って い る が,感
,鼻 腔 内 保 菌 者 の 関 与 が 指i摘さ れ て い る.著 者 は,MRSA鼻
対 策 を検 討 した.対 院 内 勤 務 者,看 (9.2%),医
象 は,新 潟 大 学 医 学 部 付 属 病 院(新
護 学 生 及 び 入 院 患 者 で あ る.新
師142名 中8名(5.6%),患
は 認 め られ な か った.赤 務 者44名,看
大 病 院)と
大 病 院 のMRSA鼻
腔 内 保 菌 者 は,看
菌 者 は,患
者,看
十 字 病 院)の
護 学 生231名 に
師23名,そ
護 婦,医
病
護 婦109名 中10名
査 技 師4名,看
護 婦448名 中25名(5.6%)で,医
護 学 生30名 に は 認 め られ な か った.保
染経 路 の
腔 内保菌 の状 況 お よび除 菌法 と 長 岡 赤 十 字 病 院(赤
者245名 中48名(19.6%)で,検
十 字 病 院 の 保 菌 者 は,看
carrier,
chloramphenicol
の他 の勤
師 の 順 に多 く,赤 十 字 病
院 に 比 べ 新 大 病 院 に 多 い傾 向 が 見 られ た.MRSAは,入
院 患 者 に 高 頻 度 で 鼻 腔 に 付 着 す る が,保 菌 者 が
感 染 源 と な り,宿 主 の 状 態 に よ っ て は発 病 す る た め,除
菌 す る 意 義 が あ る.こ
み た.除 菌 率 は,ポ ピ ドン ヨ ー ドで59名 中26名(44%),ク ア ク リ ノ ー ル で,3名
中1名(33%)で
れ らの保菌 者 に除菌 を試
ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル(CP)で23名
あ った.CPは,ポ
特 殊 な疾 患 以 外 に 使 用 さ れ る 可 能 性 が 少 な く,局 所 使 用 が 適 当 と思 わ れ た.し た め,ポ
菌 防 止 の 教 育 が 重 要 と考 え られ た.
序
経 路 の ひ とつ と して,院
文
メ チ シ リ ン 耐 性 黄 色 ブ ド ウ球 菌(MRSA)は, に は じ め て 報 告1)さ れ て 以 来,院
大 病 院)に
お い て は,1981年
内 の 鼻 腔 内保 菌 者 の 関与
が 指 摘 され て い る7).MRSA感
内感 染 も
含 め 多 く の 報 告 が み ら れ る2)∼4).新 潟 大 学 医 学 部 付 属 病 院(新
か し,耐 性 の 獲 得 が 早 い
ピ ドン ヨ ー ドで 除 菌 出 来 な い症 例 に 慎 重 に使 用 す る こ とが 必 要 で あ ろ う.医 療 従 事 老 の 検 索,
除 菌 と共 に,MRSA保
1961年
中19名(83%),
ピ ドン ヨ ー ドに比 べ 有 効 で あ った.CPは,
や 病 棟 で は,MRSA鼻
腔 内保 菌 者 が 多 く,病 院 内
で の付 着 の可 能 性 が 高 い こ と も指 摘 され て い る8).S.aureusの
に5例
染 患 者 の 多 い病 院
鼻 腔 内 保 菌 者 は,咳 漱 や く し ゃ
分 離 さ れ て い る が,そ の 後1985年359例,1989年390
み に よ り,周 囲1∼2mに
例 と,分
られ て お り9),そ の対 策 は 重 要 と思 わ れ る.そ こで
離 頻 度 は 急 増 し,1989年
分 離 さ れ たStaphylococcus
には入院患者 で
aureusの72.2%を
め る に 至 っ て い る5)6).こ の 傾 向 は,新 の 病 院 で も 同 様 で あ り,基 岡 赤 十 字 病 院(赤
eusの36.3%と
も,1989年
に は193
院 患 者 か ら 分 離 さ れ たS.aur-
な っ て い る(Table1).こ
別 刷 請 求先:(〒943)上
の感染
川島
崇
腔 内保菌 の状
況 お よび そ の 対 策 に つ い て 検 討 した. 材 料 と方 法 対 象 は,新 大 病 院 及 び 赤 十 字 病 院 の病 院 内 勤 務 者(医 師,看 護 婦,検
査 技 師,事 務 職 員),看
生 お よ び 入 院 患 者,計1.262名 ∼ 1990年12月
越 市 南 高 田町6-9
国 立 高 田病 院
今 回 著 者 は,両 病 院 内 のMRSA鼻
幹 病 院 の 一 つ で あ る長
十 字 病 院)で
例 よ り 分 離 さ れ,入
占
潟 県 内 の他
菌 を 飛 散 させ る こ とが知
1)MRSAの
の2年
護学
で,1989年1月
間 に 調 査 を 行 っ た.
鼻 腔 内保 菌 の 状 況 の検 索 感 染 症 学 雑誌
第66巻
第6号
MRSA鼻 Table
1
Isolation
of MRSA
腔内保菌者の疫学的検討 in Niigata
University
687
and
Nagaoka
Red
Cross
Hospital
*P